日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 地球惑星科学のアウトリーチ・実践と理論

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、寺薗 淳也(合同会社ムーン・アンド・プラネッツ)、塚田 健(平塚市博物館)、座長:寺薗 淳也(合同会社ムーン・アンド・プラネッツ)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)

11:45 〜 12:00

[G01-11] 科学とアートで伝える地球の魅力

*丹羽 佑果1、津口 未知郎2、津口 さおり2、天野 翠3秋澤 紀克4石川 晃1 (1.東京科学大学 地球惑星科学系、2.子どものアトリエ クリアール、3.日本放送協会、4.広島大学 地球惑星システム学プログラム)

キーワード:アート、子ども、教育

「科学とアート」という本研究のテーマは、論理と想像、探求と表現、といった一見対極にある要素を統合させたときに、何が生まれるのかという疑問から始まったものである。本発表では、これまでに地球科学の専門性を生かして行なってきたアート作品の制作・展示や、子どもに向けた教育活動の成果について報告し、その社会的な意義について議論する。
 2021年12月からは地球科学・古生物学×アートをテーマにしたワークショップ「はくありうむ」を開催し、開催者が採取してきた化石・鉱物の標本や、地学に関連したアート作品の展示を行なった。なかには同年に有人潜水船しんかい6500をもちいて採取された東北沖プチスポット火山のマントル捕獲岩の鉱物組織を抽象化して制作した、より専門的なテーマと掛け合わせた作品も展示した。2023年2月に表参道にて開催した第3回、2023年8 月にお茶の水で開催した第4回では、ランチタイム講演での研究紹介トークに加えて、宣伝用ポスターや入場チケット、会場のデザインにこだわり世界観を統一することでより参加者の知的好奇心と感性を刺激するような工夫も施した。
2023年7月からはは品川区旗の台の「子どものアトリエ・造形教室 クリアール」と共同で幼児~小学生を対象としたワークショップを開催している。当ワークショップでは、科学的な学びと創作の両方をその内容に組み込んでいる。アストロバイオロジーや固体地球科学、地質学、古生物学などの分野における地球科学の最前線のトピックを扱い、子どもたちが宇宙や地球環境について主体的に考える場を提供する。その後子どもたち自らがそのワークショップのテーマに合わせて「第二の地球」とも呼ばれる太陽系外惑星の景色、そこで暮らす知的生命体のすがた、また過去の地球で暮らしていたかもしれない古生物の姿などを想像し自由に創作する。これにより、科学的知見が子どもの感性や創造性をどのように刺激し、作品として表現されるかについて研究してきた。また2024年度には、研究者をゲストに招いて深海の岩石を対象にした研究について知り、紙風船をつかって潜水船を実際に製作し、オペレーションを体験するワークショップ「潜水船をつくろう」や、アーティストをゲストに招いて惑星のジオラマをつくり、子どもたちが想像した宇宙人のすがたを粘土で工作しながら宇宙と生命について学ぶワークショップ「宇宙人の暮らす星はどんな星」の開催も実現した。
 いま、社会にとって「人と自然がつながる」ための取り組みがますます重要性を増している。地球は、人類が観測・検証できる範囲内で唯一の、液体の水による海があり、生命がはぐくまれ、知的文明をもつ惑星である。これまでの社会は、国際競争のなかで物質的・経済的に大きな発展を遂げてきた反面、自然と共生した人間社会のあり方が次世代に向けた課題となっている。その観点において、地球の成り立ちや、身近な自然のなかにある岩石や化石、地形景観などの学術的な意味を説明できる地球科学の社会的な意義は大きい。本研究は、子どもから大人まで、地球科学による知見を正しく知り、アート性を融合してその楽しさを体験することで、地球そのものの魅力を社会に広めるという使命を担っていると考えられる。