日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(国立極地研究所)、座長:丹羽 淑博(国立極地研究所)、畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)


16:45 〜 17:00

[G04-12] 高校生の防災リテラシーを高める外国語教育と防災教育の融合

*松井 市子1永田 俊光2,4小田 隆史3,4 (1.新潟県立新潟高等学校、2.気象庁新潟地方気象台、3.東京大学、4.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:防災教育、外国語教育、防災リテラシー、緊急地震速報

1.はじめに
 近年、日本では自然災害が多発し、防災教育の重要性が年々高まっている。義務教育課程では、学習指導要領に準拠した教科横断的な防災教育の実践が求められている。一方、高等教育課程では総合的な探究の時間の探究課題として防災を取り上げる事例はあるものの,文部科学省の全国調査によると、教科学習の中で防災教育の実践は非常に少ないことが示されている。本研究では、外国語(英語)を活用した防災教育が高校生の防災リテラシーの向上に与える影響を検証することを目的とし、防災教育と外国語教育を統合した防災学習カリキュラムを提案する。

2.防災学習カリキュラムの開発と実践
 本研究では、先行研究で開発された地震防災教育プログラムを参考にし、外国語教育と防災教育を統合した防災学習カリキュラムを開発・実践した。具体的には、訪日外国人が緊急地震速報を理解し適切な行動を取るためのシナリオを英語で作成し、高校生が防災知識と英語による情報伝達能力を同時に習得できるようカリキュラムを設計した。本カリキュラムは、以下の3ステップで構成し、防災教育の学習目標と外国語教育の学習内容を設定した(表1)。

1)情報収集:地域の災害特性や緊急地震速報の仕組みについて英語の情報を収集して学ぶ。生徒は気象庁や日本政府観光局(JNTO)が提供する英語資料を活用し、緊急地震速報の機能と役割を英語で理解する。
2)グループワーク:訪日外国人が緊急地震速報を聞いた際に適切な行動を取れるよう、英語で説明するシナリオを作成する。生徒は外国人視点で災害時の行動を考え、英語による情報伝達スキルを実践的に学ぶ。
3)グループ発表・相互評価:作成したシナリオを発表し、各グルーブが作成した情報の効果を評価する。生徒は自身の学習を振り返り、他者の発表を通じてさらなる理解を深める。

本カリキュラムは、新潟県立高等学校の1年生360名を対象に、2024年6月~7月の「コミュニケーション英語Ⅰ」の授業(50分×3コマ)で実施し、日本人教師(JTE)と外国語指導助手(ALT)によるティームティーチング形式で英語による学習を進めた。

3.カリキュラムの評価
3.1. 防災教育の分析
 英語学習を取り入れた防災教育の学習目標の達成度を検証するため、カリキュラムの実施前後に10項目の質問に対して「そう思わない(0点)~そう思う(3点)」の4件法を用いて生徒に自己評価してもらった。有効回答(n=127)のデータを用いて対応のあるt検定で分析した結果、全項目において1%水準で統計的に有意な向上を確認した(表2)。これにより、先行実施されている防災教育と同等の学習効果が得られることが示された。

3.2. 外国語教育の分析
 外国語教育と防災教育の相互関係を検証するため、2)グループワークの成果をALTが評価ルーブリック(表3)を用いて評価した。評価項目は「情報の正確さ・想定の多様さ・表現力」の3観点とし、「優れている・基準を満たしている・改善を要する」(3-1点)で採点した。表4は、得点別人数を観点毎に示したものである。外国語の「表現力」は全員が基準以上の出来栄えだった。防災教育に関する「情報の正確さ」もほぼ全員が基準以上の出来栄えで、英語による情報伝達技能を実践的に習得したことを示している。一方、「想定の多様さ」に関して改善を要する生徒が25人存在したので、質問10の点数を基準に、点数が低い群(0,1点)と高い群(2,3点)でクロス集計分析すると、高得点群の方が「想定の多様さ」の評価が高い傾向が見られた(表5)。事後ではそのような傾向がなかったので、事前にイメージ想起を強化する必要性が示唆された。

4.まとめ 
 本研究では、外国語教育と防災教育を統合した防災学習カリキュラムを開発し、その実践を通じて高校生の防災リテラシーと外国語能力との関連を検証した。英語学習を取り入れることで、地震発生時の適切な対応行動への理解が深まり、外国人視点での状況想定力が向上するなど、防災教育としての学習効果が確認された。 また、英語を用いたシナリオ評価活動が、情報伝達能力の向上とともに防災リテラシーの強化に寄与することが示唆された。先行研究ではイメージ想起力を高めることが防災リテラシーの向上に寄与することが示されていたので、外国人視点で災害時の行動をイメージ想起させ、英語で情報伝達する場面を設定する重要性が確認できた。今後の課題として、実際の外国人との交流をカリキュラムに組み込み、より実践的な学習環境の中で学習効果を検証し、防災教育における外国語活用の有効性をさらに明確にしたい。