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[HCG21-P04] 亜熱帯環境における砂岩の分解過程:物性と粘土鉱物学からのアプローチ
キーワード:岩石風化、亜熱帯島嶼、四万十帯、砂岩、粘土鉱物、沖縄島
はじめに
岩石の風化作用は大きく物理的風化と化学的風化に区分される.このうち化学的風化の進行は気候条件(気温,降水量)の影響をうける(例えばStrakhov,1967).亜熱帯気候に属する沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,千枚岩,砂岩,緑色岩等の基盤岩類など多岐にわたる.砂岩の風化進行過程に関する研究は温帯地域に属する九州地方などで報告されているが(西山・松倉,2002.など),亜熱帯島嶼での研究事例は少ない.今回,沖縄島北部において四万十帯相当層である名護層砂岩を対象に,新鮮部から風化土壌に至る過程を物性と鉱物組成から整理した.
地質概要
沖縄島の北部には,四万十帯に属する上部白亜系の名護層と古第三系の嘉陽層が分布している.名護層は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなり,その分布や名称は研究者によって異なる(宮城ほか,2013).名護層は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは赤色~黄色の厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された強風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え研究対象とした.この地区は標高100~170mの丘陵地帯であり,隣接する南部や北部に比べて標高が高い山塊が存在しない.このため急峻な河川が未発達であり隣接区域に比べて侵食速度が小さく,風化殻の保存状態が比較的良い地区とみられる.
研究手法
研究対象の露頭は比高約10mの切土斜面である.現地では風化の程度を定量的に評価するために,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて土壌硬度を計測した.さらに,露頭からは室内試験に供する試料を採取し,鏡下観察とX線回析分析による鉱物の同定のほか,密度試験を実施した.なお,新鮮な岩石試料を沖縄島北部の国頭村から,中風化の岩石試料を東村から採取し,新鮮部から残留土壌に至る風化進行過程の整理に加えた.
調査結果
大宜味村露頭では,赤色~黄色の強風化した中粒砂岩が凝灰岩の薄層を挟在している.風化砂岩の色調は,頂部より下部約3.5mまではオレンジを基調とするが,3.5m以下は次第に赤褐色へ変化する.土壌硬度は上部では約25mmであるが,下部に向かうに従い増加し,最下部では約30mmに達する.
鏡下観察では,新鮮部(国頭村)や中風化部(東村)では石英,岩片,斜長石,アルカリ長石,白雲母,岩片(火山岩起源,チャート起源)の粒子が観察された.大宜味村露頭では,最下部ではアルカリ長石は認められるものの斜長石は消失した.露頭の中部以上ではアルカリ長も消失した.また,火山岩起源の岩片も雲母粘土鉱物へと変化した.石英の割合は新鮮部から強風化部をとおして30~40%であり大きな変化は認められなかった.
X線回析分析では,大宜味村露頭の最下部では石英,白雲母,カオリナイトが認められた.白雲母は上部に向かって減少し頂部付近では認められなくなり,代わってイライト/スメクタイト混合層が認められた.以上の結果から,頂部の最も風化が進行した部分では,石英,岩片(チャート起源),カオリナイト,イライト/スメクタイト混合層より構成されることが明らかになった.
まとめ
沖縄島北部に分布する名護層砂岩は,初生的に含まれる長石類及び岩片(火山岩起源)が風化作用の進行に伴い粘土鉱物に変化することで,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと変化する.今後も岩石薄片の鏡下観察,X線回析分析,蛍光X線分析,物理試験等を追加し,砂岩風化の進行過程の整理を進める.
引用文献
宮城ほか,2013,沖縄島および周辺諸島に分布する先新第三系基盤岩類の全岩化学組成と砕屑性ザクロ石化学組成.地質学雑誌,119,665-678.
西山・松倉,2002,風化による砂岩の岩石組織の変化:南九州における四万十帯砂岩の例.地質学雑誌,108,410-413.
Strakhov, N.M.,1967,Principles of Lithogenesis,vol.1,Oliver &Boyd, London.
岩石の風化作用は大きく物理的風化と化学的風化に区分される.このうち化学的風化の進行は気候条件(気温,降水量)の影響をうける(例えばStrakhov,1967).亜熱帯気候に属する沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,千枚岩,砂岩,緑色岩等の基盤岩類など多岐にわたる.砂岩の風化進行過程に関する研究は温帯地域に属する九州地方などで報告されているが(西山・松倉,2002.など),亜熱帯島嶼での研究事例は少ない.今回,沖縄島北部において四万十帯相当層である名護層砂岩を対象に,新鮮部から風化土壌に至る過程を物性と鉱物組成から整理した.
地質概要
沖縄島の北部には,四万十帯に属する上部白亜系の名護層と古第三系の嘉陽層が分布している.名護層は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなり,その分布や名称は研究者によって異なる(宮城ほか,2013).名護層は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは赤色~黄色の厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された強風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え研究対象とした.この地区は標高100~170mの丘陵地帯であり,隣接する南部や北部に比べて標高が高い山塊が存在しない.このため急峻な河川が未発達であり隣接区域に比べて侵食速度が小さく,風化殻の保存状態が比較的良い地区とみられる.
研究手法
研究対象の露頭は比高約10mの切土斜面である.現地では風化の程度を定量的に評価するために,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて土壌硬度を計測した.さらに,露頭からは室内試験に供する試料を採取し,鏡下観察とX線回析分析による鉱物の同定のほか,密度試験を実施した.なお,新鮮な岩石試料を沖縄島北部の国頭村から,中風化の岩石試料を東村から採取し,新鮮部から残留土壌に至る風化進行過程の整理に加えた.
調査結果
大宜味村露頭では,赤色~黄色の強風化した中粒砂岩が凝灰岩の薄層を挟在している.風化砂岩の色調は,頂部より下部約3.5mまではオレンジを基調とするが,3.5m以下は次第に赤褐色へ変化する.土壌硬度は上部では約25mmであるが,下部に向かうに従い増加し,最下部では約30mmに達する.
鏡下観察では,新鮮部(国頭村)や中風化部(東村)では石英,岩片,斜長石,アルカリ長石,白雲母,岩片(火山岩起源,チャート起源)の粒子が観察された.大宜味村露頭では,最下部ではアルカリ長石は認められるものの斜長石は消失した.露頭の中部以上ではアルカリ長も消失した.また,火山岩起源の岩片も雲母粘土鉱物へと変化した.石英の割合は新鮮部から強風化部をとおして30~40%であり大きな変化は認められなかった.
X線回析分析では,大宜味村露頭の最下部では石英,白雲母,カオリナイトが認められた.白雲母は上部に向かって減少し頂部付近では認められなくなり,代わってイライト/スメクタイト混合層が認められた.以上の結果から,頂部の最も風化が進行した部分では,石英,岩片(チャート起源),カオリナイト,イライト/スメクタイト混合層より構成されることが明らかになった.
まとめ
沖縄島北部に分布する名護層砂岩は,初生的に含まれる長石類及び岩片(火山岩起源)が風化作用の進行に伴い粘土鉱物に変化することで,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと変化する.今後も岩石薄片の鏡下観察,X線回析分析,蛍光X線分析,物理試験等を追加し,砂岩風化の進行過程の整理を進める.
引用文献
宮城ほか,2013,沖縄島および周辺諸島に分布する先新第三系基盤岩類の全岩化学組成と砕屑性ザクロ石化学組成.地質学雑誌,119,665-678.
西山・松倉,2002,風化による砂岩の岩石組織の変化:南九州における四万十帯砂岩の例.地質学雑誌,108,410-413.
Strakhov, N.M.,1967,Principles of Lithogenesis,vol.1,Oliver &Boyd, London.