日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] CTBT国際監視制度が拓く地球科学:現状、運用、科学的応用

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:Metz Dirk(CTBTO)、遠藤 暁(広島大学 大学院先進理工系科学研究科)、松本 浩幸(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)

17:15 〜 19:15

[HCG22-P04] 広島における原爆投下後の街区火災由来のエアロゾルが「黒い雨」の分布に与える影響について

*滝川 雅之1石川 裕彦2谷田貝 亜紀代3五十嵐 康人2 (1.独立行政法人海洋研究開発機構、2.京都大学複合原子力科学研究所、3.弘前大学大学院理工学研究科)

キーワード:大気化学、化学輸送モデル、エアロゾル、エアロゾルー放射相互作用

大気中を浮遊するエアロゾルはそれ自体が太陽放射を反射・吸収するだけでなく、雲凝結核となって雲の生成・特性等が変調し、降水過程に影響を及ぼす。またエアロゾルの一種である黒色炭素粒子は、太陽放射を吸収し周囲の大気を加熱することにより、大気温度の鉛直分布、ひいては大気安定度を変化させ、結果として雲生成を変調させる可能性がある。これらの過程は気候変動に大きな影響を及ぼしうるものとして近年の気候モデルに取り入れられつつあるが、街区火災のような短期的に高濃度のエアロゾルが排出された状況下においても周辺の気象場への大きな影響が考えられる。
このため、本研究では街区火災由来のエアロゾルと雲・降水過程との相互作用がもたらす影響評価を行った。街区火災の設定条件および火災煙由来の物質のモデルへの組み込みについては先行研究および近年の森林火災に関する観測的研究を元に設定した。加えて、側面境界および初期値として与える広域スケールの気象場の不確実性がダウンスケーリング計算時に広島周辺の気象場に与える影響についても評価するため、欧州中期予報センター(ECMWF) による再解析データERA5 (5th generation ECMWF Reanalysis)のEDA(ensembles of data assimilations) 10メンバでのアンサンブル実験を行なった。
昨年度報告では広島での爆心地周辺でのエアロゾルによる大気加熱が降水分布に与える影響などについて報告を行ったが、より広域なエアロゾル−放射相互作用の影響について解析を行った結果を報告する。爆心地周辺ではエアロゾルによる大気加熱が卓越することにより境界層高度が1km近く上昇する一方で、南風により高濃度エアロゾルプリュームが北北西方向に移流するに伴い、地表における短波放射が弱められることにより地表面温度が低下し、下流域では境界層高度が100m以下にまで下がる様子が見られた。また発表の際には長崎原爆に由来する街区火災の影響についても併せて報告する予定である。