11:00 〜 11:15
[HCG22-08] 領域気象モデルWRFを用いた広島・長崎における「黒い雨」再現の試み
キーワード:原爆による「黒い雨」、数値予報モデル、WRF、歴史的気象再解析データ
広島および長崎への原子爆弾投下におけるいわゆる黒い雨は,原子爆弾の大規模爆発による人工熱源が局地気象に作用し,その熱源に駆動される上昇流により積乱雲と降水が発生,有害な物質の拡散や沈着をもたらした事例である.黒い雨の降雨域を推定した研究は,聞き取り調査によるもの(たとえば増田, 1989),土壌中における放射性同位体セシウム137の測定によるもの(山本ら, 2010)がある.一方,丸山・吉川 (2005)では数値予報モデルを用いた再現が報告されているが,鉛直移流項がない静力学方程式系による気象シミュレーションのため,積乱雲の発達および降水過程の計算が十分でなく,適切な降雨域の推定ができなかった.本発表では,非静力学方程式系に基づく領域気象モデルWRFを使用し,以下の2つの手順で降雨域の推定を試みたので,これを報告する.
まず,原子爆弾投下時の広島および長崎における気象場を再現するためのダウンスケール実験を行った.西日本を中心とする東西・南北ともに水平220格子点,1,760km四方,鉛直50層の親領域の内側に広島および長崎を中心とする東西・南北ともに水平120格子点,120km四方,鉛直50層の2つの子領域を設定し,ネスト計算を実施した.計算対象期間は1945年8月3日21時から9日21時までとし,初期値・境界値には公開されている歴史的気象再解析データERA5(ECMWF Reanalysis v5), 20CRv3(NOAA-CIRES-DOE 20th Century Reanalysis V3), OCADA(JMA-MRI)を使用した.原子爆弾投下時刻に最も近い地上天気図と,計算された海面更正気圧の水平分布を比較したところ,当時の気圧配置は概ね再現されていた.投下時刻前後における広島および長崎の風向・風速,気温,水蒸気混合比の地上観測データと,計算されたそれらを比較したところ,概ね妥当な値が得られていることも確認できた.
次に,再解析データから直接得られる風向・風速,気温,水蒸気混合比の鉛直プロファイル3種類とダウンスケール実験で計算された気象場から得られるそれら鉛直プロファイル3種類の合計6種類を入力とし,核爆発を模した熱源を大気中に配置,その時間発展を解く理想実験を同じくWRFを用いて実施した.水平および鉛直格子点間隔は400m,250m,格子点数は200×200×80である.熱源は領域中心の格子点に,任意の水平幅hおよび鉛直幅vに領域に周辺大気との気温差dTとして与えるが,その熱量が広島および長崎の核爆発による熱量と等しくなるよう,h,v,dTに関するパラメタスウィープを行った.その結果,いずれの鉛直プロファイルを入力とした実験においても,計算開始後2時間までに,広島では北に最大10数kmの,長崎では東もしくは南に最大10数kmの範囲にわたって降水域が計算された.降水量は与えた鉛直プロファイルの水蒸気量に依存して異なるが,広島で数mm,長崎で10数mm,いずれも爆心地で計算された.これら熱源を与えたことによる風向・風速への影響,および降水過程における雲微物理量の時間発展について解析する予定である.
謝辞:本研究はJSPS科研費JP24H00367の助成を受けたものです.
まず,原子爆弾投下時の広島および長崎における気象場を再現するためのダウンスケール実験を行った.西日本を中心とする東西・南北ともに水平220格子点,1,760km四方,鉛直50層の親領域の内側に広島および長崎を中心とする東西・南北ともに水平120格子点,120km四方,鉛直50層の2つの子領域を設定し,ネスト計算を実施した.計算対象期間は1945年8月3日21時から9日21時までとし,初期値・境界値には公開されている歴史的気象再解析データERA5(ECMWF Reanalysis v5), 20CRv3(NOAA-CIRES-DOE 20th Century Reanalysis V3), OCADA(JMA-MRI)を使用した.原子爆弾投下時刻に最も近い地上天気図と,計算された海面更正気圧の水平分布を比較したところ,当時の気圧配置は概ね再現されていた.投下時刻前後における広島および長崎の風向・風速,気温,水蒸気混合比の地上観測データと,計算されたそれらを比較したところ,概ね妥当な値が得られていることも確認できた.
次に,再解析データから直接得られる風向・風速,気温,水蒸気混合比の鉛直プロファイル3種類とダウンスケール実験で計算された気象場から得られるそれら鉛直プロファイル3種類の合計6種類を入力とし,核爆発を模した熱源を大気中に配置,その時間発展を解く理想実験を同じくWRFを用いて実施した.水平および鉛直格子点間隔は400m,250m,格子点数は200×200×80である.熱源は領域中心の格子点に,任意の水平幅hおよび鉛直幅vに領域に周辺大気との気温差dTとして与えるが,その熱量が広島および長崎の核爆発による熱量と等しくなるよう,h,v,dTに関するパラメタスウィープを行った.その結果,いずれの鉛直プロファイルを入力とした実験においても,計算開始後2時間までに,広島では北に最大10数kmの,長崎では東もしくは南に最大10数kmの範囲にわたって降水域が計算された.降水量は与えた鉛直プロファイルの水蒸気量に依存して異なるが,広島で数mm,長崎で10数mm,いずれも爆心地で計算された.これら熱源を与えたことによる風向・風速への影響,および降水過程における雲微物理量の時間発展について解析する予定である.
謝辞:本研究はJSPS科研費JP24H00367の助成を受けたものです.