日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] 地すべりおよび関連現象

2025年5月30日(金) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:王 功輝(京都大学防災研究所)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、千木良 雅弘(公益財団法人 深田地質研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)、座長:今泉 文寿(静岡大学農学部)、Yuxuan LUO(Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University)

16:30 〜 16:45

[HDS07-23] 2024年4月9日、富士山北西斜面で発生したスラッシュ・フローによる被害調査の報告

*西澤 達治1吉本 充宏1久保 智弘1亀谷 伸子1秋葉 祐里1、熊本 瑞樹1渡部 将太1本多 亮1山河 和也1池谷 拓馬1山本 真也1 (1.山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター)

キーワード:スラッシュ・フロー、雪代、土石流、土砂災害、富士山、ドローン

2024年4月10日、富士北麓と吉田口登山道五合目を結ぶ富士スバルラインの一合目や四合目付近において、土砂が道路上に流入している旨が各報道機関より報道された。山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センターでは、この災害の概要とその被害状況を把握するために、堆積物調査、ドローンを用いた空撮調査、地震観測網及び重力観測の波形解析や記録の確認を行った。本発表は、4月11日から15日にかけて富士スバルライン四合目の土砂流入現場付近において我々が実施した、堆積物調査及びドローンを用いた空撮調査の結果を中心に報告する。
標高約2,020 m、山頂火口中心から西北西方向に約3.6 kmに位置する富士スバルライン四合目には、南側に凸のヘアピンカーブと四合目休憩所がある。東側より道路上に流入した土砂がヘアピンカーブの道路全体を1~数mの厚さで覆い、その一部は更に西側へと流下している。堆積物は主に、雪氷とスコリアなどの火山砕屑物粒子の混合物から構成されており、スラッシュ・フローに伴う堆積物の特徴を有する。また堆積物には、フローに巻き込まれた樹木の他にコンクリート片やワイヤーロープなどの人工物も含まれている。富士山の西斜面を流下する2本の谷筋(“滑沢”、“仏石流し”)が、ヘアピンカーブの東方側で合流している。合流地点には、滑沢の流下物がヘアピンカーブに流入することを防ぐ目的で6基の導流提が設置されていた。しかし、滑沢を流下したスラッシュ・フローの一部が導流提に衝突しており、南側の2基が決壊し3基目が半壊していた。その結果、決壊した導流提を越流したスラッシュ・フローがヘアピンカーブへと流入したことが判明した。滑沢を流下したスラッシュ・フローは、ヘアピンカーブから600 m西側にある6基の砂防堰堤も越流していることが確認された。滑沢を流下したスラッシュ・フロー堆積物も雪氷混じりの土砂であるが、特に谷筋の中心付近は大きさが数mの雪塊が多くなる傾向がみられた。また、堆積物の中心に沿って幅が数m、深さ5 m以上のgullyが形成されていた。さらに、日中、日差しが出て気温が高くなると堆積物から水蒸気が立ち昇り、また、内部の雪氷が融解し始めることで堆積物の一部がスラッシュ・ラハールとして流下し始めていた。続いて、ドローンに搭載した遠望レンズで山頂方向を観察すると、山頂火口中心から西北西~北西方向に約1.1~1.3 km離れた標高3,200~3,300 mの複数個所から、スラッシュ・フローが北西麓の複数の谷筋へと流下しているように見られた。
四合目休憩所に設置されている重力計には、4月9日10時頃に計測範囲を振り切る特徴的な波形が記録されており、今回発生したスラッシュ・フローと関連した物理現象に起因するものと考えられる。尚、地球物理観測の波形解析に基づく議論については、同セッションの発表 “Study on the geophysical observations of the slush flows that occurred on the northwestern slopes of Mt. Fuji on April 9, 2024”を参照されたい。
富士山山頂のアメダスで記録された気温は、4月6日の午前12時から8日の午前12時にかけて、-10℃から-0.5℃へ約10℃上昇しており、翌9日の午前12時までは0℃付近を推移しており温度変化が少ない。続いて、富士スバルライン沿いの一合目、四合目、五合目に設置された雨量計には、4月9日の午前0時頃から降雨が観測され、同日の午前12時にかけて降水量が増加しており、四合目の雨量計には午前8時~9時台には30 mmを超える降水量を記録されていた。これらの気象条件は、先行研究で指摘されてきたスラッシュ・フローの発生条件とよく一致している(例えば、安間,2007)。