日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] 地すべりおよび関連現象

2025年5月30日(金) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:王 功輝(京都大学防災研究所)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、千木良 雅弘(公益財団法人 深田地質研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)、座長:今泉 文寿(静岡大学農学部)、Yuxuan LUO(Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

16:15 〜 16:30

[HDS07-22] 四国山地における干渉SAR時系列解析に基づく斜面変動推定領域の抽出と特徴

*山崎 新太郎1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:干渉SAR時系列解析、地すべり、四国山地、重力斜面変形、地質

1.はじめに
国土地理院(GSI)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,8年間にわたるALOS/PALSAR-2データを用いて干渉SAR時系列解析を実施し,2023年3月に全国の変位分布図をGSIウェブサイトで公開した.この解析結果は暫定的なものであり,プレート運動や大規模地震に起因する地殻・地盤変動は除去されているため,地震時の地すべりや地殻変動を把握することはできない.また,空間分解能は約90m四方であるため,数百メートル四方以下の変位を捉えることは困難である.しかし,筆者が既知の大規模斜面変動地で試験的に解析結果画像を観察したところ,斜面変動が観測できると考えられ,年間数センチメートル以下の徐動性重力斜面変形を網羅的に観測するツールとして大きな可能性がある.本稿では,四国山地の広範囲において,GSI提供の干渉SAR時系列解析結果画像から,筆者の基準による判読によって「重力斜面変形推定領域(estimated gravitational slope deformation areas : EGSDAs)」を抽出し,その結果を述べ特徴を整理する.

2.干渉SAR時系列解析結果の概要
干渉SAR時系列解析は,異なる時期の観測データを用いて作成された多数のSAR干渉画像を統計的に処理することにより,SAR干渉画像に含まれる大気や軌道誤差に起因する誤差を低減し,微小な地表の動きとその時間変化を捉える解析手法である.GSIはこの干渉SAR時系列解析を実施し準上下・準東西方向への変位速度に変換したデータをGSIウェブサイトで公表した.得られた解析結果は,実際の上下,東西方向から数度ずれたものとなる.また,南北方向の移動速度は得られない.なお,本報告で取り扱う解析結果の観測期間は南行軌道が2014年8月6日~2022年9月3日,北行軌道が2014年8月8日~2022年12月19日であり,観測間隔の上限はそれぞれ760日と1095日であった.

3.重力斜面変形推定領域の抽出
筆者は,準上下・準東西方向の変位速度が高い領域が周辺部と明らかに判別できる幅500m以上のスポット状の領域を重力斜面変形推定領域として抽出した.準上下変動解析結果からは77箇所,準東西解析結果からは150箇所である.本方法で抽出したEGSDAsは,微地形から推定される重力斜面変形(ここでは狭義の「地すべり」も含めて斜面重力変形とする)の箇所と一致することが多い.一方で,抽出したEGSDAsが地形から判読できる微地形の性質と一致しない例もあった.この理由については不明な点が多く,今後の課題となる.

4.広域的抽出の結果と考察
四国山地は西日本地域では筆者の方法でEGSDAsを抽出できる場所が最も高密度に分布している.しかし,主に地質分布に依存して差があるように思われる.深成岩類からなる高縄半島の山地では重力斜面変形による地形が少なく,EGSDAsも少ない.また,非変成の堆積岩からなる讃岐山脈は重力斜面変形による地形は多いもののEGSDAsは少ない.同じく非変成の堆積岩からなる四万十帯地域では重力斜面変形は少なく,EGSDAsも少ない.一方で,規模が大きく多数のEGSDAsが認められるのは,四国山地の変成付加体(主に三波川帯)からなる領域である.この領域では,結晶片岩などの剥離性の著しい岩石が分布することに加え降水量も多いため,活発な重力斜面変形の活動があると推定される.

四国山地・変成付加体においてもEGSDAsの分布には偏在が認められた.大まかには四国最高峰の石鎚山(標高1982m)から北東方に延長する石鎚山脈周辺,第二標高点である剣山(標高1955m)の東方,吉野川中流域の東方,明神山(中津山,1541m)から笠取山(1562m)の仁淀川中流域を含む周辺に偏在する.これらの地域では標高が大きく,加えて,吉野川と仁淀川の大河川付近で河川侵食も活発であるため斜面の比高が大きくなり,重力斜面変動が多発している可能性がある.さらに,変成付加体地域の中でも地質による差異が存在する可能性もある.吉野川に中流部で合流する南小川から京柱峠の周辺には大規模で顕著な変位を示すEGSDAsが分布する.南小川はその川の周辺を境として概ねその北側が三波川変成コンプレックス・白滝ユニットまたは御荷鉾ユニットに属する泥質片岩,南側が三波川変成コンプレックス・御荷鉾ユニットに属する苦鉄質片岩および変成玄武岩である.南小川の南北両側とも重力斜面変形が多発する領域であるが,特に西移動を示すEGSDAsが顕著に御荷鉾ユニット側に多数確認できた.これは,苦鉄質片岩および変成玄武岩側の重力斜面変形が活発な変動を示すほか,緩い傾斜で発生し,個々の移動体の規模も大きいことでEGSDAsとして顕著に表現されているものと思われる.一方で南小川の北側でEGSDAsの分布が少ない理由は,斜面規模が小さいことや,変位速度が小さいことも理由として考えられる.