日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 総合的防災教育

2025年5月25日(日) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:林 信太郎(でこぼこな地球のうえをあるくみるかんがえる研究所)、小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)、岩田 修(一般社団法人日本気象予報士会)、座長:林 信太郎中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、岩田 修(一般社団法人日本気象予報士会)

09:45 〜 10:00

[G03-04] GNSS観測の理解を目指した火山防災教材の開発と実践

*佐藤 真太郎1 (1.京都ノートルダム女子大学)

キーワード:GNSS観測、火山観測機器、小・中連携、理科教育、防災教育

2014年9月27日、気象庁が噴火警戒レベル1としていた御嶽山が噴火し、57名の犠牲者、6名の行方不明者、69名の重軽傷者が発生した(消防庁、2015)。噴火予知は依然として困難であり、噴火警戒レベルなどの情報には不確実性が高い(藤井、2016)。そのため、活火山の麓に住む住民や登山者が、火山情報を正しく理解する能力を育成することが重要である。このため、火山防災に関する総合的な教育内容を学校教育に取り入れる必要がある。具体的には、火山活動の観測方法を知り、観測データを読み取り、気象庁などが発表する情報を正しく認識する力を養うことである。
火山観測方法の一つとしてGNSS(Global Navigation Satellite System)がある。GNSS観測は、長期安定性と低コストのため、地殻変動観測において主流となっている(青木、2024)。東京都伊豆大島では、広報誌「広報おおしま」に三原山の火山情報と共にGNSS観測データのグラフが掲載されており(大島町、2023)、住民はそのGNSS観測データのグラフから、現在の三原山の火山活動を理解することになる。
一方、佐藤(2024)は、伊豆大島で、2023年10月初旬~中旬にかけて、伊豆大島内の小学校第6学年児童を対象にし、火山観測システムの理解を目指した学習プログラムを実施している。その結果、噴火の特徴に関する知識と地震計や熱カメラ、遠望カメラなどの観測方法を結び付けて考えることができることなどの教育効果を示している。その上で、今後の展開として、小・中一貫の火山防災教育を検討する必要性について言及した。
以上の背景から、本研究では、学習内容の系統性を考慮し、火山観測システムの理解を深める小・中一貫の火山防災教育プログラムを示す。そして、火山観測の内、GNSS観測の理解を目指した教材を開発し、教材を活用した、中学校第1学年「自然の恵みと火山災害・地震災害」での授業実践を通して、その教育的効果を検討することを研究の目的とする。
開発した教材は、猫砂の下に、マグマに見立てた発砲ウレタンを置き、その上に、GNSSに見立てたボタンを置く。発砲ウレタンが猫砂の中を上昇し、地面が膨張する過程で、GNSSに見立てた2つのボタン間の距離を計測し、iPadを用い、情報をスプレッドシートに記録する。そして、モデル実験上で、GNSS観測データのグラフを作成する活動である。マグマが上昇するモデルは、千葉・有安(2018)を参考にした。
この活動を2つの手立てから分析した。一つは、1班から4班(3班が3名、他各4名、計15名)の学習活動時、具体的には、発泡ウレタンを猫砂の中に入れ、GNSSに見立てた2つのボタン及びメジャーを設置してから実験終了までの間における発話プロトコルデータを作成し、そのデータを基に分析した。2つ目は、授業実践の前後に「2001年から2023年までの伊豆大島の火山の様子について、下のグラフから読み取れることを答えましょう。」という問題を生徒に出題し、その記述内容を分析した。グラフとは「広報おおしま」に掲載されているGNSS観測点間の距離変化のグラフのことである。
その結果、開発した教材は、GNSSの2点間の距離とマグマとの関連性について理解するために効果的であることが示された。さらに生徒は、教材を活用することで、マグマの上昇と避難行動を結び付けて考えることができる可能性も示唆された。また、授業実践の前後に行った「広報おおしま」に掲載されている GNSSデータの折れ線グラフを読み取る活動から、教材を活用した授業は、GNSSの2点間の距離とマグマの動きを関連付け、折れ線グラフの読み取りができるようになることも示唆された。

【引用文献】
青木陽介(2016)「火山における地殻変動研究の最近の発展」『火山』第61巻,第2号,311-344.
藤井敏嗣(2016)「わが国における火山噴火予知の現状と課題」『火山』第61巻,第1号,211-223.
大島町役場政策推進課(2023)「広報おおしま令和6年3月号」1-30.
佐藤真太郎(2024)「火山防災教育におけるプログラミング教材の開発-火山観測機器の理解を目指したSTEAM教材の開発と実践による教育的効果の検討-」『理科教育学研究』第65巻,第2号,359-369.
消防庁(2015)「御嶽山の火山噴火に係る被害状況等について(第40報)」https://www.fdma.go.jp/disaster/info/assets/post760.pdf(accessed 2025.1.22)
千葉達朗・有安恵美子(2018)「発泡ウレタン噴火実験-アナログモデル実験による噴火現象の再現」『For the Future2018』76-77.