日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] CTBT国際監視制度が拓く地球科学:現状、運用、科学的応用

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:Metz Dirk(CTBTO)、遠藤 暁(広島大学 大学院先進理工系科学研究科)、松本 浩幸(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)

17:15 〜 19:15

[HCG22-P06] 土壌中の全炭素および全有機炭素の分析

*池上 麻衣子1井上 淳2、福谷 哲1高宮 幸一1八島 浩1向井 中1、足立 友紀1五十嵐 康人1 (1.京都大学複合原子力科学研究所、2.大阪公立大学)

キーワード:土壌、炭素濃度、有機炭素、土壌断面調査

【はじめに】原子爆弾投下に伴う、放射性降下物の分布域を解明するため、原爆による建物の燃焼などに由来する微粒炭粒子や核分裂生成物である放射性セシウムの分析が行われている。微粒炭分析に関しては、TOC計を用いた微粒炭分析の迅速測定手法の開発を試みており、そのためにはまず土壌中の有機炭素をはじめ、炭素含有量を把握することが必要である。また、放射性セシウムをはじめ様々な元素の土壌中分布の解析については、元素の挙動に関して土壌中有機物が影響を及ぼすことが知られており、この観点からも、土壌中の炭素含有量の分析は必要である。土壌中の有機物量は土壌のpHや透水性などに影響を及ぼし、また、陽イオン交換容量を増加させるなど、土壌の性質決定に重要な役割を果たしている。土壌有機物は落葉や落枝、根などのリターから供給され、土壌中で分解されたものであり、土壌有機物のおよそ半分が有機炭素によって構成されている[1]。土壌には、有機炭素の他に、炭酸塩等の無機炭素が含まれていることがあるが、日本の土壌の場合、石灰岩母材の土壌などを除き、無機炭素が含まれていたとしてもごく微量であることがわかっている[2]。本研究では、鉛直方向における土壌中全炭素(TC)および全有機炭素(TOC)濃度の測定を行った。また、土壌断面調査を行い、層位、色調、土性などの調査項目と炭素濃度との関連性について検討した。

【方法】土壌中のTCおよびTOC濃度の測定にはmulti N/C 3100 +HT 1300(analytik jena社製)を用いた。また、有機炭素濃度を求めるために、まず土壌中の無機炭素を取り除くための前処理を行った。前処理は塩酸を用いて行い[3]、土壌試料に塩酸を添加後、乾燥させたものを測定した。

【結果】鉛直方向における、土壌中のTCおよびTOC濃度を求めた結果、表層で高い値を示し、深くなるにつれて減少し、しだいに一定の値になる地点が多く見られた。多くの地点で、表層で最大のTOC濃度を示し、表層から深さ約5cmにかけて大きく減少し、それよりも深い層では少しずつ減少し、さらに深い層でおよそ一定の値を示した。表層土壌のTOC濃度が他の地点と比較して小さい地点も見られたが、もともと有機物を多く含んでいない土壌についても、他の地点と同様に、下層になるにつれてTOC濃度が小さくなることがわかった。TC濃度とTOC濃度の比較を行った結果、TC濃度とTOC濃度はほぼ等しい値となり、測定した土壌にはほとんど無機炭素が含まれていないことが確認できた。
 また、土壌断面調査の結果より、堆積有機物層(L層、F層、H層)、鉱質土層(A層)で炭素濃度が高い、あるいは比較的高い値を示し、鉱質土層(B層)では低い値となった。色調では、一般的に、炭素濃度が高いほど、明度と彩度が小さくなると考えられており[4]、それぞれの採取地点において、明度+彩度の値と炭素濃度との比較を行った結果、明度+彩度の値が小さい層の方が炭素濃度が大きい、といった地点が多く見られ、本研究においても同様の結果が得られた。

【謝辞】本調査研究は厚生労働省からの受託により進められた。記して感謝します。

【参考文献】[1] 松﨑守夫「土壌有機物と農業生産との関係についての総説」,農研機構研究報告,No.6,p.1-19,2021.
[2] 高橋正通「森林土壌の有機物と炭素貯留量の推定」,森林立地学会誌,Vol.42,No.2,p.61-69,2000.
[3] Analytik jena「農業土壌、乾燥肥料および底質中のTOC測定」,Application Note,TOC Solid Analyzer,2019.
[4] 鳥居厚志他「土壌断面記載から炭素量を推定できるか?」,第119回日本森林学会大会,2008.