日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(筑波大学)、Newman Daniel R(Hokkaido University)、座長:高波 紳太郎(明治大学)


09:00 〜 09:15

[HGM04-01] 岩種が山地河川の縦断形に影響する理由

*高橋 直也1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:岩種、受食性、堆積物、粒径、岩盤河川

岩種は,河床の受食性だけでなく,斜面から河道に供給される堆積物の粒径にも影響する.受食性が大きく変化する地質境界の付近で遷急点が頻繁にみられることから,河床勾配が受食性に左右されることは明らかである.一方で,受食性が低い岩盤由来の粗粒な堆積物が河床勾配に特に強く影響しているという例も近年数多く報告されている.このことは,硬い岩盤が露出する区間において川が急勾配になるのは,硬い岩盤ほど侵食されにくいからではなく,粗粒な堆積物が斜面から河道に供給されるからだ,ということを示唆している.本研究では,この仮説を検証することを目的として,津軽山地の5つの河川を調査した.対象とした河川には,中新世の玄武岩類と頁岩,砂岩を主体とする堆積岩が分布しており,両者は明らかに力学的な強度が異なっている.河床勾配は,玄武岩類が露出する区間でより大きくなる傾向があるが,玄武岩区間と堆積岩区間で勾配が同程度の川もあり,受食性以外にも河床勾配に強く影響する要素があることが示唆される.
受食性が河床勾配に及ぼす影響を定量することは困難であるため,堆積物が勾配に及ぼす影響を計算した.この計算では,現在の河床勾配が,(1)その場に存在する堆積物粒子の始動させるために必要な勾配,(2)上流から供給された堆積物をさらに下流に運搬するための勾配,(3)現河床勾配から,(1)(2)の勾配を差し引いた残りの勾配(以後,余剰勾配),の3成分からなると仮定する(Sklar & Dietrich, 2006, Geomorphology).現河床勾配は,国土地理院発行の10mDEMを用いて計算した.(1)(2)は,Lai et al. (2021, ESPL)にならい,現地計測した粒径,河道横断形状,河床における岩盤の露出率を用いて計算した.(3)の余剰勾配は堆積物の影響で説明できない勾配を表しており,受食性が勾配に及ぼす影響が堆積物の影響よりも大きくなるほど,余剰勾配も大きくなると考えられる.そのため,余剰勾配と現河床勾配の比を玄武岩区間と堆積岩区間で比較し,堆積物の影響で説明できない勾配がどの程度の割合を占めるのか,また,岩種間で受食性の影響に差が見られるかどうかを検討した.その結果,余剰勾配と現河床勾配の比の中央値は,玄武岩区間で4.8%,堆積岩区間で2.4%となった.これは,調査した河川において河床勾配の大部分が堆積物の影響のみで説明でき,受食性は河床勾配にあまり影響していないことを意味する.この解釈は,堆積物の影響が実際よりもかなり小さくなるようにパラメータを変更して計算した場合でも変わらない.粒径計測結果については,粒径を計測した6254粒子のうち約79%が玄武岩粒子であり,その84パーセンタイル粒径は,堆積岩粒子よりも1.6倍大きかった.したがって,硬い岩盤が露出する区間で急勾配になるのは,受食性が原因ではなく,粗粒な堆積物が河道に供給されるからだと考えられる.ただし,堆積物の影響の計算は不確実性が大きいことから,岩種間での余剰勾配の大小について精度よく議論することはできない.一方で,滝のように急勾配となる場所のほとんどが玄武岩区間であるため,受食性の影響が局所的に強く現れていることも確かである.そのため,岩種と河床縦断形の関係についての理解を深めるためには,受食性と堆積物の影響の相対的な重要度が場所によって異なる理由を明らかにすることが重要である.

Takahashi, N. (2025) Relative role of rock erodibility and sediment load in setting channel slope of mountain rivers. Earth Surface Processes and Landforms.