日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(筑波大学)、Newman Daniel R(Hokkaido University)、座長:齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、岩橋 純子(国土地理院)


11:45 〜 12:00

[HGM04-10] 大山火山北麓甲川流域の地形発達に関見火砕流が及ぼした影響

★招待講演

*小玉 芳敬1、小川 碧2 (1.鳥取大学農学部、2.鳥取大学農学部院生)

キーワード:関見火砕流、砂質火砕流、土砂移動に及ぼす粒径の混合効果、河成段丘面形成プロセス、伯耆大山北麓、甲川流域

Ⅰ.緒論
伯耆大山北麓を流れる名和川,寺谷川、真子川、倉谷川、宮川などの流域は,いずれも谷底が狭く段丘の発達が悪い.これらの流域には名和火砕流(Nw)が広く分布している.一方,下市川、甲川、勝田川の流域は谷底が広く、数段の明瞭な段丘面が保存されている.この地形特性は,特に甲川流域で顕著である.穂積(2023)は,甲川下流域の地形面分類を行い,河成段丘面の大山町田中面と石井垣面を新たに区分した.本研究では甲川中流域の地形面区分と関見火砕流(Sm)の検討を行い,Smが甲川の地形発達に及ぼした影響を明らかにすることを目的とした.
Ⅱ.研究・分析方法
国土地理院地図を用いて,河床縦断形を作成した.地形面区分には,1万分の1地形図(大山町役場)や空中写真を判読し,投影縦断図を作成し,地形面の対比を行った.判読結果を参考に現地で地形を確認し,露頭調査を実施した.火砕流堆積物に関しては,マトリックス部分を採取し,試料を110 ℃で24時間乾燥させたのち,ふるいを用いて流水下で粒度分析を実施し,流亡した分をシルト以細とした.火山灰試料については、椀がけした鉱物の鏡下判定により同定を行った.
Ⅲ.研究結果
穂積(2023)の大山町田中面と石井垣面に対比される河成段丘面が,中流域の7.9 km~10.9 kmにかけて分布した(図1).さらに低位の段丘面も複数存在した.これらの上位に, Sm面が甲川左岸に分布した.投影縦断では、Smが10.2 kmからNwより高位に分布し、7.7 km付近で急勾配面を成し停止していた.現地調査では,甲川左岸において同じ地形面で連続する2つの露頭を確認した.露頭間には,直線距離で約70 mの植生被覆域を挟んでいた.上流側の露頭では3層のテフラが堆積していた.荒川(1984)によると,「名和火砕流(Nw)は青灰色の細砂を基質とし,また径50 cm以下の丸い外形の軽石片が含まれている.(中略)Nwは三瓶木次軽石層(SKP)に不整合に被覆される」「Smは,細砂から中砂の基質と径5~10 mmの軽石片を多く含む.」とある.荒川(1984)の記述と,軽石層の鉱物判定で雲母と石英が確認された結果,上流側の露頭は下位から順に,Nw, SKP,Smが連続して堆積していた.各層の間には円礫層が挟まれなかった.下流側の露頭にはSmのみ堆積していた.砂以細のNwとSmのマトリックス粒度分析では,Smの方が中砂以細の割合が高かった.
Ⅳ.考察
大山町田中面と石井垣面は,甲川の中~下流域まで広く分布していた.下流域の大山町田中面上には黒ボクが厚く堆積しており,黒ボクが離水した年代は1万年以内と考えられる.荒川(1984)によると,「Smはオドリ火砕流堆積物や姶良Tn火山灰層に被覆されていない.したがって,本火砕流は約1.5万~1.7万年前に噴出した」とある. Smが「粒径の混合効果」(池田,1984)を招き,河床礫の易動度を高めた結果,甲川の側刻作用が強く働いた可能性があり,大山町田中面や石井垣面を形成したと考えられる.連続する2つの露頭について,上流側の露頭は各テフラ間に円礫層を含まないため,甲川の作用を受けずにNwとSKPの原面を保存している.下流側の露頭では,甲川がNw面を浸食して形成した河谷をSmが埋積した.上流側の露頭に堆積するSmは,谷の埋積過程でオーバーフローしたものと考える.
Ⅴ.結論
甲川中流部において段丘面区分を実施した.大山町田中面や石井垣面は名和火砕流に伴って作られたものではなく,関見火砕流に伴って土砂移動が活発化して作られたことが明らかになった.おそらく,関見火砕流が堆積する前の甲川は現在の名和川と同様,段丘の発達が悪い流域であった.谷の上流部に砂質で細粒な関見火砕流堆積物が堆積した結果,粒径の混合効果が作用し甲川の河床礫が活発に移動して,谷底を広げ段丘を残した.
文献 
荒川宏(1984)大山火山北西部における火山麓扇状地の形成.地理学評論,57, 831-855.
穂積菜々子(2023)大山北麓甲川流域の火砕流面と河成段丘面の分類に基づく地形発達史.鳥取大学農学部令和4年度卒業論文,30pp.
池田宏(1984)二粒径混合砂礫の流送に関する水路実験.筑波大学水理実験センター報告,No8,1-15.
日本の地質「中国地方」調査委員会(1987)日本の地質7「中国地方」.共立出版,290p.