日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、柏原 輝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:吉田 聡(東北大学東北アジア研究センター)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

15:45 〜 16:00

[BCG06-20] ベトナム北東部デボン紀-石炭紀境界堆積岩における分子化石を用いた古生態系復元

*四木 りさ1高嶋 礼詩2、小松 俊文3沢田 健4 (1.北海道大学 理学院 自然史科学専攻、2.東北大学 学術資源研究公開センター 総合学術博物館、3.熊本大学 大学院先端科学研究部 基礎科学部門、4.北海道大学 理学研究院 地球惑星科学部門)


キーワード:デボン紀-石炭紀境界、ハンゲンベルグ事変、バイオマーカー、ベトナム

デボン紀-石炭紀(D-C)境界は、海洋無酸素事変(OAE)がおこり、それに関連して海洋生物や陸上植物の約45%が絶滅したと推測されている、ハンゲンベルグ事変が起こったことが知られている(Kaiser et al., 2016)。中国南部のハンゲンベルグ事変にあたる地層からは微生物濃集層が発見されており、OAEによる底生生物の絶滅後、シアノバクテリアなどの微生物が増加したことが示されている(Hou et al., 2022)。しかし、東南アジアにおける研究は欧米や中国と比べて未だ不十分であることが課題となっている。そこで本研究では、ベトナム北東部デボン紀-石炭紀境界堆積岩の分子化石(バイオマーカー)分析から、おもに海生生物記録を通した海洋古生態系を復元した。
分析試料はハンゲンベルグ事変の層準を含む、デボン紀ファメニアン後期から石炭紀トルネーシアン前期におけるベトナム北東部Cat Ba島のCat Co層群Pho Han層の黒色頁岩および灰色石灰岩を用いた。バイオマーカー分析では、有機溶媒抽出とシリカゲルカラム分けの後、尿素アダクト法により直鎖アルカンと分枝状・環状アルカンを分別し,GC-MSによる分析を行った。
バイオマーカー分析の結果、真核生物に由来するステラン、緑藻類TasmanitesまたはアクリタークLeiosphaeridia由来とされるTT(13β(H), 14α (H)-tricyclic terpane)、バクテリアに由来するホパンおよびシアノバクテリア起源の2-メチルホパン、緑色硫黄細菌起源とされるアリルイソプレノイドが検出された。緑藻類の寄与を示すC28/C29ステラン比およびTT/ホパン比は、ハンゲンベルグ事変の層準において高い値を取っており、一貫して緑藻類の寄与が高かったと考えられる。またバクテリアの総量に対するシアノバクテリアの割合を示す2-メチルホパン指標(2-MHI)は、全層準を通して0.1%以下という非常に低い値が示された。このことから本試料は先行研究とは異なり、ハンゲンベルグ事変においてシアノバクテリアが増加せず、藻類の高い寄与が維持されていたと考えられる。一方で、アリルイソプレノイドはハンゲンベルグ事変の層準において高いピークを取っており、このことから緑色硫黄細菌が生息できるような硫化的環境が局地的に存在していた可能性が示唆された。