日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、柏原 輝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[BCG06-P01] プレートの平坦化が地球史における第一次海水準変動と地表面熱流量に及ぼす影響:超大陸サイクルの理論モデルからの推察

*吉田 晶樹1 (1.立命館大学理工学部物理科学科)

キーワード:超大陸サイクル、大陸移動、海水準変動、地表面熱流量、プレート平坦化、理論モデル

最も長い周期の海水準変動(いわゆる,第一次海水準変動)の周期は,約2~3億年と考えられており(例えば,van der Meer et al., 2017, Gondwana Res.),これは超大陸サイクル(大陸の離合集散)の周期である約5~7億年(例えば,Meert, 2012, Gondwana Res.; Mitchell et al., 2021, Nat. Rev. Earth Environ.)の半分かそれ以下である。超大陸の形成には,超大陸の分裂によって生じた「内海」の閉鎖,または超大陸を取り囲んでいた「外海」の閉鎖が深く関係している。前者によって超大陸が形成されるプロセスは「外転」(extroversion),後者によって超大陸が形成されるプロセスは「内転」(introversion)と呼ばれ,これらは超大陸サイクルの対極的なシナリオとされている。また,実際の地球における大陸移動の複雑な挙動を説明するために,「複合」(combination)プロセスも提案されている(例えば,Murphy and Nance, 2013, Geosci. Front.)。一方,三次元全球モデルを用いたマントル対流の数値シミュレーション研究は,ここ20年ほどで大きく進歩したものの,プレートテクトニクスや大陸移動を実現するにはまだいくつかの困難が残っている(例えば,Yoshida and Santosh, 2014, Geosci. Front.; Paul and Ghosh, 2020, Earth Planet. Sci. Lett.)。そこで本研究では,これら3つの超大陸サイクルのプロセス(外転,内転,複合)を伴うマントル対流の理論モデルを構築し,超大陸サイクルが数億年周期の海水準変動と地表面熱流量に及ぼす影響を明らかにした(Yoshida, 2024, Gondwana Res.; Yoshida, 2025, Gondwana Res.)。ここで,海水準変動は,時代とともに変化する海洋プレートの平均水深を制御するさまざまなモデルパラメータの下で推定した。

 本研究の結果,ある年代より古い海洋プレートでは,半無限冷却モデル(Turcotte and Schubert, 2014, Cambridge Univ. Press)から推定されるように水深がプレート年代の平方根に比例せず,外海および内海における海洋プレートが「平坦化」することで,水深が一定の値に漸近する現象(例えば,Adam et al., 2015, Earth Planet. Sci. Lett.)が,過去の地球における海水準変動曲線を説明するために重要であることがわかった。さらに,現実的な複合モデルにおいては,堆積学的研究から得られている,実際の地球における過去2億年間の海水準変動をより説明するためには,地表の海水がマントルへ「逆流」することによる海水の絶対量の変化が重要である可能性も示唆された。

 地球内部から地表面に放出される熱は,地球のプレートテクトニクスの将来に大きな影響を与える。地球の永年的な冷却により,地表面の熱流量は地球の歴史を通じて徐々に減少してきた。海水準変動と同様に,地球全体での平均的な地表面熱流量も超大陸サイクルにしたがって数億年の周期で変動すると考えられる。半無限冷却モデルによると,地球のプレートの平均年代の減少は,地球平均の水深の減少と地球平均の地表面熱流量の増加と関連しているとされる。そこで,本研究の理論モデルを用いて超大陸サイクルが億年スケールの時間変化に及ぼす影響を調べた.その結果,超大陸パンゲアが形成されていた2億年前の地表面熱流量と比較して,過去2億年間に地表面熱流量が-10%~+25%の間で変動したことが推定された。一方,地球の熱収支に関するパラメータ化対流理論(例えば,Schubert et al., 1980, J. Geophys. Res. Solid Earth)によると,マントル内の放射性元素の崩壊に伴う地球の永年冷却により,地表面熱流量は同じ2億年間に約15%減少することが推定された。これらの結果は,超大陸サイクルが地表面熱流量に及ぼす影響は,地球の永年冷却と同程度かそれ以上に大きいことを示唆している。