日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、柏原 輝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[BCG06-P04] 北西パンサラッサ海の下部白亜系(ベリアシアンーバランギニアンーオーテリビアン)の統合層序

*高嶋 礼詩1、大坪 拓史1都丸 大河1、永廣 昌之1山中 寿朗2、折橋 裕二3、淺原 良浩4黒柳 あずみ1西 弘嗣5 (1.東北大学、2.東京海洋大学、3.弘前大学、4.名古屋大学、5.福井県立大学)

キーワード:唐桑層群、大島層群、下部白亜系、北上山地、バランギニアン、ワイザートイベント

バランギニアン期は白亜紀最古の巨大火成岩岩石区の形成や炭素循環の大きな擾乱が起こったことで特徴づけられる.近年,バランギニアンおよびオーテリビアン階のGSSPが批准され,下部白亜系の層序対比や古環境変動の研究がますます盛んになってきた.しかしこれらの研究の大部分はヨーロッパのボレアルやテチス海域に集中しており,当時最大の海洋であったパンサラッサ海の古環境変動についてはほとんど明らかになっていない.
 東北日本の太平洋側にはベリアシアン~オーテリビアンの浅海ないし半深海の堆積物が点在する.これらの地層はユーラシア大陸東縁の北西太平洋下で堆積した地層で,古くよりアンモノイドによる化石層序学的研究がなされてきた.しかし,下部白亜系のGSSPが集中する西テチス海域の示準化石と同じ種がほとんど産出しないために,下部白亜系の各階の境界を決めるほどの解像度で年代を対比することはできなかった.また,下部白亜系の年代対比に重要なカルピオネラや石灰質ナンノ化石に関しては,産出の報告すらない.放散虫化石に基づく対比も行われてきたが,これについても各階の境界を決定できるほどの精度には至っていない.本研究では,宮城県気仙沼市大島に露出する唐桑層群上部と大島層群最下部を対象に,全岩有機物の炭素同位体比層序および凝灰岩のジルコンU-Pb年代を基に,テチス地域の標準層序との対比を試みた.その結果,ベリアシアン/バランギニアン階境界が唐桑層群最上部の磯草層基底部,バランギニアン後期に発生したWeissert Event層準が磯草層中部に対比されることが明らかとなった.さらに,顕著な炭素同位体比のピークが見られないために確定的ではないが,バランギニアン/オーテリビアン階境界は磯草層上部に対比される可能性が示唆された.
 Weissert Eventは有機物の埋没によって引き起こされた炭素循環の大規模な擾乱イベントとして知られているが,海洋による無酸素水塊の拡大によるものか,陸上植物の埋没によって引き起こされたのかいまだ議論の余地がある.本研究結果によると,Weissert Event層準では顕著な岩相の変化(黒色頁岩の堆積や生物擾乱の減少)が見られないために,北西パンサラッサ海は比較的酸化的な環境が卓越していた可能性がある.一方,Haq(2014)によって示された海水準変動と比較すると,唐桑層群上部から大島層群下部の堆積相・岩相の変化はローカルなテクトニクスに起因する可能性が高く,ベリアシアンからバランギニアンにかけては堆積盆が沈降し,オーテリビアン期に入ると隆起するとともに安山岩・デイサイト質の火山活動が活発化する.前者は,東北日本の左横ずれ断層運動の卓越時期に一致するのに対して,後者はアダカイトの活動時期と調和的で,海嶺沈み込みにともなうテクトニクスを反映している可能性がある.