日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)


14:15 〜 14:30

[G04-03] 中学校理科における地球分野の学習課題 ~横浜市立丸山台中学校での実践例~

*加藤 忠義1 (1.横浜市立丸山台中学校)

中学校における学習評価が3観点に変わって4年が経過し、徐々に新たな観点に対応した評価方法が確立されつつある。しかし、第3観点にあたる『主体的に学習に取り組む態度』を測るための具体的な学習課題はほとんど示されていない。また、文部科学省が示す学習評価の改善に関する今後の方向性の中でも『単元や題材を通じたまとまりの中で、子供が学習の見通しを持って振り返る場面を適切に設定することが必要』と示されている程度で、これからさまざまな手法を検討していく必要がある。

現在の中学校教育では、中学2年次に『地球』という単元で「地球の大気と天気の変化」について学習をするが、年間を通して大気の状態について気象観測を実施したり学習したりすることは、他の単元学習もあるため時間的な制限ができてしまう現状がある。しかし、「時間的・空間的な視点で自然現象をとらえる」ことを目的としている『地球』の単元において、長期的な観測や定点観測などを行って結果を得ることは、地球規模の自然現象をとらえるうえで重要な実験手法であるとともに、生徒が実際に体験することが地学教育を身近なものにするとともに興味をもつために重要な要素であると考えられる。

一方で現在の中学校では生徒に1台の端末が貸与されたことで、これまで以上に多くの写真や動画資料などのデータを取り扱うことが簡単になった。そのため、生徒は端末に搭載されているカメラ機能を利用すれば、いつでも授業後の黒板やプリント、掲示物などを写真で記録に残すことができる環境が生まれた。これらのICT機器やアプリケーションを有効活用することができれば、これまで実施が困難であった長期的な実験を計画することができるようになってきたといえるだろう。

今回は、ICT機器を利用した「十種雲形に分類される雲を自分で観測してオリジナル雲図鑑を作成する」という学習課題を設定した。また、「学習課題に取り組むうえでのポイント(評価基準なども含む)」をルーブリックとして提示し、生徒が見通しをもって取り組んだり、完成する図鑑の目標を設定しやすくしたりする工夫をした。これまでの「地球の大気と天気の変化」に関する学習では、教師が事前に雲の写真をあらかじめ撮ったり、学習時に空のようすを観察したりすることを行っていた。最近では、ロイロノート・スクールをはじめとしたアプリケーションを利用した授業提案が公開されているが、授業の時間に実際に撮影した写真と天気図を連動させて学習するなどの手法が多く、この方法では学習時の季節や天気によって観察できる雲が決まってしまうため、季節や時間帯、あるいは場所によって変化する大気のようすを生徒が実感することは難しい。しかし、今回のような学習課題を設定することで、生徒一人ひとりの学習に対する姿勢に依存する部分はあるがこれらの欠点は解消できるだろう。生徒が作成した図鑑を見ると、1人当たり平均で12枚の観測写真を結果として提示しており、ルーブリックを提示したことで、ほとんどの生徒が「十種雲形の雲を見つける」という目標を理解し、何をどこまで取り組む必要があるかを理解できたと考えられる。目標が明らかになったことで、生徒が主体的に考え、見通しをもって観測をしないと課題が進まないことに気づき、大気のようすや変化をとらえられるようになったり、発見した雲の種類を調べて区別できたりするようになった。この学習課題に取り組んだ後の振り返りでは「空や雲を気にするようになった」と振り返る生徒も増え、大気のようすを観測することに興味や関心が高まった。

「十種雲形の雲を発見する」ためには、季節や時間帯、天気図などを見ながら「どのような雲がいつ発生するか」を予想する必要がある。また、単純な雲の分類に加えて、中長期的に見通しをもった学習をするきっかけになったといえるだろう。一方で、このような学習方法を取り入れたことによる、生徒の知識や意識の変容などを測る(例えば、テキストマイニングを利用したイメージマップの作成など)ことで、さらなる学習効果を知ることができるとともに、他の単元にも応用できるようになるだろう。