日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] CTBT国際監視制度が拓く地球科学:現状、運用、科学的応用

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:Metz Dirk(CTBTO)、遠藤 暁(広島大学 大学院先進理工系科学研究科)、松本 浩幸(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)

17:15 〜 19:15

[HCG22-P08] 広島旧陸軍備蓄倉庫遺構土壌中溶融粒子の抽出と分析

*遠藤 暁1、杉本 卓也1、梶本 剛1、山田 裕2、及川 将一2、五十嵐 康人3 (1.広島大学 大学院先進理工系科学研究科、2.量子科学技術研究開発機構、3.京都大学複合原子力科学研究所)

キーワード:黒い雨、熔融粒子、元素分析

2019年にWannier等が発表した論文では,広島県元宇品海岸の砂に高温起源(約1800℃以上)の熔融粒子が約3000トン存在すると報告されており,起源は1945年8月6日の広島原子爆弾に由来すると考えるのが妥当であろうと議論されている.この様な熔融粒子は,黒い雨降雨地域推定の指標物質として期待されるため,2021年からWannierの熔融粒子が原子爆弾に由来するものか否かを検討してきた.これまで,広島県元宇品海岸の海砂から球状熔融粒子の抽出を実施し,抽出した5.86 gの球状熔融粒子を用いて,Ge検出器による測定により,137Cs濃度,ウラン濃度およびトリウム濃度を定量した.その結果は,137Cs濃度は1.3 ±0.5 mBq g−1と,極微量であり熔融粒子原爆由来とするには濃度が低すぎた.また,ウランおよびトリウム濃度は,それぞれ8.67 ppmと20.1 ppmが得られ,広島市内の太田川河川敷の濃度と同程度かやや高い値であった.また,誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)による微量元素分析を行いBe, Co, Rb, Ag, Cs, Tl, Pb, Bi, Th, U濃度を定量した。これらの濃度は,広島土壌の含有量に近く,熔融粒子が土壌起源であることを示しているように見えた。更に,熔融粒子の235U/238U比を表面電離型質量分析(TIMS)測定で評価したところ,235U/238U比は,天然存在比0.00726と矛盾がなかった。これらの結果は,球状熔融粒子が市内の土壌起源と考えられる可能性を示していたが,原爆の火球で生成されたとは考えられない結果であった.
このような矛盾した情報を整理するために,原爆被爆土壌中で熔融粒子が存在するのか,またその性状はどんなものかを直接確認することを目的に,広島市内で発見された旧陸軍備蓄倉庫遺構において土壌コアを採取した。土壌中137Cs濃度を測定することで被爆面の同定をおこない、被爆面土壌中の熔融粒子の抽出及びPIXE分析を実施した。本発表では,被爆面の特定、熔融粒子の抽出及び量研機構のPIXE分析用加速器システム(PASTA)をもちいた熔融粒子のPIXE分析の結果について紹介する.