日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2025年5月30日(金) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:山中 悠資(北海道大学)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)

15:00 〜 15:15

[HDS10-06] 海底圧力観測データを用いた津波検知に用いるフィルタの検討

*近貞 直孝1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:津波、観測波形データ、海底圧力観測

沖合での津波観測は地震等によって発生した津波を沿岸に到達する前に直接観測することが出来るようになるため,津波即時予測の点で絶大なる効果を発揮している.また,外洋に広範囲に設置されたthe Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunamis (DART)によって観測された遠地津波の波形解析から,線形長波近似では再現しきれない分散波の効果が明らかになる(Baba et al., 2017)など,理論的な研究にも大きく貢献している.
DARTは,巨大地震発生が予見される海溝軸付近の深海に設置されている場合が多い.一方,日本周辺の津波を観測するために設置された日本海溝地震津波観測網(S-net)や地震・津波観測監視システム(DONET),敷設中の南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)は深海に限らず陸側に近い水深の浅い海底にも設置されている.これらの観測網は海底に設置した圧力計により水深の変化を圧力変化として記録することで津波を観測している.この時,静水圧を仮定し,海面での波高と海底圧力変化は比例するものとして取り扱われることが多い.一方で,理論的には海面変化の空間波数kに対して,水深hの地点では,海底圧力は 1/cosh(kh) で減衰することが知られており,津波波形への影響も確認されている(近貞他(2018),Chikasada (2019)).
海底圧力観測網のデータを用いて津波を即時予測するためには,津波が発生しているというトリガが必要となる.地震性津波においては,地震発生時刻をトリガとして用いることが出来るが,非地震性津波においては,津波そのものを検知するトリガを持たなければならない.その最もシンプルな方法として,振幅の短時間平均と長時間平均の比をとり,短時間の変化が一定以上あった場合に津波が発生したと判断する手法がある.他にも検知手法はあるが,振幅のみによるものが殆どで波長が考慮されていない.これにより,水深が異なる広域に敷設された観測網のデータを用いると,観測点毎に感度が変わってしまうという問題が内在している.さらに,水深が浅い観測点では一般的に津波よりも波長が短い風波等の影響で誤検知してしまうため,しきい値を変更するなどの工夫が必要になるが,定量的な議論は行われていない.
そこで,本研究では,波数及び水深に依存した減衰率を応用し,仮想的な一様水深における波形となるようフィルタを適用することで,水深によらないしきい値設定を可能とする手法を提案する.また,インライン式海底圧力計における地震発生時のステップに対する対処や,Butterworthフィルタ等を用いた潮汐除去による波形変形など,津波検知に用いるべき適切なフィルタについて検討した結果を報告する