日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG06] 地球史解読:冥王代から現代まで

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、白石 史人(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム)、澤木 佑介(東京大学大学院総合文化研究科)、柏原 輝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[BCG06-P07] インド古原生界Jhamarkotra層に見られるリン酸塩ストロマトライトの産状

*佐藤 久遠1パンディ アブヒシェク1、チャクラボルティ パルタ2白石 史人1 (1.広島大学、2.デリー大学)


ストロマトライトは,底生微生物群集によって形成された葉理をもつ堆積物である.その大半は炭酸塩鉱物から構成されるが,まれにリン酸塩からなるものもある.よく研究されているリン酸塩ストロマトライトとしては,ブラジル新原生界Salitre層およびインド古原生界アラバリ超層群Jhamarkotra層の例が挙げられる.新原生代のリン酸塩ストロマトライトの形成には全球凍結が関係していると指摘されている一方で (Shiraishi et al., 2019),古原生界アラバリ超層群の堆積年代は2.1–1.7 Gaとあまり制約されていないことから (Deb and Thorpe, 2004; McKenzie et al., 2013),全球凍結であるヒューロニアン氷河期 (2.3–2.2 Ga)と関係しているかは不明である.本研究では,Jhamarkotra層のリン酸塩ストロマトライトについて記載を行い,新原生界の例と比較することで,リン酸塩ストロマトライトの形成過程,およびそれが地球環境変動とどのように関連するのか明らかにすることを目的とする.研究手法として,野外調査,薄片観察,粉末X線回折法による鉱物同定,EPMAによる元素マッピングを用いた.
 本研究では,主にJhamarkotra鉱山に見られるリン酸塩ストロマトライトを研究対象とした.ここでは長さ10 km以上にわたって層厚約13–37 mのリン酸塩岩層が分布しており,しばしば褶曲によって分布が屈曲していた.変形・変成が顕著な部分ではリン酸塩岩は粉砕されていたり,柱状ストロマトライトが層理面に対して平行に引き延ばされていたりする一方で,変形・変成が小さい部分も一部で見られた.リン酸塩岩の上位と下位は主に苦灰岩であり,一部では砂岩~砂質苦灰岩が見られた.ストロマトライトは野外で明灰色を呈し,主にフルオロアパタイトから構成される一方で,それらの間を充填する基質は野外で暗灰色を呈し,主にドロマイトで構成される.また,ストロマトライトには,酸素の気泡に由来すると考えられる球状構造がみられた.ドロマイトはしばしば粗粒であり,一部には石英脈も見られた.
 新原生界のリン酸塩ストロマトライトと共通する点としては,主にフルオロアパタイトで構成されるストロマトライト部分と,主にドロマイトで構成される基質部分からなる点が挙げられる.また,ストロマトライト中に球状構造が見られることから,新原生界の例と同様に,リン酸塩ストロマトライトの形成にシアノバクテリアなどの酸素発生型光合成微生物が関与していた可能性が考えられる.以上の結果から,古原生界Jhamarkotra層のリン酸塩ストロマトライトの特徴は,全球凍結後に形成された新原生界Salitre層のそれと類似することが明らかとなった.今後は全球凍結との関連性を明確にするため,形成年代を制約することが必要であろう.

引用文献
Deb M., Thorpe R.A. (2004) In: M. Deb and W.D. Goodfellow, eds., Sediment-hosted Lead–Zinc Sulphide Deposits, Narosa Publishing House, pp.246–263.
McKenzie N.R., Hughes N.C., Myrow P.M., Banerjee D.M., Deb M., Planavsky N.J. (2013) Precambrian Research 238, 120–128.
Shiraishi F., Ohnishi S., Hayasaka Y., Hanzawa Y., Takashima C., Okumura T., Kano A. (2019) Sedimentary Geology 380, 65–82.