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[HDS11-P02] マルチエージェントシミュレーションを用いた金沢八景における津波避難行動最適化と動的避難誘導の提案
日本では大規模地震が多く発生しており, それに伴う災害の中でも特に津波によって甚大な被害がもたらされている. 近い将来, 首都圏においても大地震の発生が懸念されており, 巨大地震が発生した場合, 太平洋側の沿岸地域では津波による浸水が予想されている. このような状況下において, 津波による犠牲者を減らすためには, 迅速かつ安全な避難行動を確保することが課題となっている. そこで, 本研究では, 横浜市金沢八景地域を対象に, 津波避難行動の効率化を目的とした動的避難誘導看板の設置を提案し, その有効性を検証する. さらに, NSGA-Ⅱにより, 看板の認識率, 認識時間, 設置数を目的関数として, 提案看板の最適な設置箇所を求める. 本研究では, この提案看板はすべて正常に稼働しているという仮定のもと, 有効性を確認し, システムの不確実性については議論しない. 本研究で提案する看板は, QRコードを活用することで避難者の属性や津波到達までの残り時間, 避難所の収容可能人数を考慮し, リアルタイムに最適な避難ルートを提示する機能を持つものとする. 経路提案時には, 高台などの安全地帯を最優先で目的地として設定するが, 津波到達までの残り時間と照らし合わせた結果, 到達不可能と判断された場合には避難所を目的地とする. この際, 避難所の現在の収容人数を考慮し, 到着後に収容可能人数を超過してしまうような事態が発生しないようにする. 具体的には, エージェントが避難所に割り当てられる際に, その収容所の収容予定人数を更新することで, 収容能力を超えることがないように管理する. また, 避難所の選定時においては, 海岸からの距離や標高などの避難所の位置を考慮し, 避難所に安全順位を与え, 安全順位の高いものを優先的に目的地として設定する. 上記の看板の有効性をマルチエージェントシミュレーション(以下MASと表記)を用いて検証する. MASとは複数の自律的な行動主体(エージェント)が相互作用を通じて, 複雑な動的現象を再現し, その挙動を解析するための手法である. 本シミュレーションでは, 予測最大津波高が最も高い慶長型地震の発生後の津波避難行動を想定している. 各エージェントには, 歩行速度および避難開始時間という2つの属性が与えられ, エージェントの行動タイプは, 最寄りの避難所を目指すタイプと, 高台などの安全地帯を目指すタイプ, 他者に追従するタイプの3つに分類される. 各属性や移動タイプに基づき, エージェントは異なる避難経路や行動パターンを選択する. シミュレーションの結果, 看板の設置によって, 避難成功率が大幅に向上することが確認された. さらに, NSGA-IIを実行し, 設置数が最小となる解を最適解として選定した. この選定箇所に看板を配置し, 再度シミュレーションを行ったところ, 避難成功率は向上したものの, 一部のエージェントが適切な誘導を受けられずに迷うケースが発生した. 今後は誘導を受けられなかったエージェントの原因の分析やNSGA-Ⅱのハイパーパラメータを変化させた場合を検証し, さらなる最適設置箇所を選定していく予定である。
