日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG20] 原子力と地球惑星科学

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、濱田 崇臣((一財)電力中央研究所)、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)、座長:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、濱田 崇臣((一財)電力中央研究所)

14:15 〜 14:30

[HCG20-03] 沿岸域における万年スケールの地形変化評価のキャリブレーションとバリデーション-上北地域を事例として

*高井 静霞1、三箇 智二2、島田 太郎1、武田 聖司1 (1.国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構、2.基礎地盤コンサルタンツ株式会社)

キーワード:地形変化評価モデル、キャリブレーションとバリデーション、最終氷期-間氷期サイクル、上北平野

放射性廃棄物の中深度処分は、放射能レベルが比較的高い一方で(評価期間:10万年)、埋設深度が地層処分に比べて浅い(地表からの離隔距離:70 mを確保)。そのため沿岸域では特に、長期的な地形変化・海水準変動に伴う影響評価(侵食による埋設深度の減少、地下水流動・地下環境の変化)が重要となる。将来の海水準変動の不確かさを考慮した評価には、地形発達モデルに基づく数値シミュレーション(Landscape evolution models: LEMs)が有用だが、侵食・堆積に関するLEMsのパラメータの多くは測定から直接設定できない。将来の影響評価には、万年スケールを対象としたLEMsのパラメータ設定が課題の一つだった。
本研究では、過去12.5万年間の再現解析(最終氷期・間氷期サイクル)に基づく地形変化評価パラメータのキャリブレーションとバリデーションの方法論を構築し、青森県上北沿岸を事例に検証した。評価は2つのステップで行った。(i)キャリブレーション:LEMsの最適なパラメータセットは、過去~現在の地形変化に関する条件(以下、拘束条件:段丘面侵食速度、埋没谷深度、河床縦断形、谷底侵食低地の幅)を満たす値として求めた。キャリブレーションは、影響度評価(Morris法:拘束条件への影響度が高いパラメータの抽出)・近似モデル(拘束条件をパラメータの2次多項式で近似)を組み合わせることで効率的に行った。再現した現地形と実地形を比較し、妥当性を確認した。(ii)バリデーション:地形・地質学的特徴が類似する別流域において、キャリブレートしたパラメータを用いた再現解析を行い、さらなる妥当性を確認した。
日本原子力研究開発機構では、長期スケールを対象としたLEMs [1,2]を開発している(斜面域・河川域での土砂移動、テクトニクス、海域での堆積、気候・海水準変動、地質分布を考慮)。本研究では同LEMsに、河川侵食・堆積モデルの変更(Detachment-limited model(DLM)/Transport-limited model(TLM)の混合)、海食(海食崖の平行後退、浅海底の鉛直方向の侵食)・漂砂(一定速度での堆積物厚の増加)の機能を追加したものを用いた。入力データのうち、古地形・隆起速度は対象地域に広く分布する海成段丘(MIS5e, 7, 9)、沖積層厚分布はボーリング・音波探査データに基づき推定した。また入力パラメータの一部は、実地形や測定に基づき推定した(河川侵食パラメータ(DLM/TLMでの流域面積・河床勾配の指数):河床縦断形解析、地質の受食性:一軸圧縮強度)。
(i)キャリブレーション(対象:戸鎖川流域)の結果、影響度が大きいパラメータとして5つ(斜面侵食、河川侵食(DLM/TLM)、海食、気候変動に伴う侵食量の変動の大きさ)が抽出され、近似モデルは全ての拘束条件を決定係数0.7以上で近似した。実地形との標高差は領域の約8割で±15 m以内に収まり、海水準変動に伴う埋没谷の形成、MIS5e海成段丘と同様の位置での海食崖の形成が確認された。(ii)バリデーション(対象:二又川流域)の結果、陸域の約8割で実地形との標高差が±15 m以内となり、海成段丘の侵食速度(MIS9~5eの6箇所の平均値)を相対誤差15%で再現したことから、キャリブレーションの妥当性を確認した。この結果を将来に外挿することで、海水準変動の不確かさを考慮した影響評価に取り組んでいるところである。
本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「令和5・6年度廃棄物埋設における環境条件の評価に関する研究」の成果の一部である。

[1] 谷川ほか, 地形変化シミュレーション方法, 特許5422833, 2013.
[2] 谷川ほか, 地形, 37(2), 2016.