日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 防災リテラシー

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)

17:15 〜 19:15

[HDS09-P10] 土砂災害を未然に防ぐための数値地形解析による崩壊発生箇所抽出と共有化の試み

*山田 龍聖1菊地 輝行1 (1.公立諏訪東京理科大学)

1.はじめに
 近年では降雨量増加に伴って災害の激甚化が進み,人々の想定を超えた大規模な被害が発生することが多い.このような災害に対して,被災住民の確証バイアスによる過小評価は避難の遅れを生み出し,被害を拡大させる危険性を秘めている.この傾向は,少雨県である長野県でも認められ,2021年長野県茅野市高部地区下馬沢川流域における土砂災害では約2万m3の土石流が発生した.この土石流災害においては,土地伝承によって自治体からの避難指示前に,早期避難が達成できたため人的被害がなかった.このような早期避難が常時達成できれば災害による人命の被害は最小限に抑えることができると考えられえる.
そこで本研究では,本土石流災害を対象に,土地伝承と遺跡,祠や石碑を調査し,さらに崩壊発生減となる地形の抽出を行った.さらに周辺の地形とも比較することで地域に対する既往災害に関する共有化を試みたので報告する.

2.調査・解析手法
2021年に土砂災害が発生した高部地区と昭和58年に大規模な土石流災害を受けている安国寺地区を対象にする.調査は,聞き取り調査に加え,遺跡,祠や石碑を調査した.また長野県林務部の所有する0.5m-DEMを用いて両地区の地形解析を行った.地形解析は,本研究では傾斜量に着目し土石流災害警戒区域で急傾斜地に相当する傾斜度が30度以上を示す箇所を抽出した.また,国土地理院の有する空中写真を時系列的に表示することで地域発展の経過を確認した.

3.解析結果
解析結果のうち,図1は高部地区における傾斜量図であり,急傾斜地に相当する傾斜30度より小さい範囲を白で表示し、大きい範囲は勾配が急になるにつれて段階的に青く表示した.さらに遺跡,祠や石碑の分布と2021年の土砂災害の被害域を重ねることによりこれらの要素と地形特性を視覚的に把握しやすくした.図2は,同様の表示手法による安国寺地区における傾斜量図を示した.この図から土砂移送域の形状の違いが明らかになっている.特に高部は川幅が狭く,急傾斜地から扇状地へは河川本流(宮川)に近い.また土石流は下馬沢川の右岸に集中している.一方,安国寺地区では,河川の中流から堆積域が広がって川幅も広くなっている.さらに,点在する遺跡,祠や石碑の分布について,高部の下馬沢川左岸においては被害が軽微であった.このことから土石流災害と遺跡,祠や石碑分布には関連性があると考えられる. 遺跡分布は地域文化に密接に関わっていることからも,住民に対して身近な指標になりえると考えられる.

4.今後の展望
地形解析においては,地形湿潤指数(TWI)の活用による表流水の流下方法の解析などの指標を加えることで,地域に説明することが可能なハザードマップを作成することで防災減災に貢献できると考える.

参考文献
1)坂井佑介, 山田友, 坂田剛, 山越隆雄, 宮瀬将之, 酒井敦章, 林真一郎. (2022). 令和 3 年 9 月に長野県茅野市下馬沢川で発生した土砂災害. 砂防学会誌, 75(1), pp.25-34.
2)菊地輝行,小林誠司:2021年9月茅野市下馬沢川流域における土砂・洪水氾濫発生に関する小考察,令和5年度日本応用地質学会研究発表会要旨集,2023


図1 高部地区傾斜量図と遺跡分布
図2 安国寺地区傾斜量図と遺跡分布