16:15 〜 16:30
[HGG03-10] 阿蘇の草原における開発・保全・災害と資源利用
キーワード:草原、開発、保全、自然災害、阿蘇
熊本県阿蘇地域には約2万ヘクタールの草原が広がっている。阿蘇の草原は、野焼きや放牧、採草などの人間活動によって形成されてきた半自然草地である。そのため、阿蘇の草原は自然と人間が生み出した「文化的景観」として広く知られている。草原の役割は時代によって異なるが、戦後は主に畜産農家によって放牧・採草地として利用されてきた。しかしながら、畜産農家の減少や高齢化により、従来のように草原を維持することが困難となり、草原面積は減少している。このようななか、現在では草原を保全するための様々な取り組みが行われている。
本発表では、阿蘇の草原における資源利用の変遷を提示する。特に、草原をめぐる社会・経済的な文脈や、自然環境の変化に着目し、多層的な時空間スケールで生じる現象との連関のなかで草原景観の動態を考察する。
現地調査は2022年から阿蘇市内のA牧野組合を対象として断続的に実施した。組合員への聞き取り調査を行ったほか、野焼きなどの牧野の維持管理に関わる作業を観察した。
阿蘇地域における草原利用に大きな影響を与えてきたのは、1950年代後半から行われてきた国・県による草地造成事業と、1990年代から開始した保全活動であった。前者は、野草地を人工草地へと改良し、農業・畜産の生産性を高めるための「開発」という文脈のもとに実施された。後者は、文化的景観や生態系サービス等から評価される草原(主に野草地)の状態を維持するための「保全」という枠組みに位置づけられる。また、阿蘇地域で頻発する豪雨災害や、2016年に発生した熊本地震など、突発的に生じる自然災害もまた、資源利用の形態に影響を与えていた。A牧野での調査結果からは、これらの異なる文脈や事象に影響を受けながら、牧野の土地利用は変容しており、それらが牧野内部に景観の微細な差異を生み出していることが示唆された。
本研究がA牧野の事例で示すように、開発や保全、自然災害が資源利用の形態に与える影響は牧野の位置・規模、自然環境などの地理的特性や、構成員の規模や地域の歴史などの社会的特性によって異なる。その結果、「阿蘇の草原」として一括りに語られる空間には、ミクロな多様性が内包されていると考えられる。今後は、現在進めている自然科学分野の研究者との共同研究を通じて、草原景観の多様性の定性・定量的な解明や、それらが保全活動に有する意味を検討していく必要がある。
本発表では、阿蘇の草原における資源利用の変遷を提示する。特に、草原をめぐる社会・経済的な文脈や、自然環境の変化に着目し、多層的な時空間スケールで生じる現象との連関のなかで草原景観の動態を考察する。
現地調査は2022年から阿蘇市内のA牧野組合を対象として断続的に実施した。組合員への聞き取り調査を行ったほか、野焼きなどの牧野の維持管理に関わる作業を観察した。
阿蘇地域における草原利用に大きな影響を与えてきたのは、1950年代後半から行われてきた国・県による草地造成事業と、1990年代から開始した保全活動であった。前者は、野草地を人工草地へと改良し、農業・畜産の生産性を高めるための「開発」という文脈のもとに実施された。後者は、文化的景観や生態系サービス等から評価される草原(主に野草地)の状態を維持するための「保全」という枠組みに位置づけられる。また、阿蘇地域で頻発する豪雨災害や、2016年に発生した熊本地震など、突発的に生じる自然災害もまた、資源利用の形態に影響を与えていた。A牧野での調査結果からは、これらの異なる文脈や事象に影響を受けながら、牧野の土地利用は変容しており、それらが牧野内部に景観の微細な差異を生み出していることが示唆された。
本研究がA牧野の事例で示すように、開発や保全、自然災害が資源利用の形態に与える影響は牧野の位置・規模、自然環境などの地理的特性や、構成員の規模や地域の歴史などの社会的特性によって異なる。その結果、「阿蘇の草原」として一括りに語られる空間には、ミクロな多様性が内包されていると考えられる。今後は、現在進めている自然科学分野の研究者との共同研究を通じて、草原景観の多様性の定性・定量的な解明や、それらが保全活動に有する意味を検討していく必要がある。
