16:15 〜 16:30
[BCG06-22] 北海道根室層群の白亜紀/古第三紀境界堆積岩中の分子化石に記録された古環境変動

キーワード:K/Pg境界、北海道根室層群、バイオマーカー、北西太平洋、川流布
白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界は隕石衝突や大規模な火山活動により、全球的に生物が大量絶滅したと考えられている。このイベントの環境擾乱の規模や環境回復の期間は隕石衝突地点(ユカタン半島チチュルブクレーター)からの距離や各地域の構成する生物種、生態系により異なる。よって、K/Pg境界以降にクレーターから遠い地域の古環境・古生態系変化を復元することは、隕石衝突のような環境擾乱に対する生態系の挙動を理解するために有意義である。本研究では北海道根室層群のK/Pg境界堆積岩の分子化石(バイオマーカー)分析を行い、K/Pg境界前後の北西太平洋域の古環境および古生態系変動を復元した。
本研究では、北海道白糠丘陵の川流布川本流および支流沿いの川流布累層の泥岩を採取した。川流布川支流において、古地磁気層序とOs同位体層序の調査に基づいて、K-Pg境界の同定を提案している(Ota et al., 2024)。バイオマーカー分析では、有機溶媒抽出とシリカゲルカラムクロマトグラフィーの後に、尿素アダクト法により直鎖アルカンと分枝状・環状アルカンを分別し、GC-MSによる分析を行った。
川流布支流セクションでは、酸化還元指標のプリスタン/フィタン比(Pr/Ph)は2.1~3.7であり酸化的環境を示した。針葉樹植生指標であるHigher Plant Parameter (HPP”; レテン/(レテン+カダレン+イソカダレン)はK/Pg境界期を越えても大きな変動が見られず、被子/裸子植生比であるar-AGI’は長期的な変動として境界期で大きく減少した。この結果から後背地では針葉樹の植生が境界期を通して安定的に分布し、被子植物は境界期のイベントによって衰退したと推定される。また、藻類に由来するステロイドとバクテリアなどに由来するホパノイドの比からK/Pg境界で藻類の寄与の著しい減少が確認できた。また、同層準で渦鞭毛藻由来の三芳香環ジノステロイドの割合が上昇し藻類中の渦鞭毛藻の相対的寄与が上がったことが考えられる。外洋性の珪藻に由来するバイオマーカーであるC25高分子鎖(HBI)アルカンの濃度も境界層付近で減少したが、境界層よりも下位の層準から減少傾向を示していることから、隕石衝突イベントと関連しないかもしれない。
川流布本流セクションの結果では、Pr/PhとC27/C29ステラン比より、酸化環境の沿岸域(浅海域)で堆積したことが示された。C25 HBIアルカン比はK/Pg境界を境に大きく減少し、外洋性の珪藻は K/Pg 境界の環境変動に大きな影響を受けその基礎生産が減少したことが示された。渦鞭毛藻由来ステロイドやシアノバクテリア由来の2-メチルホパンはK/Pg境界前後で大きな変化はなかった。よって、渦鞭毛藻とシアノバクテリアはK/Pg境界の環境変動の影響をあまり受けず、珪藻生産はダメージを受けた可能性があることが示された。HPP”は古第三紀にかけて増加傾向を示した。一方、ar-AGI’は古第三紀にかけて減少した。よって、K/Pg 境界の環境変動によって古第三紀初期に被子植物は衰退したが針葉樹は被子植物より生産回復が早かったことが示された。
本研究では、北海道白糠丘陵の川流布川本流および支流沿いの川流布累層の泥岩を採取した。川流布川支流において、古地磁気層序とOs同位体層序の調査に基づいて、K-Pg境界の同定を提案している(Ota et al., 2024)。バイオマーカー分析では、有機溶媒抽出とシリカゲルカラムクロマトグラフィーの後に、尿素アダクト法により直鎖アルカンと分枝状・環状アルカンを分別し、GC-MSによる分析を行った。
川流布支流セクションでは、酸化還元指標のプリスタン/フィタン比(Pr/Ph)は2.1~3.7であり酸化的環境を示した。針葉樹植生指標であるHigher Plant Parameter (HPP”; レテン/(レテン+カダレン+イソカダレン)はK/Pg境界期を越えても大きな変動が見られず、被子/裸子植生比であるar-AGI’は長期的な変動として境界期で大きく減少した。この結果から後背地では針葉樹の植生が境界期を通して安定的に分布し、被子植物は境界期のイベントによって衰退したと推定される。また、藻類に由来するステロイドとバクテリアなどに由来するホパノイドの比からK/Pg境界で藻類の寄与の著しい減少が確認できた。また、同層準で渦鞭毛藻由来の三芳香環ジノステロイドの割合が上昇し藻類中の渦鞭毛藻の相対的寄与が上がったことが考えられる。外洋性の珪藻に由来するバイオマーカーであるC25高分子鎖(HBI)アルカンの濃度も境界層付近で減少したが、境界層よりも下位の層準から減少傾向を示していることから、隕石衝突イベントと関連しないかもしれない。
川流布本流セクションの結果では、Pr/PhとC27/C29ステラン比より、酸化環境の沿岸域(浅海域)で堆積したことが示された。C25 HBIアルカン比はK/Pg境界を境に大きく減少し、外洋性の珪藻は K/Pg 境界の環境変動に大きな影響を受けその基礎生産が減少したことが示された。渦鞭毛藻由来ステロイドやシアノバクテリア由来の2-メチルホパンはK/Pg境界前後で大きな変化はなかった。よって、渦鞭毛藻とシアノバクテリアはK/Pg境界の環境変動の影響をあまり受けず、珪藻生産はダメージを受けた可能性があることが示された。HPP”は古第三紀にかけて増加傾向を示した。一方、ar-AGI’は古第三紀にかけて減少した。よって、K/Pg 境界の環境変動によって古第三紀初期に被子植物は衰退したが針葉樹は被子植物より生産回復が早かったことが示された。