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[HDS07-03] 水の吸着能力が制御する風化火山灰土の剪断強度および剪断強度のすべり速度依存性

キーワード:地すべり、剪断強度、すべり速度依存性、粘土鉱物、吸着能力、摩擦
カタストロフィックな高速度のすべりの前兆を予測する様々なモデルが提案されているが(e.g. Saito, 1968; Fukuzono, 1985; Voight, 1989),必ずしも予測の通りにすべりが加速するとは限らない.実際には,加速が十分に進行しているにも関わらず,減速に転じ,停止する例もある(e.g. Doi et al., 2020).摩擦のすべり速度依存性が正であれば,さらなる加速は抑制される(Tika et al., 1996; Dieterich, 1979).しかし,地すべり地帯を構成する岩石・土壌を対象とした,すべり速度依存性の測定例は少なく,また,すべり速度依存性を制御する支配因子は明らかではない.
そのため本研究では,風化火山灰土を対象に,地すべりを模擬した,剪断実験を実施し,剪断強度のすべり速度依存性を測定した.加えて,粘土鉱物量,吸着水量,液性限界,塑性指数,全比表面積などの各種因子と剪断強度および剪断強度のすべり速度依存性を比較し,これらの支配因子を明らかにした.
使用した8試料は,熊本県阿蘇カルデラ西部の地すべり地帯から採取した.XRDによる分析の結果,試料には,スメクタイト,カオリナイト,アルナイト,非晶質シリカ,ガラスが含まれていた.粘土鉱物の含有量は熱重量・示差熱分析を用いて下記の手順で求めた.各試料40 mgを1000℃まで加熱し,室温から250℃までは吸着水の脱水による質量減少を,それ以上の温度では,各鉱物の熱分解反応生成物の揮発による質量減少が得られる.この揮発成分の質量から各粘土鉱物の質量を推定する.全比表面積はEGME法(Eltantawy and Arnold, 1973)で測定した.EGME法は,外部比表面積のみならずスメクタイトの層間の比表面積も測定できる手法である.
剪断強度の測定には,産業技術総合研究所地質調査総合センター所有の回転剪断試験機を用いた(Togo and Shimamoto, 2012).常温,垂直応力1 MPa程度,含水条件のもと,すべり速度を10⁻⁴ - 10 mm/minの範囲で剪断強度を測定した.また,一定のすべり速度0.28 mm/minで,24時間剪断させ,剪断強度の定常状態の値を得た.
用いた試料を大別すると,スメクタイトが多い試料と,カオリナイトを多く含む試料に分かれた. スメクタイトを最も多く含む試料は,それを74 wt.%持ち,カオリナイトを最も多く含む試料は,それを31 wt.%含んでいた.吸着水量はスメクタイトの含有量に依存せず,最大で18 wt.%であった.また,各試料の液性限界・塑性指数を測定し,塑性図にプロットした.ほぼすべての試料が塑性図のA線(Bardet, 1997)に沿ってプロットされた.液性限界,塑性指数の最大値はそれぞれ,133%と94%であった.全比表面積の最大値は,549 m²/gであった.全比表面積と粘土鉱物量(特にスメクタイトの含有量)との相関はみられず,むしろ,全比表面積と吸着水量に高い正の相関が確認された.液性限界・塑性指数でもまた,粘土鉱物量との相関はみられず,全比表面積と吸着水量が多いほど,液性限界・塑性指数が高いという結果を得た.定常状態の剪断強度は,0.1 MPaから0.5 MPaの範囲を取り,粘土鉱物量との明瞭な相関はみられなかった.一方,全比表面積,吸着水量,液性限界・塑性指数と,定常状態の剪断強度との間には,それぞれ負の相関が確認された.
大きい比表面積を持つ試料は,低すべり速度(10⁻⁴ - 1 mm/min)では負の速度依存性を示し,高すべり速度(1 - 10⁻¹ mm/min)では,正の速度依存性を示した.一方,全比表面積が小さい試料は,すべての速度範囲で負の速度依存性を示した.
以上より,試料に含まれる全比表面積が,水の吸着能力を支配し,かつ,吸着した水が剪断強度を低下させていると考えられる.また,大きい全比表面積を持つ試料ほど塑性的に振る舞い,かつ,高速ですべる地すべりに発展しにくい性質を持ちうると言える.
今回用いた8試料について,全比表面積とスメクタイトの含有量との間に正の相関が得られると,期待したが,明瞭な相関は得られなかった.何が土壌の水の吸着能力を決めているのか,また,それが地すべりのすべり様式をどう制御するのかについて,今後も引き続き検討を行っていきたい.
そのため本研究では,風化火山灰土を対象に,地すべりを模擬した,剪断実験を実施し,剪断強度のすべり速度依存性を測定した.加えて,粘土鉱物量,吸着水量,液性限界,塑性指数,全比表面積などの各種因子と剪断強度および剪断強度のすべり速度依存性を比較し,これらの支配因子を明らかにした.
使用した8試料は,熊本県阿蘇カルデラ西部の地すべり地帯から採取した.XRDによる分析の結果,試料には,スメクタイト,カオリナイト,アルナイト,非晶質シリカ,ガラスが含まれていた.粘土鉱物の含有量は熱重量・示差熱分析を用いて下記の手順で求めた.各試料40 mgを1000℃まで加熱し,室温から250℃までは吸着水の脱水による質量減少を,それ以上の温度では,各鉱物の熱分解反応生成物の揮発による質量減少が得られる.この揮発成分の質量から各粘土鉱物の質量を推定する.全比表面積はEGME法(Eltantawy and Arnold, 1973)で測定した.EGME法は,外部比表面積のみならずスメクタイトの層間の比表面積も測定できる手法である.
剪断強度の測定には,産業技術総合研究所地質調査総合センター所有の回転剪断試験機を用いた(Togo and Shimamoto, 2012).常温,垂直応力1 MPa程度,含水条件のもと,すべり速度を10⁻⁴ - 10 mm/minの範囲で剪断強度を測定した.また,一定のすべり速度0.28 mm/minで,24時間剪断させ,剪断強度の定常状態の値を得た.
用いた試料を大別すると,スメクタイトが多い試料と,カオリナイトを多く含む試料に分かれた. スメクタイトを最も多く含む試料は,それを74 wt.%持ち,カオリナイトを最も多く含む試料は,それを31 wt.%含んでいた.吸着水量はスメクタイトの含有量に依存せず,最大で18 wt.%であった.また,各試料の液性限界・塑性指数を測定し,塑性図にプロットした.ほぼすべての試料が塑性図のA線(Bardet, 1997)に沿ってプロットされた.液性限界,塑性指数の最大値はそれぞれ,133%と94%であった.全比表面積の最大値は,549 m²/gであった.全比表面積と粘土鉱物量(特にスメクタイトの含有量)との相関はみられず,むしろ,全比表面積と吸着水量に高い正の相関が確認された.液性限界・塑性指数でもまた,粘土鉱物量との相関はみられず,全比表面積と吸着水量が多いほど,液性限界・塑性指数が高いという結果を得た.定常状態の剪断強度は,0.1 MPaから0.5 MPaの範囲を取り,粘土鉱物量との明瞭な相関はみられなかった.一方,全比表面積,吸着水量,液性限界・塑性指数と,定常状態の剪断強度との間には,それぞれ負の相関が確認された.
大きい比表面積を持つ試料は,低すべり速度(10⁻⁴ - 1 mm/min)では負の速度依存性を示し,高すべり速度(1 - 10⁻¹ mm/min)では,正の速度依存性を示した.一方,全比表面積が小さい試料は,すべての速度範囲で負の速度依存性を示した.
以上より,試料に含まれる全比表面積が,水の吸着能力を支配し,かつ,吸着した水が剪断強度を低下させていると考えられる.また,大きい全比表面積を持つ試料ほど塑性的に振る舞い,かつ,高速ですべる地すべりに発展しにくい性質を持ちうると言える.
今回用いた8試料について,全比表面積とスメクタイトの含有量との間に正の相関が得られると,期待したが,明瞭な相関は得られなかった.何が土壌の水の吸着能力を決めているのか,また,それが地すべりのすべり様式をどう制御するのかについて,今後も引き続き検討を行っていきたい.