日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)

17:15 〜 19:15

[HDS10-P08] 日本沿岸の検潮記録を対象とした2010年チリ地震による津波の計算

*元井 弘一郎1馬場 俊孝1 (1.徳島大学)


キーワード:チリ地震、津波

2010年2月27日に発生したM8.8のチリ地震では,巨大な津波が発生し,太平洋を横断して日本沿岸にも到達した.日本では津波警報が発表され,沿岸地域において避難が呼びかけられた.実際の津波の到達時間は予測の約20~30分後であった.その後の研究により,地球の弾性変形を考慮することで到達時間のずれは解消すると指摘された.これは深海底に設置されている海底圧力計で観測された津波と計算津波の比較により確認された.一方で,津波の被害軽減の上で重要な沿岸域における津波の再現性については,十分な調査がなされていない.
そこで本研究では,2010年チリ地震による津波を対象に,日本の検潮所で観測された津波波形の再現性を検討した.具体的には,2つの数値計算手法を比較し,到達時間・最大津波高・計算コストの観点から評価した.2つの手法のひとつは,非線形長波により求めた波形にWatad et al. (2014)の位相補正を用いた手法であり,もうひとつは波数分散性と地球の弾性変形を考慮した数値計算(JAGURS,Baba et al., 2017)である.計算領域は太平洋全体とし,断層モデルには Yoshimoto et al. (2016) を採用した.地震発生から40時間分の津波を計算した.観測点として日本の検潮所6地点(花咲,大船渡,鮎川,布良,岡田,阿波由岐)を利用した.地形データには,81秒角,27秒角,9秒角,3秒角,1秒角を用いて,最小格子27秒角の2層ネスティング,最小格子9秒角の3層ネスティング,最小格子3秒角の4層ネスティング,最小格子1秒角の5層ネスティングの異なる4つのネスティングモデルで検討した.計算はFujitsu Supercomputer PRIMEHPC FX1000,Fujitsu Server PRIMERGY GX2570(Wisteria/BDEC-01)で行い,2層から4層ネスティングでは16ノード,5層ネスティングでは32ノード(スレッド数2)で実施した.
解析の結果,どちらの手法においても地球の弾性変形を考慮することにより津波の到達時刻のずれはほぼ解消した.布良と阿波由岐を除く4つの観測点において,最大津波高の再現は±0.2mであった.布良と阿波由岐では最大津波高が観測波形より小さく評価された.また,地形分解能を高くすることで港内での反射や観測点位置の正確性の向上により初期の波形の再現精度は改善されたが,最大津波高や到達時刻に顕著な変化は見られなかった.さらに,最小格子1秒角までの5層ネスティングの場合では津波到達時刻までに計算が終了しなかった.
結論として,津波の到達時刻と最大津波高の点において,2つの手法に有意な差は見られなかった.定量的な再現精度としては,津波の到達時刻は3~4分程度のずれ,最大津波高は幾何平均(K)が1.25,幾何標準偏差(κ)が0.18と求められた.しかし,計算コストの面では,位相補正法の場合,分散や地球の弾性変形を考慮しない波形を準備すればよいため,JAGURSを用いた手法よりも即時予測の観点から有効であった.今後は,津波警報の精度向上につながる手法の開発を進めていく予定である.