日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(筑波大学)、Newman Daniel R(Hokkaido University)


17:15 〜 19:15

[HGM04-P10] 河川の急勾配度と縦断形から示唆される第四紀後期における能登半島の隆起傾動運動

*柿内 亮佑1遠田 晋次1高橋 尚志1 (1.東北大学)


キーワード:能登半島、隆起、河川侵食、地形解析

地殻変動が顕著な地域では,河川が隆起・沈降に応答し,縦断形を変化させることがある.特に,断層運動に伴う隆起が顕著な地域では,河川の侵食力が強まり,河床勾配が変化する.したがって,河川の縦断形や侵食指標を用いることで,隆起速度やその空間分布を検出できる可能性がある.本研究は2024年能登半島地震により顕著な地殻変動が観測された能登半島を対象に,河川指標による長期変動との対応を調査した.
 能登半島北部は第四紀後期に,北側隆起の卓越した傾動運動やブロック運動を続けてきた地域である(太田・平川,1979).その痕跡は半島沿岸に残された海成段丘に記録されている.特に能登半島の北岸中央部・南西岸・南東部には広く海成段丘が存在し,特にMIS5eの段丘面とされているM1面が最も連続して分布している.2024年1月1日の能登半島地震では輪島市西部や珠洲市北部の海岸沿いで2 m~4 mもの隆起が観測された.能登半島の地形形成を考えるうえで,能登半島地震が代表的な固有地震であり,同様の変位の繰り返しが主要な隆起要因であるかを評価する必要がある.
 具体的には,能登半島内の河川の正規化急勾配度(ksn)や縦断形,河成段丘をもとに,第四紀後期における隆起速度の空間分布を推定した.河川の解析は,海成段丘よりも内陸側の変動を検出できるメリットが期待され,2024年地震の面的な測地観測データを援用することで,同地震の累積変動と河川地形との比較も検討した.
町野川流域以東の流域ではksnと2024年1月1日の地震時隆起量との対応がよく,弱い正の相関を示した(相関係数:0.30).一方河原田川以東・町野川以西の流域では負の相関を示し(相関係数:-0.33),八ヶ川以北・河原田川以西の流域では相関を示さなかった(相関係数:0.05).このことから,2024年1月1日タイプの地震のみでは,現在の能登半島の地形を説明できないことがわかった.長期的に考えて,2024年地震タイプの累積変位を補うような地震(例えば,1729年の能登半島地震)も想定しなければならない.また,ksnの値は本来地質の影響を受けるため,岩相ごとにも比較した.目的変数をksn,説明変数を地震時隆起量と各地質(6種類)とする重回帰分析を実施した.その結果,能登半島の北西に分布する堆積岩層(道下層)において,地震時隆起量に対するksnの値が他の岩相より明らかに小さくなっていた.この岩相の侵食抵抗性の低さも原因として考えられるが,能登半島北部の累積変位量分布に比べて2024年1月1日の北西部における地震時隆起量が特異的に大きかった可能性も考えられる.
 町野川の河成段丘面のうち高位段丘面と判読したものは,河川からの比高が河口に近づく(北岸に近づく)につれて大きくなっていた.比高を線形回帰し,地震時隆起量を定数倍して最小二乗法で近似する簡易的な計算を行った結果,2024年1月1日タイプの地震が約50回累積した計算になり,比高分布と地震時隆起量はある程度整合し,河口付近にあるMIS5eの海成段丘面とも整合する.仮にMIS5eを125kaとすると,2024年型の地震の発生間隔は約2,500年となる.

参考文献
太田陽子・平川一臣,1979,能登半島の海成段丘とその変形,地理学評論,52,4,169–188.