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[G04-P06] 軽石の「水に浮く性質」と「非晶質」に着目した教材開発
キーワード:福徳岡ノ場、軽石、教材開発、水に浮く性質、非晶質
1 背景と目的
2021年8月,海底火山福徳岡ノ場で大規模な噴火が生じた.噴火に伴って発生した大量の軽石は軽石筏をつくり,沖縄県を中心とした日本各地の沿岸に漂着して漁業や観光業に影響を及ぼした (宇佐美・新城, 2022; 吉田ほか, 2022; Chang et al. 2022; Ohno et al. 2022; Yoshida et al. 2022).日本は世界有数の火山大国であり,学校教育現場でこのような自然現象と人間生活との関わりを取り上げ学習することが望ましいと考えられる.本研究は軽石の物質としての性質を利用した新規教材開発に取り組むものである.特に本発表では軽石の「水に浮く性質」と「非晶質」に着目した教材開発について紹介する.
2 軽石の「水に浮く性質」に着目した教材開発
2-1 教材について
軽石のような多孔質試料では見かけの密度と真の密度を区別することが重要である.軽石が水に浮くのは見かけの密度が水よりも小さいためである.軽石の気孔内部を水が置換することで見かけの密度は大きくなり,水よりも大きな値となった時点で沈没すると考えられる.そこで,軽石の気孔内部の空気と水を置換するための機構として簡易減圧器を作製し,減圧操作を体験しながら軽石の「水に浮く性質」を考えることができる教材開発を行なった.なお,簡易減圧器はジャム瓶(200 mL)と手動空気抜き(ペチャンコポンプ, DAISO)をエアホースを用いて繋ぎ合わせる構造とした.
2-2 実験方法
瓶内に水を入れ,軽石を浮かべる.蓋を取り付けて減圧を行うと軽石の開気孔から激しく発砲する様子が見られる.発砲が見られなくなったら減圧操作を止め,大気圧に戻す.すると開気孔内では,減圧下で膨張していた残存大気が収縮し,小さくなった体積分周囲の水を引き込む.これにより軽石の見かけの密度は増加し,水の密度を上回ると沈没する.
2-3 授業実践
非理科専攻の教員養成系大学生を対象とした授業(90分間)において,本教材を用いた授業実践を行なった.授業では始めに日本人にとって,火山現象と私たちの生活は切っても切り離せないものであることを述べた.次に,笠間ほか(2011)による大規模な噴火を模擬した水槽実験を演示し,火山噴出物について紹介した.その後,本教材による実験を行わせた.
本教材による実験の開始時にはあらかじめ福徳岡ノ場での噴火について述べ,沖縄県の対応について紹介した.まず「軽石は(“石”なのに)なぜ水に浮くのか」という問いを立てた.次に4名の班単位で実験を行わせ,軽石の挙動を観察させた.実験後,改めて同様の問いに答えさせた.実践の結果や考察については,当日の発表にて紹介する.
3 軽石の「非晶質」に着目した教材開発
3-1 教材について
軽石は火山噴出物の一つであり,爆発的噴火の際に急冷されて形成する.そのため大部分が非晶質な物質である.軽石の非晶質な性質を活用した事例として,例えば寺尾・澤崎(1996)のように軟質の降下軽石を陶磁器用釉薬に利用することが挙げられる.また神崎(2007)は七宝焼用の電気炉を用いて高等学校での陶器作りの実践を行なった.そこで,学校現場の設備でも可能な福徳岡ノ場産軽石を素材とした釉薬の作製・焼成方法を検討するとともにそれを用いた授業開発にも取り組むこととした.
3-2 実験方法
粉砕した福徳岡ノ場産軽石,蛙目粘土,炭酸カルシウムをゼーゲル式に基づいて透明釉または結晶釉またはマット釉になる質量比で混合し基礎釉とした.また,融点降下剤として無鉛フリットを加える.
焼成にはガスバーナーと坩堝を使用した.信楽焼粘土で作製した素焼き済みのチップに水で伸ばした釉薬を平筆で薄く塗って坩堝内に設置した.また坩堝をガスバーナー用マッフル内に入れ,ガスバーナーで加熱を行なった.加熱の目安として,坩堝が赤熱化することを確認した.必要な時間の加熱後,ガスバーナーの火を止め,自然に放冷してからサンプルを回収した.
教育実践に向けて: 基礎釉の質量に対して0%、50%、100%、150%、200%の質量比でフリットを加え,1時間の加熱を行ったところ,透明釉では150-200%,結晶釉薬では150%,マット釉では200%が適した条件であった.教育実践では,軽石の大部分が急冷過程で形成される非晶質物質であることや,火山と人間生活の関係を考察できる展開とすることが考えられる.
2021年8月,海底火山福徳岡ノ場で大規模な噴火が生じた.噴火に伴って発生した大量の軽石は軽石筏をつくり,沖縄県を中心とした日本各地の沿岸に漂着して漁業や観光業に影響を及ぼした (宇佐美・新城, 2022; 吉田ほか, 2022; Chang et al. 2022; Ohno et al. 2022; Yoshida et al. 2022).日本は世界有数の火山大国であり,学校教育現場でこのような自然現象と人間生活との関わりを取り上げ学習することが望ましいと考えられる.本研究は軽石の物質としての性質を利用した新規教材開発に取り組むものである.特に本発表では軽石の「水に浮く性質」と「非晶質」に着目した教材開発について紹介する.
2 軽石の「水に浮く性質」に着目した教材開発
2-1 教材について
軽石のような多孔質試料では見かけの密度と真の密度を区別することが重要である.軽石が水に浮くのは見かけの密度が水よりも小さいためである.軽石の気孔内部を水が置換することで見かけの密度は大きくなり,水よりも大きな値となった時点で沈没すると考えられる.そこで,軽石の気孔内部の空気と水を置換するための機構として簡易減圧器を作製し,減圧操作を体験しながら軽石の「水に浮く性質」を考えることができる教材開発を行なった.なお,簡易減圧器はジャム瓶(200 mL)と手動空気抜き(ペチャンコポンプ, DAISO)をエアホースを用いて繋ぎ合わせる構造とした.
2-2 実験方法
瓶内に水を入れ,軽石を浮かべる.蓋を取り付けて減圧を行うと軽石の開気孔から激しく発砲する様子が見られる.発砲が見られなくなったら減圧操作を止め,大気圧に戻す.すると開気孔内では,減圧下で膨張していた残存大気が収縮し,小さくなった体積分周囲の水を引き込む.これにより軽石の見かけの密度は増加し,水の密度を上回ると沈没する.
2-3 授業実践
非理科専攻の教員養成系大学生を対象とした授業(90分間)において,本教材を用いた授業実践を行なった.授業では始めに日本人にとって,火山現象と私たちの生活は切っても切り離せないものであることを述べた.次に,笠間ほか(2011)による大規模な噴火を模擬した水槽実験を演示し,火山噴出物について紹介した.その後,本教材による実験を行わせた.
本教材による実験の開始時にはあらかじめ福徳岡ノ場での噴火について述べ,沖縄県の対応について紹介した.まず「軽石は(“石”なのに)なぜ水に浮くのか」という問いを立てた.次に4名の班単位で実験を行わせ,軽石の挙動を観察させた.実験後,改めて同様の問いに答えさせた.実践の結果や考察については,当日の発表にて紹介する.
3 軽石の「非晶質」に着目した教材開発
3-1 教材について
軽石は火山噴出物の一つであり,爆発的噴火の際に急冷されて形成する.そのため大部分が非晶質な物質である.軽石の非晶質な性質を活用した事例として,例えば寺尾・澤崎(1996)のように軟質の降下軽石を陶磁器用釉薬に利用することが挙げられる.また神崎(2007)は七宝焼用の電気炉を用いて高等学校での陶器作りの実践を行なった.そこで,学校現場の設備でも可能な福徳岡ノ場産軽石を素材とした釉薬の作製・焼成方法を検討するとともにそれを用いた授業開発にも取り組むこととした.
3-2 実験方法
粉砕した福徳岡ノ場産軽石,蛙目粘土,炭酸カルシウムをゼーゲル式に基づいて透明釉または結晶釉またはマット釉になる質量比で混合し基礎釉とした.また,融点降下剤として無鉛フリットを加える.
焼成にはガスバーナーと坩堝を使用した.信楽焼粘土で作製した素焼き済みのチップに水で伸ばした釉薬を平筆で薄く塗って坩堝内に設置した.また坩堝をガスバーナー用マッフル内に入れ,ガスバーナーで加熱を行なった.加熱の目安として,坩堝が赤熱化することを確認した.必要な時間の加熱後,ガスバーナーの火を止め,自然に放冷してからサンプルを回収した.
教育実践に向けて: 基礎釉の質量に対して0%、50%、100%、150%、200%の質量比でフリットを加え,1時間の加熱を行ったところ,透明釉では150-200%,結晶釉薬では150%,マット釉では200%が適した条件であった.教育実践では,軽石の大部分が急冷過程で形成される非晶質物質であることや,火山と人間生活の関係を考察できる展開とすることが考えられる.
