日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

17:15 〜 19:15

[HCG21-P10] 一ノ目潟の年縞堆積物に挟まれるイベント堆積物の識別

*永田 篤規1梶田 展人2、田副 博文3、阿保 純平2、楠瀬 妃奈乃2安藤 卓人4鈴木 貴裕4箕輪 昌紘5大野 いろは6長谷川 精6佐久間 杏樹7山口 飛鳥8鈴木 克明9梅田 浩司2 (1.弘前大学大学院 地域共創科学研究科、2.弘前大学大学院 理工学研究科、3.弘前大学 被ばく医療総合研究所、4.秋田大学 国際資源学研究科 、5.北海道大学 低温科学研究所 、6.高知大学理工学部、7.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻 、8.東京大学大気海洋研究所、9.産業技術総合研究所 地質調査総合センター)


キーワード:年縞、タービダイト、一ノ目潟

年縞とは,生物学的・地理的学な堆積プロセスの季節変動によって,静穏な環境下で一年毎に形成される縞状の堆積物である.そのため,高時間解像度の古環境記録を提供することができる.また,年縞堆積物中には,イベント堆積物が挟在している場合があり,これにより年単位の時間軸に基づいて,自然災害の発生年代や発生間隔を推定できる可能性がある.近年,積極的に行われている海洋底コアを用いた古地震復元の研究では,イベント層の認定および精密な年代決定が困難であることが多く,災害頻度の推定は難易度が高い研究課題である.
秋田県の男鹿半島に位置する一ノ目潟は, マグマ水蒸気爆発により形成された水深40m程度の湖であり,湖底には少なくとも過去3万年分の年縞が堆積していることが報告されている(Okuno et al., 2011).したがって,一ノ目潟の年縞堆積物は正確な年代軸に基づく古災害記録を提供しうる.各種の堆積学的・地球化学的解析を通して一ノ目潟の堆積物コアに含まれるイベント層の認定と年代決定を行うことは,本州日本海沿岸域で過去に発生した様々な自然災害を理解するうえで重要である.
本研究では,一ノ目潟の中央湖盆から40cm程度の複数のコアを採取した.採取した試料に対し,層相観察,目視による縞計測,顕微鏡観察, 軟X線撮影,µXRFを用いた元素マッピング,µXRDを用いた鉱物組成マッピング,210Pb・137Cs放射能年代測定,粒度分析,XRFコアスキャナー分析による高解像度元素組成分析を行った.それらの結果を総合的に解釈し,年縞層に挟在する4つのイベント層(E1,E2,E3,E4)を認定した.年縞は基本的には明色層と暗色層の繰り返しで形成される.明色層は砕屑物粒子が多く,MnとFeの濃度が高かった一方で,暗色層は有機物と珪藻殻が多く,MnとFeの濃度は低かった.目視および軟X線画像による観察とMnとFeの変動パターンに基づいた縞数えによる堆積年代推定は,210Pb・137Cs放射能年代測定の結果とほぼ一致した.そのため,イベント層の年代を精度良く推定することができ,秋田県の災害史年表との比較からE1は日本海中部地震(1983年),E3は男鹿半島沖地震(1964年),E2・E4はそれぞれ1979年と1955年に発生した大雨災害に対応すると判断した. また,E1・E3,E2・E4では粒度分布の特徴が異なり,これは地震および大雨に伴う堆積プロセスの違いを反映していると考えられた.
これらの結果は,一ノ目潟の堆積物から過去3万年に遡って,地震および大雨の自然災害の履歴を独立に読み解くことができる可能性を示唆している.