12:00 〜 12:15
[HCG22-12] 漆喰壁は広島の原爆で発生した「黒い雨」で変質した
キーワード:黒い雨、酸性雨、漆喰壁、硫酸カルシウム二水和物
【はじめに】1945年の広島・長崎への原爆投下後に発生した「黒い雨」の雨域推定に関する調査や研究報告と共に、「黒い雨」自体について研究がなされてきたものの、放射性物質という視点が主であり、雨の主成分に関しては煤に関する研究(Fields DE, 1989 [1])以外ほとんど見受けられない。昨年は広島平和記念資料館が保管する、「黒い雨」の痕跡が残る金屏風(洋金箔)の分析から硝酸(N)や硫酸(S)の混在が示唆されることを報告した(仮説)。本年はこの仮説を検証するためにこの金屏風の近隣で発見されている、「黒い雨」の痕跡が残る漆喰壁(広島平和記念資料館提供)についても分析し、モデル漆喰による酸性雨の模擬実験を試みた。
【試料】漆喰壁の対照部位としてNo.1とNo.2、黒色部位のNo.3とNo.4を切り取り、試料とした(Fig. 1)。
【分析方法と結果】光学顕微鏡で黒色部位のNo.3とNo.4を観察した結果、微細な黒色粒状物の点在が認められた。SEM/EDX分析の結果、全試料とも元素の窒素(N)は不検出であるものの、表層部から元素の硫黄(S)が検出された。対照部位と黒色部位の相違はSの分布形態であり、前者は樹枝状的であることから大気中のSOx(気相)が漆喰の炭酸カルシウム(固相)と反応したもの、後者は多角形的であることから液状の硫酸(液相)が漆喰の炭酸カルシウムと反応した可能性がある。XRD分析の結果、全試料のS化合物は硫酸カルシウム二水和物と判断された。墨汁入り硫酸溶液をモデル漆喰へ滴下する模擬実験の結果、硫酸カルシウム水和物とは特定できなかったが、表層部にSが認められた。また、昨年の金屏風の報告より、黒色部位に硫酸カルシウム二水和物は不検出であった。
以上より、No.3とNo.4の表層部に認められた硫酸カルシウム二水和物は、液状の硫酸が漆喰と反応して生成した可能性があると推測した。なお、Nが不検出の原因は硝酸化合物の高分解性によると推察される。
参考文献:[1] Fields DE, Cole LL, Summers S, Yalcintas MG, Vaughan GL. Generation of aerosols by urban fire storm. Aerosol Sci Technol 10:28 –36; 1989.
謝辞:本調査研究は厚生労働省からの受託研究経費と科研費JP24H00367により進められた。広島平和記念資料館の皆様、特に学芸課の方々、御遺族、広島大学の遠藤暁教授、当大学院医学研究科総合解剖センター電子顕微鏡室の勝野達也博士、当所 の奥地拓生教授、ニコンソリューションズの髙橋恵太様、福井達雄様、澤田和明博士に感謝申し上げます。
【試料】漆喰壁の対照部位としてNo.1とNo.2、黒色部位のNo.3とNo.4を切り取り、試料とした(Fig. 1)。
【分析方法と結果】光学顕微鏡で黒色部位のNo.3とNo.4を観察した結果、微細な黒色粒状物の点在が認められた。SEM/EDX分析の結果、全試料とも元素の窒素(N)は不検出であるものの、表層部から元素の硫黄(S)が検出された。対照部位と黒色部位の相違はSの分布形態であり、前者は樹枝状的であることから大気中のSOx(気相)が漆喰の炭酸カルシウム(固相)と反応したもの、後者は多角形的であることから液状の硫酸(液相)が漆喰の炭酸カルシウムと反応した可能性がある。XRD分析の結果、全試料のS化合物は硫酸カルシウム二水和物と判断された。墨汁入り硫酸溶液をモデル漆喰へ滴下する模擬実験の結果、硫酸カルシウム水和物とは特定できなかったが、表層部にSが認められた。また、昨年の金屏風の報告より、黒色部位に硫酸カルシウム二水和物は不検出であった。
以上より、No.3とNo.4の表層部に認められた硫酸カルシウム二水和物は、液状の硫酸が漆喰と反応して生成した可能性があると推測した。なお、Nが不検出の原因は硝酸化合物の高分解性によると推察される。
参考文献:[1] Fields DE, Cole LL, Summers S, Yalcintas MG, Vaughan GL. Generation of aerosols by urban fire storm. Aerosol Sci Technol 10:28 –36; 1989.
謝辞:本調査研究は厚生労働省からの受託研究経費と科研費JP24H00367により進められた。広島平和記念資料館の皆様、特に学芸課の方々、御遺族、広島大学の遠藤暁教授、当大学院医学研究科総合解剖センター電子顕微鏡室の勝野達也博士、当所 の奥地拓生教授、ニコンソリューションズの髙橋恵太様、福井達雄様、澤田和明博士に感謝申し上げます。