日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT04] 地球生命史

2025年5月27日(火) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

10:00 〜 10:15

[BPT04-05] 幾何学的形態測定法が明らかにする,恐竜類鎧竜類のクチバシの形態進化

*大藪 隼平1 (1.北海道大学)


キーワード:白亜紀、恐竜、クチバシ、幾何学的形態測定、摂食適応

クチバシは,鳥類をはじめ脊椎動物がもつ主要な採食器官である.その形態の違いは食性の違いを反映していると考えられているため,古脊椎動物の生態を復元する上で重要である.恐竜類の鎧竜類もクチバシをもつ四足歩行の植物食恐竜である.白亜紀を通して繁栄した鎧竜類は,これまでの研究によって,二つの分類グループ,アンキロサウルス類とノドサウルス類に大別されてきた.北米からは両者が豊富に発見されている一方で,アジアからは前者のみが豊富に発見されている.
先行研究によって,北米のアンキロサウルス類のクチバシは四角形で幅広く,ノドサウルス類のクチバシは比較的丸く先細りしている傾向にあることが明らかにされている.また,モンゴルのアンキロサウルス類のクチバシも幅広いものから比較的丸く尖っているものまで様々であることが判明している.しかしながら,それらの研究では,データとして使用された鎧竜類が2属であったり,クチバシ形状の評価が定性的であったりするため,その多様性や進化に関して限定的な議論しかできない問題があった.
本研究では,それらの問題を解決し,鎧竜類のクチバシ形状の進化を包括的に捉えるため,三次元幾何学的形態測定法により一連の解析が行なわれた.まず,フォトグラメトリーによって, 18属19個体の鎧竜類頭骨の3Dモデルが作成された.次に,統計ソフトRのGeomorphパッケージによって,ランドマークの設置によるクチバシ形状のデジタル化,プロクラテス解析によるクチバシデータの位置合わせ,主成分分析による次元の縮小が行われた.
主成分分析の結果,PC1は43.03%, PC2は24.25%, PC3は13.93%の寄与率をもち,その累積寄与率は80%を超えた. PC1はクチバシの前後長の変化を示し,PC2はクチバシの角のでっぱり度合いを示し,PC3はクチバシ先端の尖り度合いを示すと解釈された.PC1, PC3では,アンキロサウルス類とノドサウルス類の両者でクチバシデータの分布は同程度であった.一方で,PC2ではアンキロサウルス類に比べノドサウルス類のクチバシデータの分布は大きかった. また,北米産とアジア産のアンキロサウルス類のクチバシデータの分布に明確な違いはみられなかった.
以上の結果から,両者ともに変化の傾向は異なるものの,これまで考えられていたよりも多様なクチバシをもつことが明らかとなった.したがって,それぞれが柔軟な食性をもつポテンシャルをもっていたと考えられる.また,アンキロサウルス類のクチバシ形状の変化は生息域に依らず一貫しており,この特徴は異なる生息域や環境に適応する上で重要な要素であったと推測される.