日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2025年5月30日(金) 15:30 〜 17:00 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:今井 健太郎(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)

15:45 〜 16:00

[HDS10-08] 孀婦海山周辺における海底沈降による津波発生の解析

*徳田 達彦1,2今井 健太郎2有川 太郎1 (1.中央大学、2.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:津波、鳥島、カルデラ、三次元計算

2023年10月9日,鳥島近海で発生した複数回の地震の発生源は孀婦海山周辺と推定されている.1987年と2023年に実施された海底地形調査による地形差分から,水平方向で数kmオーダーのカルデラ状の海底地形が形成されていることが確認されただけでなく,水平方向で数百mオーダー,鉛直方向で400 mに及ぶ局所的な沈降が確認されている(Fujiwara et al., 2024).Kubota et al. (2024) やTakemura et al. (2024)は,数kmオーダーのカルデラ状地形に着目し,その隆起によって津波が発生した可能性を示唆している.一方で,局所的な沈降でも津波が発生した可能性のひとつとして考えられる.本研究では,孀婦海山周辺の局所的な海底沈降を起因とした津波発生のメカニズムを明らかにするため,3次元の数値計算を用いたシミュレーションを実施した.3次元計算は,有川ら(2005)によって開発された海表面をVOF法で計算する単相のNavier-Stokes方程式(CADMAS-SURF/3D)を用いた.特に,沈降速度を正弦関数で変化させながら,半周期分の鉛直下向き流速を沈降地点に与えることで,津波の波高や周期を解析した.計算条件として,沈降地点の与えた流速の時間積分値を観測された地形変化量に合わせた.また,カルデラからの津波伝播計算については富田ら(2016)が開発した静水圧仮定の非線形長波方程式(STOC-ML)との連成により計算している.また,沈降変化が完了するまでの時間を変化させた複数のケースを計算し,沈降継続時間を4分から10分の1分ごとを変えたシミュレーション結果を解析した.沈降継続時間が短くなるほど波高は大きくなる一方で,周期は各ケースでの大きな変化は確認できなかった.これは湾地形の効果によるものと考えている.八丈島の観測波形と計算結果との比較から,沈降継続時間は2分から5分程度の時間で完了したと仮定すると観測データとの整合性が高い結果が得られた.一方,観測では複数の地震波が検出されており,沈降が複数回に分けて発生した可能性も指摘されている(Sandanbata et al., 2024; Takemura et al, 2024).しかし,本研究では単一回の沈降が完了したと仮定しており,複数回にわたる沈降の影響については今後の課題としたい.
本手法を用いることで,海底火山活動による海底沈降が津波に与える影響を詳細に評価することが可能となり,津波の発生メカニズム解明に寄与することが期待される.また,将来的な津波警報システムの改善にも応用可能である.孀婦海山周辺は過去にも火山活動による海底地形の変化が記録されている地域であり,同様の津波発生リスクを抱えている.地質学的背景を考慮したモニタリングの強化が求められる.本研究は,火山活動による海洋災害の予測精度向上や防災対策の立案に重要な知見を提供するものである.