日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 文化水文学

2025年5月30日(金) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、座長:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)


12:00 〜 12:15

[HCG23-06] “環境都市・江戸”は果たしてどこまで衛生的だったのか?―地下水水質からの検討―

*安原 正也1 (1.立正大学地球環境科学部)

キーワード:江戸(東京)、都市地下水、水質、衛生環境、し尿

江戸については現在,リサイクルの進んだ“環境都市”あるいは“清潔・衛生的な都市”というイメージが定着している.このイメージの醸成には,江戸で排出されたし尿は競うように近郊の農村に運ばれ,貴重な肥料として利用されていたという記録によるところが大きい.また,ハンレー(2009)はヨーロッパの都市と比較しながら,し尿処理の方法も含めて江戸の公衆衛生の好さを強調している.さらに,江戸を訪れた当時の多くのヨーロッパ人も江戸は清潔・衛生的な都市だったと報告している(ドン・ロドリゴ「日本見聞録」など).
一方で,100万を超える人々が居住していた江戸が本当に清潔・衛生的な都市であったのかという疑問も呈されている(根崎,2008).たとえば,江戸では人糞については有機肥料として取引されたものの,肥料としての価値が低い尿については路地や下水に垂れ流しされていた(岩渕,1995;根崎,2008)という指摘がある.さらに,江戸末期の劣悪な衛生環境に関する鹿島(1977;原本は1922)の実体験に基づく証言もある.
果たして江戸は現在考えられているような“環境都市”あるいは“清潔・衛生的な都市”であったのか? 本発表では,明治最初期の東京府の地下水水質データから,江戸時代最末期におけるその水環境を類推する.また,環境問題が深刻であった1960年代〜70年代の高度成長期の東京,あるいは現在の東京都区部の浅層地下水の水質と比較しながら,江戸の都市環境を水質化学的な側面から議論する.