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[HCG21-P03] チベット高原南部タコーラ地域における中新統~更新統の堆積環境と古土壌に基づく古気候の変遷

キーワード:古土壌、古気候、中新世~更新世、南アジア・モンスーン
インド亜大陸とユーラシアプレートの衝突によって隆起したヒマラヤ山脈はアジアの気候に大きな影響を及ぼし,アジアのモンスーン気候の成立と発達に関係している.しかし,特にネパール,チベット高原南端での気候変動については議論が多くなされていない.ヒマラヤ山脈とチベット高原の境界に位置するタコーラ地域には新第三系から第四系の陸成層が分布し[1],これに発達する古土壌は当時の陸上域における気候条件を記録していることが期待される.本研究では,チベット高原南端での気候変動について検討を行うため,中央ネパール,タコーラ地域に分布するThakkhola層について堆積相解析を行い,チベット高原南端における,新第三紀から第四紀にかけての堆積環境とその変遷について考察することを目的とする.
研究地域について,タコーラ地域はインド・ユーラシア大陸衝突後の引張応力場により形成された半地溝であり,中新世以降の陸成層が堆積する.古地磁気年代より,Tetang層では11~9.6 Ma[2],その上位のThakkhola層で8~2 Ma[3]の堆積年代が報告され,花粉分析によりTetang層では湿潤な環境が,Thakkhola層では乾燥した気候が示唆されている[1].
Thakkhola層は層厚最大600m以上に及ぶ.ネパールの中心都市であるポカラから北北西80kmに位置するChhusangではThakkhola層の下部が観察される. 下から、石灰岩や粘板岩の礫に富む赤い基質支持の角礫岩,円磨度の高い花崗岩の礫に富む斜交層理礫岩と,砂岩やシルト岩のユニット,生痕化石を伴う赤色の砂岩やシルト岩,根化石を伴う黒色のシルト岩,粗粒な砂岩と角礫岩のユニットからなる.
Chhusangから北に約10km離れたGhilingではThakkhola層の中央部から上部が観察される.円磨された花崗岩の礫に富む斜交層理礫岩が卓越し,レンズ状の砂岩を伴う網状河川堆積物,斜交層理礫岩と砂岩,シルト岩を伴う低屈曲蛇行河川堆積物,シルト岩が卓越し,薄い砂岩層や礫岩層を伴う氾濫原堆積物に大別される.本層の上部における氾濫原堆積物中では,堆積構造を保持したままカルサイトが濃集した層や炭質物に富む層が認められた.一方,最上部では炭質物に乏しく,鏡下観察より根跡に析出した方解石が認められた.
Chhsangで観察された赤い基質支持の角礫岩は輸送距離が短く,急速に堆積した扇状地性堆積物が示唆される.一方,円磨度の高い花崗岩の礫に富む礫岩は輸送距離が長く,河川性堆積物が示唆される.この円磨度の高い礫岩はGhilingで観察された礫岩と類似し,よってGhiling周辺の堆積物はタコーラ地域のより一般的な堆積環境を反映していると考えられる.Ghilingで観察されたThakkhola層の上部の氾濫原での堆積が示唆される層準では,炭質物に富む層やカルサイトの集積が見られ,地下水位の変動と季節的な乾季のある気候条件を示唆する可能性がある[4].しかしThakkhola層最上部の氾濫原での堆積が示唆される層準では,炭質物に乏しく根跡にカルサイトが析出することから,より乾燥した気候条件が示唆される.現在,この地域の南側にはヒマラヤ山脈が位置し,南西モンスーン風が遮られて乾燥した気候となり,ステップ・ツンドラ気候に区分される[5].よって,中期中新世以降のヒマラヤ山脈の配置や標高の変化が,この地域の乾燥化を引き起こしたことが考えられる.
文献
[1]Adhikari, B.R., 2009. Ph.D. Thesis, Vienna Univ., Austria, 158p. [2] Yoshida, M. et al., 1984. Jour. Nepal Geol. Soc. 4, 101–120. [3] Garzione, C.N., et al., 2000. Geology 28, 339–342. [4]Demkoa, T.M., et al., 2004. Sedimentary Geology 167, 115 – 135. [5] Ramchandra, K. et al., 2016. Theoretical and Applied Climatology 125, 799-808.
研究地域について,タコーラ地域はインド・ユーラシア大陸衝突後の引張応力場により形成された半地溝であり,中新世以降の陸成層が堆積する.古地磁気年代より,Tetang層では11~9.6 Ma[2],その上位のThakkhola層で8~2 Ma[3]の堆積年代が報告され,花粉分析によりTetang層では湿潤な環境が,Thakkhola層では乾燥した気候が示唆されている[1].
Thakkhola層は層厚最大600m以上に及ぶ.ネパールの中心都市であるポカラから北北西80kmに位置するChhusangではThakkhola層の下部が観察される. 下から、石灰岩や粘板岩の礫に富む赤い基質支持の角礫岩,円磨度の高い花崗岩の礫に富む斜交層理礫岩と,砂岩やシルト岩のユニット,生痕化石を伴う赤色の砂岩やシルト岩,根化石を伴う黒色のシルト岩,粗粒な砂岩と角礫岩のユニットからなる.
Chhusangから北に約10km離れたGhilingではThakkhola層の中央部から上部が観察される.円磨された花崗岩の礫に富む斜交層理礫岩が卓越し,レンズ状の砂岩を伴う網状河川堆積物,斜交層理礫岩と砂岩,シルト岩を伴う低屈曲蛇行河川堆積物,シルト岩が卓越し,薄い砂岩層や礫岩層を伴う氾濫原堆積物に大別される.本層の上部における氾濫原堆積物中では,堆積構造を保持したままカルサイトが濃集した層や炭質物に富む層が認められた.一方,最上部では炭質物に乏しく,鏡下観察より根跡に析出した方解石が認められた.
Chhsangで観察された赤い基質支持の角礫岩は輸送距離が短く,急速に堆積した扇状地性堆積物が示唆される.一方,円磨度の高い花崗岩の礫に富む礫岩は輸送距離が長く,河川性堆積物が示唆される.この円磨度の高い礫岩はGhilingで観察された礫岩と類似し,よってGhiling周辺の堆積物はタコーラ地域のより一般的な堆積環境を反映していると考えられる.Ghilingで観察されたThakkhola層の上部の氾濫原での堆積が示唆される層準では,炭質物に富む層やカルサイトの集積が見られ,地下水位の変動と季節的な乾季のある気候条件を示唆する可能性がある[4].しかしThakkhola層最上部の氾濫原での堆積が示唆される層準では,炭質物に乏しく根跡にカルサイトが析出することから,より乾燥した気候条件が示唆される.現在,この地域の南側にはヒマラヤ山脈が位置し,南西モンスーン風が遮られて乾燥した気候となり,ステップ・ツンドラ気候に区分される[5].よって,中期中新世以降のヒマラヤ山脈の配置や標高の変化が,この地域の乾燥化を引き起こしたことが考えられる.
文献
[1]Adhikari, B.R., 2009. Ph.D. Thesis, Vienna Univ., Austria, 158p. [2] Yoshida, M. et al., 1984. Jour. Nepal Geol. Soc. 4, 101–120. [3] Garzione, C.N., et al., 2000. Geology 28, 339–342. [4]Demkoa, T.M., et al., 2004. Sedimentary Geology 167, 115 – 135. [5] Ramchandra, K. et al., 2016. Theoretical and Applied Climatology 125, 799-808.