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[HCG20-P08] 電子顕微鏡観察に基づくセメンテーションによるベントナイトの膨潤性への影響の微視的理解

キーワード:走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、粘土鉱物、スメクタイト、地層処分、長期変質
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、緩衝材として膨潤性粘土であるベントナイトを使用することが検討されており、ベントナイトが膨潤することで低透水性を維持し、放射性核種の移行を抑制することが期待されている。しかし、長期的にはベントナイトの空隙に二次鉱物が沈殿してモンモリロナイトに固着するセメンテーションという現象が起き、ベントナイトの膨潤性が低下する可能性が指摘されている[1]。ベントナイトの膨潤性を長期にわたって予測するには、モンモリロナイトと二次鉱物の共生関係に着目して、ナノ・ミクロスケールでそのメカニズムを理解する必要がある。しかし、通常の電子顕微鏡では試料を真空状態に置くため、ベントナイトが膨潤した状態を観察することが困難であった。そこで、本研究ではベントナイトが膨潤した状態を維持したまま観察できる試料を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、セメンテーションによる膨潤性への影響を微視的に検討した。
試料は山形県月布ベントナイト鉱山から採取し、天然環境で続成作用によりセメンテーションされた原鉱石と、それを粉砕・再成型してセメンテーションの影響をなくした再構成試料を用いて、セメンテーションの有無による膨潤性の違いを比較した。月布鉱山産ベントナイトを用いた先行研究[1][2]では、再構成試料に比べて原鉱石の方が膨潤圧が低くなったことが報告されている。数mm角に切断した試料を寒天包埋した上で超純水に浸漬、膨潤させ、水をエタノール、樹脂に順次置換することで膨潤状態を維持した試料を作製した[3]。試料表面を研磨した上でSEMで観察を行ったところ、どちらの試料でもモンモリロナイトに樹脂が十分に浸透した部分としていない部分が見られた。特に一部のシリカや長石など随伴鉱物の粒子の周縁では、モンモリロナイトが十分に浸透していない部分があり、粒子周縁の数百nmから1 µm程度の範囲にモンモリロナイトが他の部分より密に分布している様子が観察された。原鉱石と再構成試料を比較すると、原鉱石の方がモンモリロナイトがより密に分布している随伴鉱物の割合が多かった。続いて、ウルトラミクロトームで超薄切片を作製し、TEMでモンモリロナイトの底面間隔を計測した。随伴鉱物に接した部分と接していない部分に分類して比較したところ、いずれの試料でも随伴鉱物との界面近傍のモンモリロナイトの方が底面間隔が小さい傾向が見られた。さらに再構成試料と原鉱石を比較すると、随伴鉱物と接した部分と接していない部分のいずれでも、原鉱石の方が底面間隔が小さい傾向が見られた。これらの観察から、モンモリロナイトの膨潤は試料中で不均質であり、特にセメンテーションされた原鉱石では随伴鉱物との界面近傍で膨潤しにくい傾向があることが明らかになった。ベントナイトが形成される過程でこれらの随伴鉱物とモンモリロナイトが固着したことで、セメンテーションが引き起こされていると考えられる。その結果、モンモリロナイトへの水のアクセスが妨げられ、十分に膨潤しない箇所が存在することで、ベントナイトの膨潤圧の低下を引き起こしている可能性が考えられる。本発表では、観察箇所をさらに拡充するとともに、多数観察した結果を統計的に比較して議論を行う。
参考文献
[1] 日本原子力研究開発機構・原子力環境整備促進・資金管理センター(2019). 平成30年度 地層処分技術調査等事業 ニアフィールドシステム評価確証技術開発報告書, 平成31年3月.
[2] Ito, D., and H. Komine. 2023. Smart Geotechnics for Smart Societies, 1834–38. London: CRC Press.
[3] Bozolla, J.J. (2007), Electron microscopy: methods and protocols (pp.1–20). New York: Springer.
試料は山形県月布ベントナイト鉱山から採取し、天然環境で続成作用によりセメンテーションされた原鉱石と、それを粉砕・再成型してセメンテーションの影響をなくした再構成試料を用いて、セメンテーションの有無による膨潤性の違いを比較した。月布鉱山産ベントナイトを用いた先行研究[1][2]では、再構成試料に比べて原鉱石の方が膨潤圧が低くなったことが報告されている。数mm角に切断した試料を寒天包埋した上で超純水に浸漬、膨潤させ、水をエタノール、樹脂に順次置換することで膨潤状態を維持した試料を作製した[3]。試料表面を研磨した上でSEMで観察を行ったところ、どちらの試料でもモンモリロナイトに樹脂が十分に浸透した部分としていない部分が見られた。特に一部のシリカや長石など随伴鉱物の粒子の周縁では、モンモリロナイトが十分に浸透していない部分があり、粒子周縁の数百nmから1 µm程度の範囲にモンモリロナイトが他の部分より密に分布している様子が観察された。原鉱石と再構成試料を比較すると、原鉱石の方がモンモリロナイトがより密に分布している随伴鉱物の割合が多かった。続いて、ウルトラミクロトームで超薄切片を作製し、TEMでモンモリロナイトの底面間隔を計測した。随伴鉱物に接した部分と接していない部分に分類して比較したところ、いずれの試料でも随伴鉱物との界面近傍のモンモリロナイトの方が底面間隔が小さい傾向が見られた。さらに再構成試料と原鉱石を比較すると、随伴鉱物と接した部分と接していない部分のいずれでも、原鉱石の方が底面間隔が小さい傾向が見られた。これらの観察から、モンモリロナイトの膨潤は試料中で不均質であり、特にセメンテーションされた原鉱石では随伴鉱物との界面近傍で膨潤しにくい傾向があることが明らかになった。ベントナイトが形成される過程でこれらの随伴鉱物とモンモリロナイトが固着したことで、セメンテーションが引き起こされていると考えられる。その結果、モンモリロナイトへの水のアクセスが妨げられ、十分に膨潤しない箇所が存在することで、ベントナイトの膨潤圧の低下を引き起こしている可能性が考えられる。本発表では、観察箇所をさらに拡充するとともに、多数観察した結果を統計的に比較して議論を行う。
参考文献
[1] 日本原子力研究開発機構・原子力環境整備促進・資金管理センター(2019). 平成30年度 地層処分技術調査等事業 ニアフィールドシステム評価確証技術開発報告書, 平成31年3月.
[2] Ito, D., and H. Komine. 2023. Smart Geotechnics for Smart Societies, 1834–38. London: CRC Press.
[3] Bozolla, J.J. (2007), Electron microscopy: methods and protocols (pp.1–20). New York: Springer.