日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG07] 微化石生物学の最前線

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:堀 利栄(愛媛大学大学院理工学研究科 地球進化学)、氏家 由利香(高知大学)、野牧 秀隆(海洋研究開発機構)、座長:堀 利栄(愛媛大学大学院理工学研究科 地球進化学)、野牧 秀隆(海洋研究開発機構)、氏家 由利香(高知大学)

09:45 〜 10:00

[BCG07-04] 厳冬期の日本海における熱帯性大型有孔虫の生息確認

*林 広樹1 (1.島根大学総合理工学部)

キーワード:有孔虫、日本海

熱帯性大型有孔虫は熱帯サンゴ礁の石灰質基盤形成者として第3位の位置付けとなっており,サンゴ礁海域の生態系エンジニアとして重要である.このうち,Amphistegina類は日本海南部の沿岸にも広く進出しており,現在の分布東限は北陸地方,北限は隠岐諸島となっている.Amphistegina類の限界生育水温は冬季14℃とされており,冬季の日本海沿岸はそれよりも低温になることから,無効分散の可能性も指摘されていた.
近年,日本海南部の表面海水温は世界の全体平均の2倍の速度で温暖化が進行しており,それによって造礁サンゴ類の分布北限が北上している.2024年には山形県沖で造礁サンゴ類の一種キクメイシモドキが発見された.こうした温暖化を背景として,サンゴ礁生物として重要な大型有孔虫類も,分布を拡大している可能性がある.
2025年2月12日,松江市島根町野波で潜水調査を実施した.アメダス松江観測点によると,この日の最低気温は-2.4℃,最高気温は9.3℃である.午前9時の調査開始時の気温は5℃,水温は11℃であった.調査は5 cm四方の方形枠を用いて,岩礁地に生育するピリヒバ等の芝生状海藻を,定面積で堆積物ごと採取した.採取した試料はローズベンガルにより生体染色し,洗浄,乾燥固定後,双眼実体顕微鏡で有孔虫個体を拾い出した.
水深3.8~5.8 mの範囲で5地点から採取し,そのすべての地点から熱帯性大型有孔虫Amphistegina lobiferaの生体が検出された.個体密度は面積25cm2あたり最大で390個体に達した.これは,産出した生体の全有孔虫個体数のうち第2位を占める.殻最大径は最大個体で1667 μm,最小個体で382 μmとなった.厳冬期におけるAmphistegina類の著しい多産と,小型未成熟個体の存在は,Amphistegina類が島根半島沖では既に通年定着していることを示している.