日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:丹羽 淑博(国立極地研究所)、畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)


16:15 〜 16:30

[G04-10] 埼玉県立狭山緑陽高等学校における学校設定科目「環境基礎」を通じた環境教育の実践

*三上 裕香1,2岡本 和明1,3 (1.東京学芸大学大学院 連合学校教育学研究科、2.埼玉県立狭山緑陽高等学校、3.埼玉大学)

キーワード:環境教育、地球システム、災害避難マップ、五感を取り入れた学習、地球温暖化

令和4年4月から令和7年2月にかけての3年間、勤務校である埼玉県立狭山緑陽高等学校(以下、緑陽高校)で環境教育の授業実践を行った。緑陽高校は、単位制の総合学科であり、Ⅰ部(昼間部)とⅡ部(夜間部)のⅡ部制の高校である。多くの選択科目を設置し、生徒が自分の興味・関心に応じた学習を進められる。その中で、環境教育を実践する目的で、学校設定科目として「環境基礎」を設置している。緑陽高校では、Ⅰ部の生徒とⅡ部の生徒が共に選択し、単位を取得できるよう、Ⅰ部の授業終了後からⅡ部の授業開始前までの時間帯(14:35~16:15の間に実施される5限および6限)に「環境基礎」を開講している。緑陽高校の生徒は、情報ビジネス系列、健康福祉系列、国際教養系列、および総合サイエンス系列の4つの系列のいずれかに所属し、専門的な学習を進めることができる。また、所属する系列に関係なく、他の系列の授業を履修することも可能である。特に、総合サイエンス系列では、1年次の選択科目として「数学A」および「環境基礎」が設置されており、「環境基礎」は、環境への理解及び科学的思考力の育成を図るための重要な科目として位置づけられている。令和6年度において、「環境基礎」を受講している生徒は、5限に20名、6限に26名である。なお、緑陽高校の令和6年度1年次の生徒数は合計175名である。
環境基礎の授業においては、不登校経験がある生徒や学習が苦手な生徒、日本語を母国語としない生徒も少なくない。一方で、学ぶことに対して意欲的であり、環境や科学に強い関心を持つ生徒も多く見受けられる。また環境問題に対して、緑陽高校の生徒においても、様々な媒体を通じて環境問題に関する記事に触れる機会が多く、その関心の高まりがうかがえる。しかしながら、地球環境問題に対する生徒の意見の多くは、「地球環境を人間の活動から守るべきである」という視点に基づいている。そのため、「地球に人間が存在しなければ、地球環境は守られるのか」「環境問題を引き起こす人間活動は悪であるのか」といった根本的な疑問が生じることもある。こうした状況の中で、「環境とは何か」について体系的に学ぶ機会は限られているのが現状である。そこで「環境基礎」の授業において、地球システムを踏まえたアクティブラーニングの実践が必要であると考え、教育実践を行った。「環境基礎」の授業において、地球システムを踏まえたアクティブな授業の実践により、地球環境に対する理解を深めること、および地球環境問題に向き合うための科学的思考力を身に付けることを目的とする。
緑陽高校の「環境基礎」における環境教育の実践として、以下の3つの活動を行った。
(1)身近な災害を考える「災害避難マップ」の作成
学校付近を流れる入間川をテーマとし、河川の氾濫に対する災害避難マップの作成を行った。緑陽高校の近くには入間川が流れ、生徒は登下校時、入間川を越えて通学する。そのため、生徒にとって河川は身近な自然の題材であり、興味関心が大きい。授業では、生徒がGoogle Mapを活用して避難経路を考察することで、環境と防災の関連を学んだ。
(2)五感を取り入れた環境学習
生徒の中には学習に対して苦手意識を抱く者が少なくなく、これは学校教育における課題の一つであると考えられる。そこで、アクティブな活動によって学習に対して前向きになれるよう、生徒自身が実体験できる授業を行うことが必要である。特に、授業に五感を取り入れることで生徒の学びの定着につながると考え、実践を行った。硬水と軟水の試飲や昆布出汁の比較実験を行い、味覚・嗅覚・視覚を活用した体験型授業を実施した。実践においては2種類の水を比較するだけではなく、なぜ違いが生まれるのか、地学的な視点から議論を行い、環境に対する理解を深めることを試みた。
(3) ポスター作成による環境問題の議論
生徒自身が地球温暖化について調査し、ポスターを作成することで、生徒自身で学ぶ実践を行った。この実践により、生徒は地球温暖化についてより詳細に調査するとともに、ポスター作成によって自身の学びを他人に伝える力も身につく。
今年度、環境基礎を受講している生徒46名に対して授業当初から継続してアンケート調査を行った。「自然や環境に興味がありますか。」という問いでは、アクティブな授業実践により、自然や環境に対する興味・関心が徐々に高まる傾向が見られる。今後も継続的にアンケートを実施し、授業の改善に努めたい。また、地球システムを含めた環境への理解について、生徒がどのように学んだのかを図ることも今後の課題であると考える。
本研究では、主に「知識の習得」を重視した実践を紹介したが、今後は「自然観察を中心とした活動の実践」が最も重要な課題となる。机上での学習に加えて、自然観察や実験を積極的に取り入れ、より実践的な環境教育を推進していく。