日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

17:15 〜 19:15

[HCG21-P07] 水中ドローンを用いた、富山湾南部における「海底地すべり」跡の直接観察

*立石 良1佐野 晋一1、岩井 裕正2ジェンキンズ ロバート3加藤 萌3佐藤 圭3、橋本 勇一4、伊藤 昌平5、桐山 美沙子1澤田 渚1、石田 優里1 (1.富山大学、2.京都大学、3.金沢大学、4.ユウ・アクアライフ、5.株式会社Full Depth)

キーワード:海底地すべり、富山湾、2024年能登半島地震

2024年1月1日に発生したM7.6の地震(以下,令和6年能登半島地震)に伴う津波の第一波は,異常な早さで富山湾南部に到達した.この原因として,富山湾南部における海底地すべりとの関連性が指摘されている(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2024).著者らは2024年前半に水中ドローンを用いた海底探査に同行する機会を得,富山市岩瀬沖および同水橋沖における海底地すべり痕跡の観察結果を報告した(海野ほか,2024など).本報告では,これらに引き続いて,著者の一部から構成される富山湾海底地すべり調査・研究グループが実施した,富山市岩瀬沖および高岡市伏木沖の海底谷沿いの2地域における水中ドローン探査の結果を報告する.調査には,株式会社FullDepth製水中ドローンDiveUnit300とTripod Finder-II等を用いた.

富山市岩瀬沖の調査結果
海上保安庁(2024a)が大規模な崩壊地形の存在を報告した,神通川河口沖合約4kmの海底谷において,谷底から西向きの海底斜面まで,水深約350〜270mにわたり,連続的に水中ドローン探査を行った.海底谷底では,比較的平坦な地形を細粒で軟らかい堆積物が覆い,シラエビやゲンゲなどが生息する様子が観察された.海底斜面の下端付近では,ブロック状に砕けた岩石(後述の,海底斜面の壁面に露出した陸源性砕屑岩層に由来)が散乱し,その上方には,陸源性砕屑岩層が露出した,落差数十mに及ぶ,ほぼ垂直な崖が連続する様子が確認された.ブロック状の岩石や砕屑岩層は半固結状態と判断され,その断面は新鮮で,谷底で観察されたような細粒物質の堆積はごく少なく,付着生物はほとんど認められなかった.崖の上(水深約275m以浅)では,緩斜面を細粒物質が覆い,海底の堆積物には巣穴と思われる穴が多数認められ,ゲンゲやクモヒトデなどが生息する様子が認められた.

高岡市伏木沖の調査結果
新湊漁業協同組合による地震後の海底地形測量結果を踏まえ,庄川・小矢部川河口沖合の海底谷の複数地点で水中ドローン探査を行った.地点Iでは,海底谷から西向きの海底斜面まで,水深約270〜240mにわたり,連続的に探査を行った.その結果,谷底付近に散在する岩石ブロックと,陸源性砕屑岩層の岩盤からなる落差数十mの崖が認められた.崖の壁面は岩瀬沖と同様に新鮮な断面を持ち,付着生物は認められなかった.地点IIでは,水深約200〜170mの西向きの海底斜面で大規模な崖が見つかったが,崖の壁面は風化しており,広範囲にゴカイの棲管や二枚貝,海綿などの付着生物とオレンジ色の表面沈着物が認められた.また,地点III・地点IVでは,細粒で軟らかい堆積物が,散在する岩石ブロックの間を埋めるように分布し,その上に,ごく最近のものと思われる海洋ゴミが載っていた.

結果の解釈とまとめ
岩瀬沖および伏木沖の地点Iでは,高低差数十mの崖全体にわたって,半固結状態の陸源性砕屑岩層からなる岩盤が崩落あるいは深層崩壊を起こしたものと解釈される.伏木沖の地点IIでは崩壊後,ある程度の時間(少なくとも数年以上)が経過しているものと推定されるが,それ以外の地点で見られる特徴は,崩壊がごく最近,すなわち令和6年能登半島地震により生じたことを強く示唆する.海上保安庁(2024a, b)は2010年と2024年の海底地形データの差分から両地域における崩壊地形の存在を報告したが,今回の調査により,崩壊が実際に生じていること,崩壊時期がごく最近であること,さらに海上保安庁の報告よりも多くの地点で崩壊が発生していたことが明確になった.これらの海底地すべり痕跡は幾つかのパターンに分類される可能性があり,各々の崩壊様式について引き続き検討していく予定である.

謝辞
本調査を実施するにあたり,公益社団法人東京地学協会の令和6年能登半島地震関連緊急研究・調査助成金,一般社団法人北陸地域づくり協会の第30回「北陸地域の活性化」に関する研究助成(令和6年度能登半島地震を契機とした追加助成),富山大学学長裁量経費「富山大学教育研究活動活性化支援」(地域活性化推進経費)(ここまで研究代表者:佐野晋一),JSPS科研費 22H01588(研究代表者:岩井裕正)の助成を受けた.また,令和6年能登半島地震金沢大学合同調査チームKUDの支援を受けた.本調査は,新湊漁業協同組合様,富山県漁業組合連合会様の協力により実現した.

引用文献
地震調査研究推進本部地震調査委員会,2024,令和6年能登半島地震の評価(令和6年2月9日公表).
海上保安庁,2024a,富山湾の海底で斜面崩壊の痕跡を確認(令和6年1月24日公表).
海上保安庁,2024b,富山湾の海底で斜面崩壊の痕跡を確認(第3報)(令和6年12月2日公表).
海野ほか,2024,日本地球惑星科学連合2024年大会,U15-P89.