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[BCG06-P13] 静岡県瀬戸川帯に分布するアンバー鉱床から復元した中期始新世の海水Os同位体組成

キーワード:アンバー、層序規制型Fe-Mn鉱床、熱水堆積物、Os 同位体比、瀬戸川帯、中期始新世
海水のオスミウム同位体比 (187Os/188Os) は,大陸地殻起源のフラックス (187Os/188Os = ~1.4) と,マントル・宇宙起源のフラックス (187Os/188Os = ~0.126) の相対強度によって決定される [1].そのため, 海水のOs同位体比は,過去の地球における大陸地殻の化学風化や火成活動の強度の指標となるほか,隕石衝突などの短期的なイベントの特定のための地球化学的トレーサーとして活用されてきた.これまで 海水のOs同位体比の復元には,主にFe-Mn酸化物に富む熱水性海底堆積物やFe-Mnクラストなどの現在の海底から採取された堆積物が用いられてきた [2].それに加え,沈み込み帯における付加作用によって付加体中に取り込まれた,過去の海底堆積物を用いた古海水のOs同位体比の復元も進められており,そのような岩石を用いることで顕生代を通じた海水のOs同位体比の長期的な変動の復元も可能であると考えられている [3-8].
本研究では,日本列島の付加体中に分布する層状Fe-Mn鉱床 (以後アンバー「umber」と呼称する) に注目して,過去の海水のOs同位体比の復元を試みた.アンバーは,主に中央海嶺由来の玄武岩 (mid-ocean ridge basalt: MORB) に伴って産する,重金属に富んだ泥質岩であり,かつてFeやMnの低品位資源として小規模な開発が行われていた.これらは過去の海嶺近傍で堆積したFe-Mn酸化物に富む熱水性堆積物を起源にすると考えられており,海水中からOsをはじめとする様々な微量元素を吸着していることから,堆積当時の海水のOs同位体比の記録媒体として重要視されている [6-13].
研究対象としたのは,静岡県四万十帯東部の瀬戸川帯に属し,瀬戸川層群に胚胎される市井沢アンバー鉱床である.本鉱床周辺は,主に玄武岩, 石灰岩,層状チャートが分布する [14].市井沢鉱山周辺に分布する一部の玄武岩はMORBに類似した化学組成を示し,その形成年代は中期始新世 (48〜42Ma) であることが報告されている [15].市井沢アンバーはこれらのMORB類似の玄武岩の直上に分布するため,その堆積年代は玄武岩と同じ48〜42Maと推定される.本発表では,市井沢アンバーとその周辺岩石の詳細な地球化学的特徴を報告し,瀬戸川帯に含まれるアンバーの起源および堆積環境について検討する.さらに,これらのアンバーから復元した中期始新世の海水のOs同位体比組成について議論する.
[1] Peucker-Ehrenbrink and Ravizza, 2000, Terra Nova, 12, 205-219, [2] Peucker-Ehrenbrink and Ravizza, 2020, Geologic Time Scale 2020 (Chapter 8), 239-257, [3] Tejada et al., 2009, Geology, 37, 855–858, [4] Sato et al., 2013, Nature Communications, 4, 2455, [5] Matsumoto et al., 2020, Sci. Rep., 10, 12601, [6] Fujinaga et al., 2022, Ore Geol. Rev., 142, 104683, [7] Kuwahara et al., 2022, Glob. Planet. Change, 216, 103920, [8] Yano et al., 2023, J. Asian Earth Sci., 241, 105480, [9] 藤永ほか, 2001, 資源地質, 51, 29-40, [10] Kato et al., 2005b, Resour. Geol., 55, 291-299, [11] Ravizza et al., 2001, Earth Planet. Sci. Lett., 188, 369–381, [12] Kato et al., 2005a, Geochem. Geophys. Geosyst., 6, Q07004, [13] Kato et al., 2011, Gondwana Res., 20, 594-607, [14] 杉山・下川, 1989, 構造地質, 34, 173-188, [15] 坂本ほか, 1993, 地質学雑誌, 99, 9-28.
本研究では,日本列島の付加体中に分布する層状Fe-Mn鉱床 (以後アンバー「umber」と呼称する) に注目して,過去の海水のOs同位体比の復元を試みた.アンバーは,主に中央海嶺由来の玄武岩 (mid-ocean ridge basalt: MORB) に伴って産する,重金属に富んだ泥質岩であり,かつてFeやMnの低品位資源として小規模な開発が行われていた.これらは過去の海嶺近傍で堆積したFe-Mn酸化物に富む熱水性堆積物を起源にすると考えられており,海水中からOsをはじめとする様々な微量元素を吸着していることから,堆積当時の海水のOs同位体比の記録媒体として重要視されている [6-13].
研究対象としたのは,静岡県四万十帯東部の瀬戸川帯に属し,瀬戸川層群に胚胎される市井沢アンバー鉱床である.本鉱床周辺は,主に玄武岩, 石灰岩,層状チャートが分布する [14].市井沢鉱山周辺に分布する一部の玄武岩はMORBに類似した化学組成を示し,その形成年代は中期始新世 (48〜42Ma) であることが報告されている [15].市井沢アンバーはこれらのMORB類似の玄武岩の直上に分布するため,その堆積年代は玄武岩と同じ48〜42Maと推定される.本発表では,市井沢アンバーとその周辺岩石の詳細な地球化学的特徴を報告し,瀬戸川帯に含まれるアンバーの起源および堆積環境について検討する.さらに,これらのアンバーから復元した中期始新世の海水のOs同位体比組成について議論する.
[1] Peucker-Ehrenbrink and Ravizza, 2000, Terra Nova, 12, 205-219, [2] Peucker-Ehrenbrink and Ravizza, 2020, Geologic Time Scale 2020 (Chapter 8), 239-257, [3] Tejada et al., 2009, Geology, 37, 855–858, [4] Sato et al., 2013, Nature Communications, 4, 2455, [5] Matsumoto et al., 2020, Sci. Rep., 10, 12601, [6] Fujinaga et al., 2022, Ore Geol. Rev., 142, 104683, [7] Kuwahara et al., 2022, Glob. Planet. Change, 216, 103920, [8] Yano et al., 2023, J. Asian Earth Sci., 241, 105480, [9] 藤永ほか, 2001, 資源地質, 51, 29-40, [10] Kato et al., 2005b, Resour. Geol., 55, 291-299, [11] Ravizza et al., 2001, Earth Planet. Sci. Lett., 188, 369–381, [12] Kato et al., 2005a, Geochem. Geophys. Geosyst., 6, Q07004, [13] Kato et al., 2011, Gondwana Res., 20, 594-607, [14] 杉山・下川, 1989, 構造地質, 34, 173-188, [15] 坂本ほか, 1993, 地質学雑誌, 99, 9-28.