日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT04] 地球生命史

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

09:30 〜 09:45

[BPT04-03] カナダ・アビティビ緑色岩帯に産する27 億年前の枕状溶岩における変質様式とリンの溶脱との関係

*高階 悠貴1石田 章純1、宮本 毅2掛川 武1 (1.東北大学大学院 理学研究科 地学専攻、2.東北大学 東北アジア研究センター)


キーワード:太古代、リン、枕状溶岩

リンは生命の起源と進化において必要不可欠な元素であるが、大陸が存在せず、現代のような陸源供給がほぼ期待出来ない冥王代や太古代といった地質時代において、どのようにリンが海洋に供給されたのかは未だ明らかになっていない。それに対し、近年、海底熱水との反応によって海底玄武岩からリンが溶脱し、海洋に供給された可能性が提唱されている(Kakegawa et al., 2002; Rasmussen et al., 2021)。一方、現代の海洋において海底玄武岩はリンを沈着させるという研究例もあり(Wheat et al., 1996)、初期地球において海底玄武岩がリンの供給源になったという岩石学的な証拠は未だ十分とは言えない。
本研究では、太古代における海底熱水の活動によって海底玄武岩から海洋へとリンが供給された可能性について、カナダ・アビティビ緑色岩帯における約27 億年前の枕状溶岩とハイアロクラスタイトを対象とし、岩石学的・地球化学的な検証を行う事を目的としている。調査対象としたおよそ100 km×50 kmの領域の地域では、変質様式の異なる枕状溶岩が産出しており、それらを系統的に分析した。調査地域の枕状溶岩には、その殆どでかつての急冷ガラスであり、変質を強く被った辺縁部と、岩石質で変質をあまり被っていない中心部が観察された。分析段階において、二次鉱物に富む前者のような部分をリム部分、二次鉱物に乏しい後者のような部分をコア部分として試料を分類した。そして、それぞれの部分において鉱物学的・地球化学的研究を別々に行った。リム部分とコア部分とで熱水変質の程度に顕著な差がある事から、枕状溶岩に見られる熱水変質は溶岩が固結した後に起こった海底熱水活動によるものと考えられる。熱水変質の痕跡には幾つかの種類があり、変質の度合いが弱いもの、石英脈に富むもの、硫化物に富むもの、方解石脈及び硫化鉱物に富むものに分類された。また、これらの熱水変質の地域依存性も確認出来た。
観察の結果、方解石脈及び硫化鉱物に富む種類の岩石のリム部分においてのみ、燐灰石と楔石の脈が方解石脈の近隣で発見された。その一方、コア部分や方解石脈を含まない岩石のリム部分では、そういった脈状組織は確認されなかった。また、リン酸塩鉱物は燐灰石が唯一の鉱物相だった。リム部分における方解石脈と燐灰石と楔石の脈の共存組織から、リンやチタンの溶解と移動は炭酸に富む熱水によって引き起こされたと考えられる。加えて、方解石の炭素同位体組成と硫化鉱物の硫黄同位体組成から、この熱水は地殻深部を起源とする火山性の熱水であり、局所的に海水と混合しながらカルデラ壁面に沿って大規模に循環を起こしていた事が示唆される。これらの結果は、太古代の海洋に海底玄武岩からリンを供給する過程を考える上で、炭酸に富む熱水が重要な鍵となった事を示している。


引用文献
・Kakegawa, T., Noda, M. and Nannri, H. (2002) Geochemical cycles of bio-essential elements on the early Earth and their relationships to origin of life. Resource geology, 52, 83–89.
・Rasmussen, B., Muhling, J.R., Suvorova, A. and Fischer, W.W. (2021) Apatite nanoparticles in 3.46–2.46 Ga iron formations: Evidence for phosphorus-rich hydrothermal plumes on early Earth. Geology, 49, 647–651.
・Wheat, C.G., Feely, R.A. and Mottle, M.J. (1996) Phosphate removal by oceanic hydrothermal processes: An update of the phosphorous budget in the oceans. Geochimica et cosmochimica acta, 60, 3593–3608.