17:15 〜 19:15
[HCG20-P01] 火山岩岩脈分布に関するデータ収集・整備
キーワード:地層処分、岩脈、地質図幅、GIS、第四紀火山、古カルデラ・コールドロン
【背景・目的】
地層処分のサイト選定や安全評価に重要となる火山・火成活動については、その調査・評価技術における課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km(科学的特性マップにおける好ましくない範囲の基準)以上に及ぶ場合のデータの蓄積が求められるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため西山ほか(2023)では、火山体が中心火道とそこから放射状に伸びる岩脈の分布を反映しているといった仮定のもと、地理情報システム(GIS)を用いた数値標高データの解析により、岩脈分布のモデル化および火道安定性評価の検討をしている。しかしながら、本検討では解析の範囲を火山体に限定しているため、火山体を超えた岩脈についてはモデル化や評価ができないという課題がある。
野外で地質踏査をすると、第四紀火山から離れた場所でも小規模ながら岩脈が貫入している露頭が見つかることがある。このような岩脈が近傍の第四紀火山に関連するかどうかは、岩脈の広がりを評価するうえで重要となる。そこで我々は、産業技術総合研究所発行の地質図幅に着目し、地質図幅から「岩脈類」を抽出し、第四紀火山との関連性について検討を試みた。
【実施内容】
情報収集対象は20万分の1の地質図幅とし、「中国・四国地方」、「北陸・中部及び近畿地方」の31図幅及び「九州」に含まれる「福岡」、「中津」のうち山口県に掛る部分とした。「岩脈」は図幅の凡例にある「寄生火山」、「貫入岩」、「岩頸」、「岩脈」及び「岩床」を対象とした。データ抽出作業としては、岩脈の分布についてはGISソフトウェアを用いてデジタルでトレースを行い、Shape形式ファイルなどGISデータを作成して白地図上に整理したうえで、「位置(緯度・経度)」、「サイズ(長径・短径など)」、「方位」、「時代」、「岩型」、「岩脈が貫入している地層名、時代」及び「最寄り火山の火山名、火口からの距離」のデータを抽出し、表計算ソフトウェア上に整理した。また、対象範囲内では古カルデラ・コールドロンが存在しており、それらの位置を文献情報に基づきGIS化するとともに、それらと岩脈との距離についてもデータ化した。
【結果】
抽出された火山岩岩脈等の数は、全体で1,219個であった。また、66個の第四紀火山及び33個の古カルデラ・コールドロンの情報も整理した。
岩脈の長軸長は1 km未満のものが637個と半数以上を占め、2 km未満まで含めると986個と80%を超える。最長は19,456mで、これは熊野酸性岩脈に分類される古座川岩体である。また他の10,000mを超える岩脈も古カルデラ・コールドロンの外周に分布している。
岩脈の時代としては、第四紀16個、新第三紀703個、古第三紀65個、白亜紀435個であった。第四紀岩脈の内訳は隠岐4個、大山10個、女亀山2個であり、地表に露出している第四紀の岩脈分布は第四紀火山から10 km以内に限られる。第四紀よりも古い岩脈については、第四紀火山と岩脈との距離、その方位と岩脈の伸長方向のなす角の関係を検討し、第四紀よりも古い岩脈と第四紀火山との関係性は低いと考えられた。
今後は、データ収集範囲を拡張するとともに、整理されたデータを用いて古カルデラ・コールドロンとそれらの近傍の岩脈との距離を把握するなど、火山活動に伴う岩脈の進展の程度が古い火山活動においても第四紀火山と同様であったかどうかなどの検討を実施していく予定である。
以上のような岩脈情報の網羅的な収集及びそれらを用いた統計的な検討は、地層処分事業においてマグマの影響範囲を調査・評価する上での基礎情報としても有益であると考えられる。例えば、既存の火山の将来的な発達や、新規火山の発生に係る評価を行うための、岩脈形成に関する地球物理学的モデルや確率論的なモデルの構築に有用となり得る。
【参考文献】
西山ほか,応用地質,第64巻,pp.98-111,2023.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している。
地層処分のサイト選定や安全評価に重要となる火山・火成活動については、その調査・評価技術における課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km(科学的特性マップにおける好ましくない範囲の基準)以上に及ぶ場合のデータの蓄積が求められるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため西山ほか(2023)では、火山体が中心火道とそこから放射状に伸びる岩脈の分布を反映しているといった仮定のもと、地理情報システム(GIS)を用いた数値標高データの解析により、岩脈分布のモデル化および火道安定性評価の検討をしている。しかしながら、本検討では解析の範囲を火山体に限定しているため、火山体を超えた岩脈についてはモデル化や評価ができないという課題がある。
野外で地質踏査をすると、第四紀火山から離れた場所でも小規模ながら岩脈が貫入している露頭が見つかることがある。このような岩脈が近傍の第四紀火山に関連するかどうかは、岩脈の広がりを評価するうえで重要となる。そこで我々は、産業技術総合研究所発行の地質図幅に着目し、地質図幅から「岩脈類」を抽出し、第四紀火山との関連性について検討を試みた。
【実施内容】
情報収集対象は20万分の1の地質図幅とし、「中国・四国地方」、「北陸・中部及び近畿地方」の31図幅及び「九州」に含まれる「福岡」、「中津」のうち山口県に掛る部分とした。「岩脈」は図幅の凡例にある「寄生火山」、「貫入岩」、「岩頸」、「岩脈」及び「岩床」を対象とした。データ抽出作業としては、岩脈の分布についてはGISソフトウェアを用いてデジタルでトレースを行い、Shape形式ファイルなどGISデータを作成して白地図上に整理したうえで、「位置(緯度・経度)」、「サイズ(長径・短径など)」、「方位」、「時代」、「岩型」、「岩脈が貫入している地層名、時代」及び「最寄り火山の火山名、火口からの距離」のデータを抽出し、表計算ソフトウェア上に整理した。また、対象範囲内では古カルデラ・コールドロンが存在しており、それらの位置を文献情報に基づきGIS化するとともに、それらと岩脈との距離についてもデータ化した。
【結果】
抽出された火山岩岩脈等の数は、全体で1,219個であった。また、66個の第四紀火山及び33個の古カルデラ・コールドロンの情報も整理した。
岩脈の長軸長は1 km未満のものが637個と半数以上を占め、2 km未満まで含めると986個と80%を超える。最長は19,456mで、これは熊野酸性岩脈に分類される古座川岩体である。また他の10,000mを超える岩脈も古カルデラ・コールドロンの外周に分布している。
岩脈の時代としては、第四紀16個、新第三紀703個、古第三紀65個、白亜紀435個であった。第四紀岩脈の内訳は隠岐4個、大山10個、女亀山2個であり、地表に露出している第四紀の岩脈分布は第四紀火山から10 km以内に限られる。第四紀よりも古い岩脈については、第四紀火山と岩脈との距離、その方位と岩脈の伸長方向のなす角の関係を検討し、第四紀よりも古い岩脈と第四紀火山との関係性は低いと考えられた。
今後は、データ収集範囲を拡張するとともに、整理されたデータを用いて古カルデラ・コールドロンとそれらの近傍の岩脈との距離を把握するなど、火山活動に伴う岩脈の進展の程度が古い火山活動においても第四紀火山と同様であったかどうかなどの検討を実施していく予定である。
以上のような岩脈情報の網羅的な収集及びそれらを用いた統計的な検討は、地層処分事業においてマグマの影響範囲を調査・評価する上での基礎情報としても有益であると考えられる。例えば、既存の火山の将来的な発達や、新規火山の発生に係る評価を行うための、岩脈形成に関する地球物理学的モデルや確率論的なモデルの構築に有用となり得る。
【参考文献】
西山ほか,応用地質,第64巻,pp.98-111,2023.
【謝辞】
本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和6年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性総合評価技術開発)」の成果の一部を使用している。