日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2025年5月27日(火) 13:45 〜 15:15 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、座長:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)

14:00 〜 14:15

[HCG21-02] 完新世の沖縄トラフ西側斜面周辺における堆積作用の時空間変化

*齋藤 京太1 (1.海上保安庁)

キーワード:東シナ海、完新世 、堆積プロセス

東シナ海はユーラシア大陸東側に位置する縁辺海の一つであり,北東側に広がる陸棚と南西側の沖縄トラフの間で水深が大きく変化するという地形的な特徴と,黒潮の存在や海流・水塊分布の季節変動といった特徴を有しているため,現世においても粒子の運搬・堆積過程は多岐にわたる.しかし現世において物質輸送の観測と堆積作用を合わせて議論されているのは,沖永良部島から長江河口に至るPN線などごく一部の海域に限られている.また,沖縄トラフ周辺においては多くの堆積物コアで様々な指標を用いて構成粒子や供給源の変動が復元されてきたが,東シナ海全体の運搬過程に着目したものが多く,陸棚外縁部の堆積物が最終氷期から海進期にかけての残留物とされていることもあり,推定された運搬過程と,離れた供給源とコアサイトの間の堆積物との整合性まではあまり考慮されていない.
本研究では,沖縄トラフ中北部の西側斜面から採取した堆積物コアを用い,堆積相の記載や粒度分析,年代測定等を行うとともに,周辺でサブボトムプロファイラー(SBP)による観測を行った.その結果,PN線に近い南側では完新世の間シルトサイズの粒子が継続して堆積しており,現世と同じような黒潮の影響を受けた運搬・堆積作用(e.g. Oguri et al., 2003)が示唆される一方,その北側では8-7 ka頃を境に粒子の粗粒化・粒子組成の変化・堆積速度の低下など異なる変化が見られた.さらに北側,北緯30°付近に位置する沖男女海陵群(青木ほか, 2023)と呼ばれる海域の近傍では,11 ka前後にシルトから砂へと粗粒化し,約9 ka以降は年代の逆転など再堆積の寄与を受けていることが示唆された.これらの堆積相の変化は大局的には海水準の上昇に伴う沿岸水の影響の弱化や完新世中期以降の黒潮の強化に起因すると考えられる.一方,今回分析した地点はいずれも明瞭な海底谷の無い斜面に位置しており,地形的な差異は小さいことから,これらの地点における堆積相はより局所的な地形やプロセスの影響を強く受けて形成されていることが示唆される.