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[BCG06-P12] 愛知県犬山地域の層状チャートに記録されたジュラ紀前期の海水オスミウム同位体比変動

キーワード:層状チャート、ジュラ紀前期、オスミウム同位体比、Toarcian OAE、パンサラッサ海
ジュラ紀前期は2つの巨大火成岩岩石区(Large igneous provinces, LIPs)の活動により,大規模な環境変動が引き起こされた時代である.トリアス紀―ジュラ紀境界に発生した生物大量絶滅は,約200 Maに活動した Central Atlantic Magmatic Province (CAMP) との関連が示唆されている [1].また,183 Ma にはトアルシアン海洋無酸素事変 (Toarcian Ocean Anoxic Event, T-OAE) が発生したとされ,その要因として同時期に発生したKaroo-Ferrar LIPsの噴出が挙げられている [2].こうしたLIPsの噴出に伴う地球表層の環境変動を議論するためのツールとして,海水のオスミウム (Os) 同位体比が有効である.
海水オスミウム (Os) 同位体比は,大陸起源,マントル起源および宇宙起源の Os フラックスのバランスにより決定される[3].また,大陸地殻は放射壊変起源の187Osに富むため高い187Os/188Os比を示す一方で,マントルや地球外起源物質は相対的に低い187Os/188Os比を持つ.そのため,堆積物から復元した過去の海水Os同位体比は,気候の温暖化に伴う岩石の化学風化の促進 [4] や,マントル由来物質を大量に噴出する大規模火成活動,巨大隕石の衝突などを原因とする地球表層の環境変動を推定する上で有用なプロキシとなる [5, 6].
ジュラ紀前期についても,T-OAE 前後における Os データは複数存在し,いずれの研究においても Os 同位体比の一時的な増加が報告されている [7-10].このOs同位体比の変化から,T-OAEの期間中には大陸の風化強度が最大で 160%増加したことが示唆されている [8].ただし,これらの研究はテチス海の湾奥部やパンサラッサ沿岸の浅海域で堆積した試料を用いており,全球的な情報を十分に反映していない可能性が考えられる.一方で,パンサラッサ遠洋域の深海において堆積した層状チャートからは,よりグローバルな海水Os同位体比のシグナルが得られると期待される.
そこで本研究では,トリアス紀後期―ジュラ紀前期に堆積したことが知られている愛知県犬山地域来栖(くるす)セクションの層状チャートについて,主成分元素・微量元素分析,Os同位体比分析を行った.主成分元素・微量元素分析にはそれぞれXRFおよびICP-MSを,Re-Os同位体測定にはマルチコレクター型ICP-MSをそれぞれ用いた.発表では分析結果を報告し,ジュラ紀前期のOs同位体比変動および得られたデータから見積もったT-OAE前後における風化フラックスの変化について定量的に考察する.
[1] Marzoli et al., 1999, Topics in Geobiology 46, 91–125. [2] Pálfy and Smith, 2000, Geology 28, 747-750. [3] Peucker-Ehrenbrink & Ravizza, 2000, Terra Nova, 12, 205–219. [4] Ravizza et al., 2001, Paleoceanography 16, 155–163. [5] Tejada et al., 2009, Geology 37, 855–858. [6] Sato et al., 2013, Nature Communications 4, 2455. [7] Cohen et al.,2004, Geology 32,157–160. [8] Percival et al., 2016, Geology 44, 759–762. [9] Them et al., 2017, Scientific Reports 7, 1–10. [10] Kemp et al., 2020, Geology 48, 976–980.
海水オスミウム (Os) 同位体比は,大陸起源,マントル起源および宇宙起源の Os フラックスのバランスにより決定される[3].また,大陸地殻は放射壊変起源の187Osに富むため高い187Os/188Os比を示す一方で,マントルや地球外起源物質は相対的に低い187Os/188Os比を持つ.そのため,堆積物から復元した過去の海水Os同位体比は,気候の温暖化に伴う岩石の化学風化の促進 [4] や,マントル由来物質を大量に噴出する大規模火成活動,巨大隕石の衝突などを原因とする地球表層の環境変動を推定する上で有用なプロキシとなる [5, 6].
ジュラ紀前期についても,T-OAE 前後における Os データは複数存在し,いずれの研究においても Os 同位体比の一時的な増加が報告されている [7-10].このOs同位体比の変化から,T-OAEの期間中には大陸の風化強度が最大で 160%増加したことが示唆されている [8].ただし,これらの研究はテチス海の湾奥部やパンサラッサ沿岸の浅海域で堆積した試料を用いており,全球的な情報を十分に反映していない可能性が考えられる.一方で,パンサラッサ遠洋域の深海において堆積した層状チャートからは,よりグローバルな海水Os同位体比のシグナルが得られると期待される.
そこで本研究では,トリアス紀後期―ジュラ紀前期に堆積したことが知られている愛知県犬山地域来栖(くるす)セクションの層状チャートについて,主成分元素・微量元素分析,Os同位体比分析を行った.主成分元素・微量元素分析にはそれぞれXRFおよびICP-MSを,Re-Os同位体測定にはマルチコレクター型ICP-MSをそれぞれ用いた.発表では分析結果を報告し,ジュラ紀前期のOs同位体比変動および得られたデータから見積もったT-OAE前後における風化フラックスの変化について定量的に考察する.
[1] Marzoli et al., 1999, Topics in Geobiology 46, 91–125. [2] Pálfy and Smith, 2000, Geology 28, 747-750. [3] Peucker-Ehrenbrink & Ravizza, 2000, Terra Nova, 12, 205–219. [4] Ravizza et al., 2001, Paleoceanography 16, 155–163. [5] Tejada et al., 2009, Geology 37, 855–858. [6] Sato et al., 2013, Nature Communications 4, 2455. [7] Cohen et al.,2004, Geology 32,157–160. [8] Percival et al., 2016, Geology 44, 759–762. [9] Them et al., 2017, Scientific Reports 7, 1–10. [10] Kemp et al., 2020, Geology 48, 976–980.