日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(筑波大学)、Newman Daniel R(Hokkaido University)、座長:高波 紳太郎(明治大学)


09:45 〜 10:00

[HGM04-04] DEMFLUX 地質→地形モデル: 実在の地形によってトレーニングした生成AIによる地形自動生成

*池上 郁彦1 (1.イケガミ・ジオリサーチ)

キーワード:大地形、プレートテクトニクス、生成AI

自動地形生成には長い歴史があり、20世紀末に登場したPerlinノイズやフラクタルアルゴリズムなどの初期の手続き型手法にまで遡る。当時はTerragenなどのソフトウェアが人気であったが、これらの手法はしばしば反復的またはフラクタル的なパターンを生み出し、特に侵食や多様な岩石種類、断層、火山活動といった重要な地質学的プロセスを考慮していなかった。その結果、当時の技法ではリアリズムを欠いていた。2010年代に河川の排水シミュレーションが導入され、多少の改善はみられたものの、地質学的な整合性を十分に表現するには至らなかった。しかしながら2020年代に入ると、ニューラルネットワークを基盤とした手法が登場し、これまでの手続き型手法の限界を超えた、多様かつ地質学的に裏づけのある地形生成が可能になりつつある。

本研究では、地質学的知識を活用したテキスト・ツー・イメージ型拡散モデルを用いて、2,000×2,000 kmおよび4,000×4,000 kmスケールの大規模地形モデルを開発した。本研究は、FLUX (Black Forest Lab, 2023) に基づいており、GEBCO 2023 Grid (GEBCO, 2023) および筆者自身による地質学的アノテーションを用いてファインチューニングを行ったものである。学習データセットとしては、地球上の実際の地形を示すグレースケール画像644枚と、それぞれに対応する地質学的文脈を記述したテキストファイルを用いた。さらに、元の地形画像を系統的に回転させることによりデータを拡張し、サンプルの多様性を高めた。

定性的な評価によれば、本手法で生成された地形には、海洋性地殻と大陸性地殻のバイモーダル標高分布、海嶺、トランスフォーム断層、沈み込み帯、造山帯など、プレートテクトニクスの主要な要素が表現されていることが確認できる。また収束・発散・横ずれのプレート境界が現実的に繋がっており、その境界条件に応じた地形変化が再現されている。しかしながら、解像度の制約および学習データの限界により、火山フロントや付加体、プレート三重点における複雑な相互作用など、より微細な特徴の再現は十分とはいえない。また、平坦な平野部にはノイズが発生することもあり、これは8ビットのグレースケール画像におけるダイナミックレンジの制約が一因と考えられる。

総じて、本研究で用いた拡散モデルは、現実的かつ地質学的に整合した地形を生成する上で有望であることを示した。同時に、地質学的用語が現実に存在する地形にきちんと対応する可能性を示唆している。今後の課題としては、ControlNet (Illyasviel, 2022) が提供するような追加の制約条件を統合し、プレート境界の幾何形状など出力地形をより高度に制御できるようにすることが挙げられる。このような拡張は、特に古地理再現の文脈で有用となる可能性が高い。