17:15 〜 19:15
[HGM04-P02] 福島県浜通り地方における1960年代以降の汀線変化
キーワード:ダム、砂浜侵食、土砂供給
日本では戦後,治山・治水事業が推進され,海岸構造物の建設や河川流域の急速な開発が進んだ.その結果,河川災害に対する安全性は大きく向上したものの,全国各地で河床低下や海岸侵食の問題が顕在化している.海岸侵食の要因は多岐にわたり,主に「海岸構造物の建設による沿岸漂砂の連続性の阻止」のように海岸に起因するものと,「ダム建設による供給量の減少」のように河川に起因するものに分類される.海岸起因の汀線変化については既に多く研究されている.しかし,ダムの建設などによる河川起因の影響については,古くからその影響が指摘されているものの,定量的な研究は不十分である.福島県浜通り地方中部には上流域にダムを有する河川が複数存在し,東北地方太平洋沖地震の影響を受けている地域であるが,汀線変化について詳細な研究が行われておらず,明確な原因は特定されていない.本研究では,1960年代から現在に至るまでの期間を対象に,海岸構造物の建設,ダムの建設,地震などの複数の観点から,福島県浜通り地方の海岸における汀線変化要因を検討する.
浜通り地方北部には砂浜と海食崖が交互に広がっている一方,南部には比較的広い砂浜が形成されている.波向は東〜東北東が卓越し,沿岸漂砂は北向きに運搬される.本研究では,真野川,新田川,太田川,請戸川,北迫川,大久川付近の6カ所の海岸を対象とした.航空写真を用いて汀線位置と砂浜面積の変化を調べた.また,高度分散量を用いてダム建設に伴う山地からの土砂供給量の変化量を推定し,航空写真を用いて海岸構造物の建設年を推定した.以上の結果を用いて,汀線変化要因を検討した.
2012年までは多くの海岸で汀線は後退傾向であったが,一部の海岸や特定の年においては,汀線が大きく前進していた.面積変化は概ね汀線変化と同様の傾向を示しており,一部の海岸を除き,年を追うごとに面積は減少傾向であった.これらの変化には海岸構造物の建設が強く関係しており,漁港南部では汀線は前進,漁港北部では汀線は後退していた.また,離岸堤が建設されている区間では,主に汀線は前進していることが確認された.加えて,東北地方太平洋沖地震の津波の影響で,多くの海岸で汀線は大きく後退していた.特に,請戸川浜と真野川浜では地震の際に大きく汀線を後退させたが,これら2つの海岸においては,現在までに地震前の水準まで汀線が回復していた.また,離岸堤は津波によって汀線が後退した後の回復を促進する傾向があり,本研究でも離岸堤建設区間では地震後に,離岸堤が建設されていない区間よりも早く汀線が前進していることが確認された.
ダムが建設された4つの海岸では,海岸への土砂供給が15〜96%減少した可能性があるが,建設後に汀線が後退したのは請戸川浜のみであった.請戸川浜ではダム建設後に汀線後退が見られたものの,その後退量は小さかった.他の海岸では建設後の後退は確認されなかった.河田ほか(1998)によると,ダム建設後の堆砂について3つのステージに分類される.その初期段階であるステージⅠはダム建設直後にあたり,堆砂量は多いが,その堆砂分を補うように下流の河床堆積物が海岸に排出される.そのため,このステージⅠの期間における河床堆積物の排出が,建設後の汀線変化を抑制していた可能性が考えられる.また,真野川流域では森林からの土砂供給の寄与が16~67%であり,特に2017年以降は20%以下である(Thomas et al., 2024).そのため,河川上流部からの土砂供給が砂浜に及ぼす影響が限定的である可能性がある.さらに,福島第一原子力発電所事故後,真野川流域では汚染農土の除去作業を行っており,これにより農地の一時的な裸地化が起こり,地震後の急激な汀線前進の一因となっている可能性が考えられる.
浜通り地方北部には砂浜と海食崖が交互に広がっている一方,南部には比較的広い砂浜が形成されている.波向は東〜東北東が卓越し,沿岸漂砂は北向きに運搬される.本研究では,真野川,新田川,太田川,請戸川,北迫川,大久川付近の6カ所の海岸を対象とした.航空写真を用いて汀線位置と砂浜面積の変化を調べた.また,高度分散量を用いてダム建設に伴う山地からの土砂供給量の変化量を推定し,航空写真を用いて海岸構造物の建設年を推定した.以上の結果を用いて,汀線変化要因を検討した.
2012年までは多くの海岸で汀線は後退傾向であったが,一部の海岸や特定の年においては,汀線が大きく前進していた.面積変化は概ね汀線変化と同様の傾向を示しており,一部の海岸を除き,年を追うごとに面積は減少傾向であった.これらの変化には海岸構造物の建設が強く関係しており,漁港南部では汀線は前進,漁港北部では汀線は後退していた.また,離岸堤が建設されている区間では,主に汀線は前進していることが確認された.加えて,東北地方太平洋沖地震の津波の影響で,多くの海岸で汀線は大きく後退していた.特に,請戸川浜と真野川浜では地震の際に大きく汀線を後退させたが,これら2つの海岸においては,現在までに地震前の水準まで汀線が回復していた.また,離岸堤は津波によって汀線が後退した後の回復を促進する傾向があり,本研究でも離岸堤建設区間では地震後に,離岸堤が建設されていない区間よりも早く汀線が前進していることが確認された.
ダムが建設された4つの海岸では,海岸への土砂供給が15〜96%減少した可能性があるが,建設後に汀線が後退したのは請戸川浜のみであった.請戸川浜ではダム建設後に汀線後退が見られたものの,その後退量は小さかった.他の海岸では建設後の後退は確認されなかった.河田ほか(1998)によると,ダム建設後の堆砂について3つのステージに分類される.その初期段階であるステージⅠはダム建設直後にあたり,堆砂量は多いが,その堆砂分を補うように下流の河床堆積物が海岸に排出される.そのため,このステージⅠの期間における河床堆積物の排出が,建設後の汀線変化を抑制していた可能性が考えられる.また,真野川流域では森林からの土砂供給の寄与が16~67%であり,特に2017年以降は20%以下である(Thomas et al., 2024).そのため,河川上流部からの土砂供給が砂浜に及ぼす影響が限定的である可能性がある.さらに,福島第一原子力発電所事故後,真野川流域では汚染農土の除去作業を行っており,これにより農地の一時的な裸地化が起こり,地震後の急激な汀線前進の一因となっている可能性が考えられる.
