日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT04] 地球生命史

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

17:15 〜 19:15

[BPT04-P07] 天然環境での化石化実験による、鯨骨内における初期続成作用

*相原 要生1ジェンキンズ ロバート3、小木曽 正造2 (1.国立大学法人金沢大学、2.金沢大学環日本海域環境研究センター 臨海実験施設、3.金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類)


キーワード:タフォノミー、鯨骨、続成作用

化石化過程は, 化石の産状観察や化学分析を用いた研究を中心に解明されてきた. また, 現生生物遺骸を用いた実験もされているが, 実験室の水槽などをもちいた規模が小さく, 短期間の研究に限られる. このような実験規模では化石化過程の全容を理解することは難しく, 特に, 大型生物を対象とした化石化過程の包括的理解には, 大規模かつ長期的な研究が必要である. このような研究の課題を克服するには, 天然環境での実験が有効である.
本研究は, 天然環境での約4年の長期にわたる化石化実験によって, 鯨遺骸の初期化石化プロセスを明らかにすることを目的とする.
本研究は, 2020年から石川県能登半島九十九湾で鯨遺骸3個体を沈設し実験を行った. 沈設後の鯨骨内の変化を明らかにするために, 実体顕微鏡, 走査型電子顕微鏡観察, 薄片観察, ラマン分光分析を行った.
 鯨骨内には炭素, 酸素, カルシウムから構成される白色物質が形成されていた. この白色物質はCaと結合した有機物結晶であると考えられる. また, 骨内有機物の嫌気的な分解によって形成されると考えられ, 沈設から少なくとも約1年で骨表面付近から形成されることが明らかとなった.
Ca結合有機物結晶は, 化石骨内に見られる炭酸塩鉱物と結晶外形が似ており, 元素組成も同じであった. このことから, Ca結合有機物結晶は化石骨内に見られるような炭酸塩鉱物の前駆体であると考えられる.
従来, 遺骸の分解に伴って直接炭酸塩鉱物が沈殿すると考えられてきた. しかし, 本研究の鯨骨内には鉱物沈殿は見られず, Ca結合有機物結晶が形成された. このことから, 骨内有機物の分解に伴ってCa結合有機物結晶が形成され, やがて炭酸塩鉱物に応物化していく可能性が挙げられる.
本研究は, 天然環境での長期にわたる現生実験により, 今まで見過ごされてきた骨内の化石化プロセスを発見することに成功した.