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[HCG22-11] 広島市で採取された熔融粒子のFIB-TOF-SIMS分析による分類

キーワード:原爆による「黒い雨」、熔融粒子、TOF-SIMS
[はじめに]現在「黒い雨」が降ったとされる区域の再設定をする一環として土壌の調査を行っているが、経年による原爆由来の放射性物質の壊変による消失、土壌の撹拌・土地利用改変などの理由から、当時の環境を保持した地点の試料と「黒い雨」の証拠となる明瞭な指標物質の選定が望まれている[1]。そこで注目したのが、Wannierらによって広島市で採取された熔融粒子と呼ばれる粒子群である[1]。しかしながら、熔融粒子には隕石や火山などの様々な起源をもつ粒子が存在するため、識別のための情報を得る必要がある。本研究では当研究室で開発した全元素同時イメージングが可能な集束イオンビーム飛行時間型二次イオン質量分析(FIB-TOF-SIMS)装置[2]を用いて以下に示す分析調査を行った。
[方法]
(1)中性子捕獲反応による同位体比異常
原爆によって中性子束が照射された際に起こる中性子捕獲反応における元素の同位体比異常に注目した。ターゲット元素は土壌に存在しかつ中性子捕獲断面積が大きな10Bに着目し、10B(n,α)7Li (BNC反応)に着目した。この反応が起こっていれば、11B/10B同位体比と7Li/6Li同位体比にはそれぞれ天然同位体比からのずれ(同位体比異常)が見られるはずである。分析の結果、熔融粒子のうち、黄色粒子の多くが同位体比異常を示しており、かつ、Bの同位体比異常とLiの同位体比異常に正の相関もみられた。このことから、黄色熔融粒子の中に原爆由来である粒子が存在する可能性が示唆された。
(2)広島熔融粒子の各色の分類・特徴
上記の同位体比異常だけでは、グローバルフォールアウトとの区別は困難である。このため熔融粒子が黒、赤、銀、黄の4色に分類される[3]ことに着目し、各色の熔融粒子の組成比、断面テクスチャの比較を行い、固有の特徴を持つのかどうかを分析した。その結果、今回の分析では組成比から粒子固有の特徴を得られなかったが、色ごとに固有のテクスチャを持つことが分かった。今後は同位体比異常が見られた黄色の熔融粒子について、関東など広島市以外で捕集された同様の見かけを有する熔融粒子との比較を行う予定である。
[謝辞]当研究は、厚生労働省「令和6年度原子爆弾の投下に伴う気象及び土壌に関する調査研究一式」の一環として実施した。
[1] M. M. A. Wannier et al., Anthropocene, 25, 100196 (2019).
[2] T. Sakamoto et al., Appl. Surf. Sci., 255, 1617 (2008).
[3] S. Endo et al. Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences, 23, 5 (2023).
[方法]
(1)中性子捕獲反応による同位体比異常
原爆によって中性子束が照射された際に起こる中性子捕獲反応における元素の同位体比異常に注目した。ターゲット元素は土壌に存在しかつ中性子捕獲断面積が大きな10Bに着目し、10B(n,α)7Li (BNC反応)に着目した。この反応が起こっていれば、11B/10B同位体比と7Li/6Li同位体比にはそれぞれ天然同位体比からのずれ(同位体比異常)が見られるはずである。分析の結果、熔融粒子のうち、黄色粒子の多くが同位体比異常を示しており、かつ、Bの同位体比異常とLiの同位体比異常に正の相関もみられた。このことから、黄色熔融粒子の中に原爆由来である粒子が存在する可能性が示唆された。
(2)広島熔融粒子の各色の分類・特徴
上記の同位体比異常だけでは、グローバルフォールアウトとの区別は困難である。このため熔融粒子が黒、赤、銀、黄の4色に分類される[3]ことに着目し、各色の熔融粒子の組成比、断面テクスチャの比較を行い、固有の特徴を持つのかどうかを分析した。その結果、今回の分析では組成比から粒子固有の特徴を得られなかったが、色ごとに固有のテクスチャを持つことが分かった。今後は同位体比異常が見られた黄色の熔融粒子について、関東など広島市以外で捕集された同様の見かけを有する熔融粒子との比較を行う予定である。
[謝辞]当研究は、厚生労働省「令和6年度原子爆弾の投下に伴う気象及び土壌に関する調査研究一式」の一環として実施した。
[1] M. M. A. Wannier et al., Anthropocene, 25, 100196 (2019).
[2] T. Sakamoto et al., Appl. Surf. Sci., 255, 1617 (2008).
[3] S. Endo et al. Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences, 23, 5 (2023).