日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2025年5月27日(火) 13:45 〜 15:15 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、座長:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)

13:45 〜 14:00

[HCG21-01] 堆積学と地質学に基づいた社会的な活動と未来への展望

*川村 喜一郎1 (1.山口大学)

キーワード:海底地質リスク評価研究会(https://www.kiso.co.jp/sssgr/)、国際地質科学連合、海底ジオハザード・タスクグループ(https://iugs-tgsg.com/)、Youtube(https://www.youtube.com/@KiichiroKawamura)、人材育成(https://researchmap.jp/read0192788?lang=en)

地質学、堆積学は、未来に生き残ることができるのだろうか?ちょっと、ここで考えてみたい。将来への展望である。
まず、防災に対して、役立つだろうか?そうなると、地質学は、どうしても、地盤工学や土木工学に引き寄せられ、ほぼ同化したような形になるが、基本的にはそういった工学の下に位置づけられる。工学の設計に必要なパラメータを供出する学問として地質学が存在するとなる。これは理学としての地質学の生き残りの道の一つなのかもしれないが、それは地質学の存在価値を高めることにはならない。
その意味において、地質学と地盤工学との違いはなんだろう?社会の役に立つ、役に立たない、という切り分けは、両者の切り分けではない。私は、歴史を取り扱うか、扱わないか、が地質学と地盤工学との違いである。地質学は、地層記録を読み解き、そこから地球の歴史を調べる。それに基づいて、さまざまなものの規則性やプロセス、メカニズムを明らかにする。それに対して、地盤工学は、その場の観測に基づいて、物理化学則を導き出し、それらを通じてその場を理解しようとする。地盤工学は歴史を遡ったとしても数百年であり、それ以上は地層記録に頼ることになるので、地質学の範疇となる。地質学が防災において貢献できるとしたのならば、その頻度や最大値だろう。ただし、地質学は歴史を調べる学問であるがゆえに、厳密な意味において、検証ができない。その意味において、推論や推測が伴うことから、不確実性が生じる。この不確実性は、社会に対しての学問の信頼度を損ねることにもつながり、それゆえに、防災において地質学は意見表明においてリスクが伴う。しかし、そういった不確実性によるリスクがあったとしても、歴史の中の規則性やプロセス、メカニズムは、私たちに有益である。不確実性を伴っていたとしても、地質学によって明らかになった事象は、社会還元されるべきである。
次に、資源・エネルギーに対して、役立つだろうか?石油、天然ガスは、今後、再生可能エネルギーへ転換されていくことになるので、未来への展望は期待されない。期待されない、というよりは、能動的に世界へ発信できるものではない、という意味が正しい。では、再生可能エネルギーにおいて、活路はあるのだろうか?私が考えているのは、洋上風力発電の開発において、堆積学、地質学は重要な位置を占める点である。それは、広義の防災という枠組みになるのだが、地盤工学や土木工学とは異なる視点になる。それは、海底という未知の領域であるからである。海底活断層、海底泥火山、海底浅層ガス噴出、サンドウェイブの移動、潮流などによる洗堀、津波、海底地すべり。そういった海底での堆積現象、地質現象は、直接観察することが難しく、それゆえに長期的な観測が必須である。開発する場所が安全なのか、危険なのか、その判断には、時系列的な変化をとらえ、それを解釈する必要がある。また、地層記録という歴史を紐解いて、その頻度や最大値を推測する必要がある。そうやって、海底におけるリスク評価が重要になる。その意味において、堆積学、地質学がイニシアティブをとって、この問題を解決する必要があるのである。この中で、海底地すべり津波の評価は、原子力発電所の防災においても重要なテーマとなっている。
上記において、堆積学、地質学を習得した高度な技術者の育成が求められる。それは、日本が海に囲まれており、沿岸開発は私たちの未来の発展に関わるからである。山口大学では、実践海洋学として、海上保安庁と連携して、測量船を用いた海洋地質に関する実習を毎年開催している。また、国際性を身に着けさせるために、国際課題へのチャレンジ、として、国際地質科学連合・海底ジオハザード・タスクグループのメンバーに非常勤講師となってもらい、オンラインで講義を行っている。2023年は国立台湾大学のJih-Hsin Chang博士、2024年、2025年はオーストラリア、カーティン大学のChris Elders名誉教授である。また、これに先立って、2021年、2022年とノルウェー、トロムソ大学のJan Sverre Laberg教授に講師となってもらっている。また、これらの経費は、国内の洋上風力発電企業体である「海底地質リスク評価研究会」から支出されている。また、この研究会からは、クリノメータや粒度表などの新しい地学教材も生み出されている。