日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT03] バイオミネラリゼーションと古環境プロキシー

2025年5月26日(月) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:豊福 高志(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、Heinz Petra(University of Vienna)、廣瀬 孝太郎(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)、de Nooijer Lennart Jan(Royal Netherlands Institute for Sea Research)、座長:廣瀬 孝太郎(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所)、Lennart Jan de Nooijer(Royal Netherlands Institute for Sea Research)、Petra Heinz(University of Vienna)

16:15 〜 16:30

[BPT03-09] 海洋酸性化における海藻の有無が大型底生有孔虫の生理応答に与える影響

*池村 優利恵1藤田 和彦1、栗原 晴子1 (1.琉球大学)

キーワード:大型底生有孔虫、海洋酸性化、生物間相互作用

人為的な要因によりCO₂濃度の増加が海洋酸性化を引き起こしつつある。海洋酸性化は海水中のpHや炭酸塩飽和度を低下させ、サンゴや有孔虫などの石灰化生物の成長に悪影響を与える可能性がある。大型底生有孔虫(LBF)はサンゴ礁海域に生息する石灰化原生生物で、溶解しやすい高Mg方解石の殻を持つことから、サンゴ礁石灰化生物の中でも海洋酸性化の影響をより受けやすい。LBFの海洋酸性化に対する応答についての研究はこれまでにも行われてきたが、LBFの生息場を模した条件下で飼育を行った研究はわずかである。将来の気候変動に対するLBFの応答をより正確に予測するためにも、生息場に近い環境下での実験や、他生物との相互作用による影響を検証していく必要がある。そこで本研究ではLBFの生息場を模した環境下で飼育し、海洋酸性化に対して海藻の有無がLBFの生理応答にどのような影響を与えるか検証した。
 酸性化実験は2度行った。1回目の実験(実験1)では、Amphisorus kudakajimensisを用い、2回目の実験(実験2)では、2種の有孔虫Amphisorus hemprichiiCalcarina gaudichaudiiを用いた。海藻はホンダワラ類の1種を用いた。海水条件は両方の実験において、対照区とpHが対照区よりも0.3低い酸性化区の2条件と、海藻の有無の2条件を組み合わせた、計4条件を用意した。実験1では2023年9~10月に約1か月間飼育を、実験2では2024年8~9月に約2週間飼育を行い、海水環境パラメータの測定と有孔虫の生理応答の評価のための測定を行った。
 実験1と実験2においてpHの値は、有藻条件は無藻条件に比べ昼間は高くなり、夜間は低くなった。実験1におけるAmphisorus kudakajimensisの石灰化は無藻条件に比べて有藻条件で溶解が緩和された。共生藻の光合成活性(Fv/Fm)とクロロフィルa量は無藻条件に比べて有藻条件で増加したことから、海藻の存在により共生藻への光阻害が低減された可能性がある。実験2におけるクロロフィルa量は実験1と同様に、2種の有孔虫とも無藻条件に比べて有藻条件で増加する傾向がみられた。また、実験2では有孔虫自体の活性の指標として仮足運動の有無を調べたが、2種の有孔虫とも対照有藻区において仮足運動がみられた個体の割合が最も高かった。
 これらの実験結果から、海藻は代謝により周囲のpHを変動させ、大型底生有孔虫の石灰化や代謝に正の影響を与え、酸性化に対する負の影響を緩和させる可能性が示された。