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[HDS10-P04] 確率論的津波ハザード情報を活用した高リスク地域抽出の試み
キーワード:津波、リスク
1. はじめに
防災科学技術研究所では確率論的津波ハザード評価結果として、海岸線における最大水位上昇量の確率論的ハザード情報を公表してきた(例えば、藤原ほか(2020)など)。また、中村ほか(2025)では、南海トラフ地震を対象とした陸域での遡上計算も実施しており、海岸線だけでなく陸域の浸水深を対象とした津波ハザード情報の整備も進んでいる。このように、不確実性の大きな津波リスクに対する多数の津波伝播遡上計算結果に基づいた津波ハザード情報が、近年公表されるようになった。
その一方で、これらのハザード情報の利活用手法については研究途上である。鬼頭ほか(2024)では天端高における条件付き超過確率を用いた堤防リスク評価や、堤防嵩上げの費用便益分析手法を提案している。その一方で、広域を対象として、津波ハザード情報と後背地の曝露量を結びつけた地域のリスク評価の取り組みは十分に行われていない。
本研究は、藤原ほか(2020)や中村ほか(2025)による南海トラフ地震を対象とした津波ハザード情報と、陸域の曝露量を結びつけることにより、高リスク地域の抽出を試行したものである。
2. 使用する津波ハザードおよび曝露情報
津波ハザード情報には、海岸線での最大水位上昇量を対象とした藤原ほか(2020)によるハザード情報と、陸域の浸水深を対象とした中村ほか(2025)によるハザード情報を利用した。なお、陸域の浸水深は、データを軽量化する観点で50mメッシュ単位とした。また、曝露量には令和2年(2020年)国勢調査による250mメッシュ単位の人口データを用いた。
3. 高リスク地域の抽出
(1)浸水範囲内の人口
中村ほか(2025)による最大浸水深と、250mメッシュ単位の人口データを重ねることにより、浸水範囲内の人口を抽出した。抽出した人口を市区町村単位に集計したうえで、浸水範囲内の人口総数と、市区町村人口に占める人口割合の二つの面から整理した。なお、250mメッシュ内に浸水する計算格子が1つでも存在する場合には、当該250mメッシュ全体の人口を浸水範囲内人口として抽出した。
(2)堤防天端高を超える津波の曝露人口
まず、鬼頭ほか(2024)の手法により「堤防の点数付け」を行った。堤防の点数とは、最大水位上昇量が堤防天端高となる条件付き非超過確率と定義した。ここで、堤防天端高には内閣府(2013)を、堤防における最大水位上昇量には藤原ほか(2020)による海岸線での津波ハザード情報を用いた。
次に、陸域の250mメッシュと堤防とを関連づけた。関連付けは、250mメッシュから直線で最寄りとなる堤防とした。
最後に、最寄り堤防の点数が一定値以下の250mメッシュ人口を抽出することにより、堤防天端高を超える津波による曝露人口を抽出した。さらに、上記の人口を市区町村単位で集計したうえで、市区町村単位での人口総数と人口割合の二つの面で抽出結果を表示した(図1)。
4. まとめ
津波ハザード情報と曝露人口を重ねることにより、高リスク地域の抽出を試行した。試行にあたっては、単に浸水する可能性のある人口を抽出するだけで無く、堤防天端高の条件付きハザードを活用して堤防で防御出来ない曝露人口も抽出した。堤防で防御出来ない人口を用いることで、堤防整備の優先順位付けなど、効率的なリスク対策に資するなどの活用事例が考えられる。
本研究は防災科研の研究プロジェクト「自然災害のハザード・リスクに関する研究開発」の一環として実施している。
文献
藤原広行ほか(2020):南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価 -第一部 本編-,防災科学技術研究所研究資料,No.439.
鬼頭直ほか(2024):南海トラフ地震の津波ハザード情報を用いた確率論的浸水リスク評価とその利活用,地震工学会論文集,Vol.24,pp.54-72.
内閣府(2013):南海トラフの巨大地震モデル検討会,津波断層モデル(7)堤防データ.
中村洋光ほか(2025):南海トラフ巨大地震の発生の多様性を考慮した地震防災基盤シミュレータの構築,防災科学技術研究所研究資料,印刷中.
防災科学技術研究所では確率論的津波ハザード評価結果として、海岸線における最大水位上昇量の確率論的ハザード情報を公表してきた(例えば、藤原ほか(2020)など)。また、中村ほか(2025)では、南海トラフ地震を対象とした陸域での遡上計算も実施しており、海岸線だけでなく陸域の浸水深を対象とした津波ハザード情報の整備も進んでいる。このように、不確実性の大きな津波リスクに対する多数の津波伝播遡上計算結果に基づいた津波ハザード情報が、近年公表されるようになった。
その一方で、これらのハザード情報の利活用手法については研究途上である。鬼頭ほか(2024)では天端高における条件付き超過確率を用いた堤防リスク評価や、堤防嵩上げの費用便益分析手法を提案している。その一方で、広域を対象として、津波ハザード情報と後背地の曝露量を結びつけた地域のリスク評価の取り組みは十分に行われていない。
本研究は、藤原ほか(2020)や中村ほか(2025)による南海トラフ地震を対象とした津波ハザード情報と、陸域の曝露量を結びつけることにより、高リスク地域の抽出を試行したものである。
2. 使用する津波ハザードおよび曝露情報
津波ハザード情報には、海岸線での最大水位上昇量を対象とした藤原ほか(2020)によるハザード情報と、陸域の浸水深を対象とした中村ほか(2025)によるハザード情報を利用した。なお、陸域の浸水深は、データを軽量化する観点で50mメッシュ単位とした。また、曝露量には令和2年(2020年)国勢調査による250mメッシュ単位の人口データを用いた。
3. 高リスク地域の抽出
(1)浸水範囲内の人口
中村ほか(2025)による最大浸水深と、250mメッシュ単位の人口データを重ねることにより、浸水範囲内の人口を抽出した。抽出した人口を市区町村単位に集計したうえで、浸水範囲内の人口総数と、市区町村人口に占める人口割合の二つの面から整理した。なお、250mメッシュ内に浸水する計算格子が1つでも存在する場合には、当該250mメッシュ全体の人口を浸水範囲内人口として抽出した。
(2)堤防天端高を超える津波の曝露人口
まず、鬼頭ほか(2024)の手法により「堤防の点数付け」を行った。堤防の点数とは、最大水位上昇量が堤防天端高となる条件付き非超過確率と定義した。ここで、堤防天端高には内閣府(2013)を、堤防における最大水位上昇量には藤原ほか(2020)による海岸線での津波ハザード情報を用いた。
次に、陸域の250mメッシュと堤防とを関連づけた。関連付けは、250mメッシュから直線で最寄りとなる堤防とした。
最後に、最寄り堤防の点数が一定値以下の250mメッシュ人口を抽出することにより、堤防天端高を超える津波による曝露人口を抽出した。さらに、上記の人口を市区町村単位で集計したうえで、市区町村単位での人口総数と人口割合の二つの面で抽出結果を表示した(図1)。
4. まとめ
津波ハザード情報と曝露人口を重ねることにより、高リスク地域の抽出を試行した。試行にあたっては、単に浸水する可能性のある人口を抽出するだけで無く、堤防天端高の条件付きハザードを活用して堤防で防御出来ない曝露人口も抽出した。堤防で防御出来ない人口を用いることで、堤防整備の優先順位付けなど、効率的なリスク対策に資するなどの活用事例が考えられる。
本研究は防災科研の研究プロジェクト「自然災害のハザード・リスクに関する研究開発」の一環として実施している。
文献
藤原広行ほか(2020):南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価 -第一部 本編-,防災科学技術研究所研究資料,No.439.
鬼頭直ほか(2024):南海トラフ地震の津波ハザード情報を用いた確率論的浸水リスク評価とその利活用,地震工学会論文集,Vol.24,pp.54-72.
内閣府(2013):南海トラフの巨大地震モデル検討会,津波断層モデル(7)堤防データ.
中村洋光ほか(2025):南海トラフ巨大地震の発生の多様性を考慮した地震防災基盤シミュレータの構築,防災科学技術研究所研究資料,印刷中.