日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)


14:30 〜 14:45

[G04-04] 理科教科書における地震に関連する記述について

*飯尾 能久1 (1.京大防災研・NPO阿武山・東北大学)

キーワード:理科教科書、地震、岩盤の破壊、活断層

私は、昨年度まで9年間、教科書検定専門委員を務め、主に固体地球関係を担当していた。その間、毎年のように繰り返し指摘する事項がいくつかあった。理科の教科書の執筆は、幅広い分野にわたる知識が必要な大変な仕事であり、専門家は「常識」と思っていても、一般的にはそうではないことは当然あり得ると思われる。この場をお借りして、いくつかのよくある事例を紹介したい。

地震は岩石の破壊か?
 「地震は地下の岩石が破壊される現象である」というような記述が、非常に多く見られた。岩石サンプルをプレスで圧縮して壊す実験写真を掲載しているものもあった。地震は(無傷の)岩石が壊れるものではなく、既存の割れ目である断層が再活動するものだということが専門家の常識となっている。しかしながら、地震学者は、断層がすべることを「断層が破壊する」と表現することが多い。これが誤解をまねく原因の一つかもしれない。
 関連して、地震は非常に大きな力に起こされるというような記述も時々見られた。これは上記の見方に直接関係していると思われる。この問題に関しては、ここ数十年で進展が見られた領域である。サンアンドレアス断層のようなプレート境界の断層だけではなく、内陸の断層も「弱い」ということが広く知られるようになった。「弱い」とは、断層をずらすのに必要なせん断応力が、摩擦係数にして0.3より小さく、0.05くらいの可能性もある(Copley,2018)ということである。氷と氷の摩擦係数が0.1程度(Wikipedia 摩擦)なので、地震を起こす断層は非常に弱くすべりやすいと言うことになる。そもそも活断層は地殻内の弱面であり、地震はそこで繰り返し起こることは、大抵の教科書できちんと記述されている。地震は、岩石の破壊よりも、地すべりに近いと述べた方が誤解がないかもしれない。非常に弱いものが自己崩壊するようなイメージが地震の実体であると、個人的は考えている。
 
 地震の発生に関する科学は、世の中の皆さんの期待の大きさから見ると、非常に遅れている分野であり、最新の知見といっても、今後変わる可能性も十分あり得ると思う。我々は、最新の知見をできるだけわかりやすく伝えることを心掛けたいと思っている。講演では、「東北日本北米プレート説」に関連することにも言及したい。